Oct. 9 〜 Oct. 15 2017

”Domino Effect or Witchhunt?”
ドミノ現象か、魔女狩りか!?
ワインスティン・セクハラ・スキャンダルが原因で、今週突如批難された顔ぶれ



アメリカでは毎週のように天災や人災が起こっているけれど、今週カリフォルニア北部で起こっていたのが、大規模な15以上の山火事。 その被害はソノマ、ナパ、カリストガといったワイン・カントリーにも及び、40人が死亡、約6000の民家やビジネスが焼け落ちるという カリフォルニア史上最悪の被害をもたらしている状況。 現地のワイナリーではブドウの収穫を急ぎながら、年間70兆円を稼ぎ出すワイン・インダストリーの被害を何とか食い止める必死の努力が見られているのだった。

でも今週アメリカのメディアで最も報道時間が割かれていたと同時に、ソーシャル・メディア上でもバズをクリエイトしていたのは、 引き続きハーヴィー・ワインスティンのセクハラに関するニュース。10月5日のニューヨーク・タイムズ紙でスキャンダルが発覚して以来、 沈黙を守っていたハリウッドのAリスト・セレブリティ達が 彼から受けたセクハラ被害や、ハーヴィー・ワインスティンに対する批判の声明をようやく発表し始めたのが今週。 そのセクハラ被害者の顔ぶれは、グウィネス・パルトロー、アンジェリーナ・ジョリー、ケイト・ベッキンセールといった ハリウッドの主演女優クラスから、カーラ・デルヴィーニュやリア・セイドゥといった比較的新しい顔ぶれ、 またミラ・ソルヴィノ、ヘザー・グラハム等、ワインスティンが設立したミラマックスの映画で90年代にスターとなり、その後 音沙汰が無くなった女優陣を含む35人以上。 その被害はハリウッド女優だけでなく、フランス、イギリス、イタリアの女優やモデルにも及んでいるのだった。
彼に対する批判の声明を発表したのは、かつては彼を「God/神」と称えるスピーチをしたこともあるメリル・ストリープ、ジュディ・デンチ、 スーザン・サランドン、ジュリア・ロバーツ、ジョージ・クルーニー、ジェニファー・ローレンスなど。さらには、ミラマックス映画を90年代に買収したディズニーや、 ヴォーグ誌の編集長、アナ・ウィンター、ヒラリー・クリントン、オバマ前大統領等も次々と彼のセクハラを批判。 しかしながらそのタイミングは、ハーヴィー・ワインスティンが 弟と共に設立した ワインスティン・カンパニーから 先週日曜付けで解雇され、 彼にかつてのパワーが無くなってからのこと。

今週土曜日には、これまでワインスティンが強大な影響力とパワーを持ってきたアカデミー・オブ・モーション・ピクチャー・アート・アンド・サイエンシスが 臨時の緊急役員会を開き、彼を正式にメンバーから除名することを発表。 54人の役員会メンバーのうちの3分2のがその除名に賛成票を投じたことが伝えられているのだった。 加えて日曜には、エマニュエル・マクロン仏大統領が、2012年に前サルコジ大統領によってハーヴィー・ワインスティンに授与された レジオン・ドヌール勲章の栄誉取り消しの手続きに入るとコメント。
その一方で、ロンドン警察は 新たにレイプの被害を訴えたイギリス人女優、リセット・アンソニーを含む5人からの告発を受けて、 ハーヴィー・ワインスティンの刑事告訴に向けて動き始めたことを発表。 ニューヨーク市警察でも同様の捜査が進んでいることが明らかになっているのだった。




今週のアメリカで批判の対象になっていたのは、ハーヴィー・ワインスティンだけでなく、彼を直接、間接的にサポートした人々。 まず週明けにはデザイナーのドナ・キャラン(写真上、左)が 「被害者女性はセクハラを望んでいたはず」と語って大バッシングの対象となっており、 映画監督のオリバー・ストーン(写真上左から2番目、右側)もハーヴィー・ワインスティンをかばうコメントをした途端に、 彼に痴漢行為をされたという女優が名乗り出て、「ワインスティンをかばうのは自分が後ろめたい行為をしているため」とソーシャル・メディアで叩かれていたのだった。
また「サタデーナイト・ライヴ」は、セクハラ・スキャンダル発覚直後の番組内でハーヴィー・ワインスティンをジョークのネタとして取り上げなかったことで 批判を浴びていたけれど、確かにこれは常にスキャンダルを真っ先にジョークにする同番組には 通常あり得ないこと。 その後の報道によれば、ワインスティン絡みのコメディ・スケッチが放映局であるNBCのエグゼクティブによって揉み消されていたとのことで、 そのNBCは ワインスティンのセクハラ疑惑をレポートに纏め上げた同局のレポーターで、女優ミア・ファローの息子、ローナン・ファローによる 告発も揉み消していたことが伝えられているのだった。結局、ローナン・ファローは同スキャンダルのレポートを雑誌「ニューヨーカー」に売り、 今週同誌に掲載された彼の記事が スキャンダルに更なる具体性を加えていたのだった。 当然のことながらNBCはそれらの弁明をする羽目になり、 今週末の「サタデーナイト・ライヴ」では 2つセグメントでハーヴィー・ワインスティンのセクハラをネタにしているのだった。

その一方で、2004年にワインスティンのセクハラを報じようとしていた際に マット・デイモン、ラッセル・クロウから記事を葬るようにと電話で圧力を掛けられたと 今週訴えたのが、当時ニューヨーク・タイムズ紙でライターをしていた女性ジャーナリスト。これに対して マット・デイモンはワインスティンに頼まれて電話を掛けたことは認めたものの、女性ジャーナリストがセクハラについての記事を書いていたとは知らなかったと弁明。
またマット・デイモンと共にハーヴィ―・ワインスティンに見込まれて、映画「グッド・ウィル・ハンティング」でオスカーの脚本賞を受賞したベン・アフレックは、 90年代に セクハラ被害者のローズ・マクガヴァンと共演した際に ワインスティンについて相談を受けながら、「セクハラについては何も知らなかった」とコメントしたことから、 ローズ・マクガヴァンに「ウソつき」と批判されただけでなく、女優のヒラリー・バートンが2003年のMTV番組収録中に彼に胸を触られたという被害を告発。 その現場を捉えたビデオがソーシャル・メディア上でヴァイラルとなったことから、ベン・アフレックはツイッターで彼女に謝罪。しかしながら、 その日のうちに別のメークアップ・アーティストの女性が同様のセクハラを告発しているのだった。
これを受けてか、俳優のコリン・ファースは 今週 被害を名乗り出たイギリス人女優のソフィー・ディックスから ワインスティンのセクハラについて相談されながらも、何もしなかったことについて謝罪しているのだった。

更に週末には、カープール・カラオケで知られるトークショー・ホスト、ジェームス・コーデンがハリウッドで行われたイベントで、ハーヴィー・ワインスティンのセクハラをネタに 無神経なジョークを3つも語ったことから批判が集中。その会場内では驚きのリアクションと笑い声が混じっていたことから、 そこで笑っていた人々に対しても、「これまでセクハラが軽視されてきたのは、お前たちのような人間のせいだ」との批判が寄せられていたのだった。
そうかと思えば、木曜日には今回のセクハラ・スキャンダルで最も活発にソーシャル・メディアを通じて意見を発信していた被害者の1人、 ローズ・マクガヴァンのツイッター・アカウントがサービス停止となり、ツイッター側はその理由を彼女が個人の電話番号を掲載したためと説明。 これに対しても「電話番号を掲載してもアカウントが停止にならないケースは沢山ある」と批難が殺到し、 ツイッターは数時間後に彼女のアカウント停止処分を取り下げているものの、金曜にはセレブリティを含む 多くの人々がツイッターのボイコットを行っていたのだった。

今週にはハーヴィー・ワインスティン以外のセクハラ容疑を訴える女優も現れていて、そのうちの1人が かつての人気番組「E.R.」に出演していたヴァネッサ・マルケス。 彼女は「E.R」のセットで 頻繁に人種差別の扱いを受けると同時に痴漢行為を受けていたと語り、それを告発したところ 当時「E.R.」でドクターを演じていたジョージ・クルーニーによって ブラックリストに名前を乗せられて、それ以降仕事が来なくなったことを告白。 クルーニー自身は 彼が当時キャスティングに関わるポジションには居なかったことを説明して、そのクレームを否定しているのだった。
そんなセクハラ告発は、ここ数年でエンターテイメント業界への参入が著しいアマゾンにも飛び火して、同社のスタジオ・エグゼクティブ、ロイ・プリンスが 女性プロデューサーに対してセクハラ行為を行っていたこと、ハーヴィー・ワインスティンのセクハラについて知りながら、オスカーを受賞するために彼と組んでいたことが発覚。 職務停止処分に追い込まれたと同時に、婚約者がウェディングのプランを延期したことが報じられているのだった。




今日付けのニューヨーク・ポスト紙には、エンターテイメント業界のエグゼクティブが、若い女優やモデルを脇役のキャスティングと引き換えに、 娼婦替わりに使っているという会話を 堂々とレストランでする様子が記事になっていたけれど、 女優だけでなく、コメンテーター、 スタイリスト、料理専門家に至るまで、誰を雇っても大勢に影響がないような状況で 若い、もしくはルックスが良い女性が起用される裏事情は、 キャスティングに直接、間接的にパワーを持つ男性と関係しているケースが殆ど。 そうでもない限りは、「大の大人が自分の権力を何のメリットも もたらさない人物には使わない」と言われるほど、世の中の システムに溶け込んでいるのが、パワープレーヤーによるセクハラ。
「ハーヴィー・ワインスティンのセクハラがハリウッドのオープン・シークレットとして30年も野放しになっていたのは、このシステムのせい」という指摘がある一方で、 「彼は氷山の一角に過ぎない」という声も多く、多くの女性たちが被害を受けながらも これまでどうすることも出来なかった最大の理由は、「ハリウッドのパワープレーヤーには セクハラは付き物で、それを罪として問うことは出来ない」という意識が定着していたため。その証拠にハリウッドには 「キャスティング・カウチ」という言葉があって、それは無名の女優がキャスティングの面接の際に、 当たり前のようにセクハラを受ける様子を意味する言葉なのだった。

ふと考えると 私自身、同様のセクハラ・ストーリーは日本でも、ニューヨークでも、何度も噂話として聞いているけれど、 「その世界はそういうもの」、「自分とは全く違う世界の話」と考えてしまい、オフィスで働く女性のセクハラ被害ほどは 同じ女性の問題として捉えてこなかったのは事実。
でもエンターテイメント界のセクハラの方がオフィスのセクハラよりも悪質だと思えるのは、 駆け出し女優やシンガー等がパワフルな男性と関係することが、 「何としてもスターになりたい」という固い決意や、度胸が座っている様子、「世の中の仕組みを理解している”大人”である」ことを示すと同時に、 スターになるためには 誰もが味わう試練や登竜門であるかのように正当化されていること。 したがってそのセクハラのお膳立てがエージェントなど、ビジネス絡みで行われる例が少なく無い様子は、 今週 被害を申し出た女性たちの証言からも明らかになっているのだった。
ハリウッドはホモセクシャルの有力者が多い世界であるだけに、今週には2人の男優がホモセクシャル・バージョンのセクハラを訴えており、 被害に遭っているのが女性だけではない様子を窺わせていたけれど、 対象が女性でも男性でも、行う側は罪の意識など全く無いだけでなく、自分に許される当たり前の特権だと思い込んでいるところが この問題の根深さなのだった。




今週に入ってから報じられるようになったのが、近年のハリウッド映画の不振を受けて ワインスティン・カンパニーが金策に追われていた様子や、 ハーヴィ―・ワインスティンのパワフルな友人たちが、「以前ほど彼が利益をもたらす存在ではなくなった」と見なしていたという事実。 それもあってか、昨年ワインスティン・カンパニーに対して約50億円の融資を提供した投資会社が、 今週には その融資撤回を言い渡しており、業界ではワインスティン・カンパニーが このまま廃業し、 現在手掛けているプロジェクトを売却するとの見方も有力になっているのだった。

今週に入ってワインスティンとの離婚を表明したマルケーザのデザイナー、ジョルジーナ・チャップマン(写真上左)はと言えば、 先週までは同情する声が聞かれたものの、今週に入ってからは彼女もソーシャル・メディア上でバッシングの対象になっていた存在。 その彼女は早くもハリウッド・セレブリティの離婚を専門に担当する弁護士を雇い、 個人資産330億円と見積もられるハーヴィー・ワインスティンとの離婚訴訟に備えている様子が伝えられていたけれど、 彼女が子供の養育費も含めて 扶養手当を取れるだけ取っておかなければならないと思われるのは、 今回のセクハラ・スキャンダルのせいでマルケーザが存亡の危機に瀕しているため。
それと言うのも、今週ハリウッド女優達がワインスティンのセクハラ被害と共に訴えていたのが、「マルケーザをレッド・カーペット上で着ないなら、 もう仕事は無いと思え」というような圧力を掛けていた事実で、 これは妻のためというよりも、ハーヴィー・ワインスティン自身がマルケーザのインヴェスターであるため。 マルケーザのアトリエには、時折ハーヴィー・ワインスティンがやってきては スタッフを怒鳴り散らしていたとのことで、 スタッフにとっては決して望ましい職場環境とは言えなかったという。

今週には、マルケーザとエンゲージメント・リングのコラボレーションをすることになっていたジュエリー・ブランドが そのキャンセルを発表。またマルケーザ自体も2018年の春夏シーズンの展示会をキャンセルしており、 ブランドにとっての収入源であるブライダル・ブティックのバイヤーの多くが、「花嫁たちがマルケーザのドレスで結婚したがるとは思えない」と、語っている様子も伝えられる有り様。
当然のことながらマルケーザのスタッフは新しい職を探し始めたようで、ニューヨークのファッション業界では今週からそのレジュメが飛び交っていることがレポートされているのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

Shopping
home
jewelry beauty health apparel rodan

PAGE TOP