Oct. 2 〜 Oct. 8 2017

”Women are Second Class Citizens...”
蔑視、セクハラ、中絶強要、
女性がワンランク下の人種であることがアメリカ社会で露呈した1週間



今週のアメリカでは先週日曜にラスヴェガスで起こったアメリカ史上最悪の無差別大量銃撃事件と その捜査状況、犠牲者に関する報道に 最も時間が割かれていたけれど、それと共に大きな報道にになっていたのが 女性が如何に社会における弱者であり マイノリティであるかを 改めて思い知らされる複数のニュース。
まず政界絡みでは人工中絶廃止を掲げてきたペンシルヴァニア州選出の共和党下院議員、ティム・マーフィー(65歳、写真下、左から2番目)が、 自分の半分以下の年齢の愛人、シャノン・エドワーズ(32歳、写真下、一番左)が妊娠していると思い込み、中絶を強要していたというニュース。 これは愛人が今年1月にマーフィーと取り交わしたテキスト・メッセージのやり取りを公開して明らかになったもので、 9月に彼女との不倫を認めたマーフィーは 現在、夫人との離婚訴訟の真っ最中。 この事態を受けてティム・マーフィーは任期切れと同時に引退を発表したものの、これから人工中絶に対する厳しい法案を可決しようとしている 共和党内からの大きな反発を買い、週末には辞任に追い込まれているのだった。

また週末にはトランプ政権がオバマ・ケアこと健康保険改革法案では認められていた女性の避妊ピルの健康保険適用を、 「雇用主の判断で対象外に出来る」と改定。これは、ヴァイアグラやシアルス等、男性がセックスするための処方箋薬には 保険が適用されるという状況を思えば 性差別とも考えられるもので、 女性が避妊から中絶まで 男性社会が決めるがままに従わざるを得ない無力さを改めて露呈していたのだった。

そうかと思えばスポーツの世界では、週明けにNFLキャロライナ・パンサーズのスター・クォーターバック、カム・ニュートン(写真下、右から2番目)が、 プレス・カンファレンスで女性レポーター(写真下、一番右)に ラウト(パスを受け取るためにレシーバーが走るパターン)について尋ねられ、 「女がラウトについて話しているなんて…」と馬鹿にしたように笑い飛ばした様子に批難が殺到。 カム・ニュートンは カンファレンス後に彼に抗議した女性レポーターに対しても同様の侮蔑的な態度を取り、 公の謝罪も 彼のスポンサーであるダノン・ヨーグルトがその広告起用取り止めを発表した後に ビデオ・メッセージで行うに止まっているのだった。





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その一方で木曜にニューヨーク・タイムズ紙に掲載され、大きな波紋を広げたのが 政界にも大きな影響力を持つ ハリウッドで最もパワフルなプロデューサー、ハーヴィー・ワインスティンが過去30年以上に渡ってセクハラ行為を行っていたことを暴くレポート。
ハーヴィー・ワインスティンは、弟のボブ・ワインスティンと共に1979年にミラマックス・フィルムを創設。そのネーミングは両親の名前、ミラとマックスをくっつけたもので、 同社は1993年にディズニーによって約90億円で買収されているものの、2005年に弟とワインスティン・カンパニーを設立するまで ミラマックスの拡大に貢献。「シェイクスピア・イン・ラブ」、「イングリッシュ・ペイシェント」、「キングス・スピーチ」など数えきれないほどのオスカー受賞作品に加えて、 「パルプ・フィクション」、「スクリーム」、「スパイ・キッズ」等の娯楽映画のヒット作も手掛けてきた存在。 彼はアカデミー賞の受賞スピーチで最も名指しで感謝された回数が多い人物であり、彼がこれまでに手掛けた作品を通じて獲得したオスカー・ノミネーションの数は300にも上っているのだった。

それもそのはずで、彼はアカデミーのメンバーに対する票獲得の派手なプロモーションやパーティーを行う一方で、 ライバル候補に対しては 「手口が汚い」と言われるほどの妨害工作で知られた存在。 彼のセクハラについても、ハリウッドでは長年のオープン・シークレットであったことが報じられられ、 今週のニューヨーク・タイムズ紙の記事では 彼が過去に8人の女性からのセクハラの訴えを賠償金を支払って示談で片づけてきたこと、 その中には女優のアシュレー・ジャッド(写真上、左)、ローズ・マクガヴァン(写真上、中央)の名前も含まれていたことがレポートされているのだった。
スキャンダルが報じられた直後にハーヴィー・ワインスティンはワインスティン・カンパニーから休職処分となり、セラピーに専念するとコメントしていたけれど、 私がこのコラムを書いている10月9日、日曜夜には同社の取締役会が 彼を解雇したことを発表。 ハーヴィー・ワインスティンは彼のセクハラを暴いたニューヨーク・タイムズ紙を相手取って訴訟を起こす構えを見せており、 彼の5人の子供達、及び妻でマルケーザのデザイナーとして知られるジョルジーナ・チャップマン(41歳、写真上、右)は彼をサポートしていると言われているのだった。




今週のセクハラ報道以来、過去にハーヴィー・ワインスティンにセクハラを受けたという新たな女性が被害を訴え、 彼の誘いを断って以来、ミラマックスからの仕事がゼロになったという女優のコメント、 彼が若い女性とのデートに使っていたレストランのウェイトレスが目撃したセクハラに及ぶパターンなどが報じられ、 土曜日には彼のアドバイザーであった女性弁護士が辞任。またワインスティン・カンパニー傘下の出版社から著書を出版する予定だった女性キャスターが、 「彼が居座るうちは、本を書かない。他の著者も同様にするべき」とコメントする等、バックラッシュがどんどん高まってきているのが現状。
その矛先は、ワインスティン・カンパニーの取締役や、メリル・ストリープやニコール・キッドマン等、 ミラマックス、ワインスティン・カンパニーが手掛けた映画に出演し、彼のセクハラ容疑に対して沈黙を守っている女性セレブリティに対しても向けられているのだった。

とは言っても、メリル・ストリープ、グウィネス・パルトロー、ジュディ・デンチ、ジェニファー・ローレンスといった女優陣は、 過去にハーヴィー・ワインスティンに感謝することはあっても、決して彼のことを批判したことなど無いだけでなく、 女優達の多くは 彼が2007年に結婚したジョルジーナ・チャップマンがデザインするブランド、マルケーザのドレスを 言われるままにレッド・カーペット上で着用して、その広告&売り上げに貢献してきた訳で、マルケーザはファッション誌で紹介される前にセレブリティがレッド・カーペット上で着用した 極めて珍しいブランド。
現在はマルケーザ・ノッテというセカンダリー・ブランドも手掛ける ジョルジーナ・チャップマンは元モデルで、 ハーヴィー・ワインスティンとはパーティーで出会い、彼のコネクションと政治力をフル活用して、現在は個人資産30億円以上と言われるサクセスぶり。 しかしながら イヴニング・ガウンのブランドであるマルケーザにとって、ウェディング・ドレスのビジネスは非常に大切な収入源であるだけに、夫のセクハラ・スキャンダルが 彼女のブランド・イメージに打撃を与えるのは明らかで、ジョルジーナがやがては彼と離婚するであろうという見方が有力なのだった。

ハーヴィー・ワインスティンはジョルジーナとの結婚以来、ファッション・ビジネスに興味を示し、2009年にはホルストンを買い取り、 サラー・ジェシカ・パーカー、スタイリストのレイチェル・ゾーをチームに迎えてビジネスをスタート。 ホルストン・ヘリテージのデビュー・コレクションのうちの3枚をサラー・ジェシカ・パーカーが 映画「セックス・アンド・ザ・シティ2」の中で着用していたけれど ビジネスは不振で、やがてはサラー・ジェシカ・パーカーもレイチェル・ゾーも 同ブランドのビジネスから手を引いているのだった。
でもハーヴィー・ワインスティンにとっては、彼が好む20代の美女が多いファッション&モデル業界は興味深いものであったようで、 TV番組「プロジェクト・ランウェイ」をプロデュース。今回のスキャンダルでは そんなモデルの中にも彼からのセクハラ被害を訴える声が聞かれていたのだった。




このページの1番上の写真は、トランプ夫妻とワインスティン夫妻の2009年のオスカー・パーティーでのスナップであるけれど、 ハーヴィー・ワインスティンは、政界や実業界にも幅広いコネクションを持つことで知られており、 長年に渡って民主党の政治家への多額の献金をしてきた存在。ヒラリー・クリントン、オバマ大統領の 選挙資金集めにも貢献し、オバマ氏の長女、マリア・オバマがハーバード大学進学を一年遅らせて、 ワインスティン・カンパニーでインターンをしていたのは有名な話。

彼のセクハラのパターンは、裸、もしくは裸同然の恰好で女性の前に表われて、マッサージを求めたり、 自分がシャワーを浴びる様子を眺めるように促したり、初対面の女性に対してでも馴れ馴れしく身体に触れたり、 ミーティングと称して女性をホテルの部屋に呼び出して性行為を迫るなどのもので、 そのセクハラのターゲットになったのは、彼のオフィスで働く女性から、女優、女優の卵、 モデルなど。
過去30年に渡るセクハラ行為についてのハーヴィー・ワインスティンの釈明ステートメントは、「自分は今とは全く異なる 職場のルールが存在した1960年代、70年代の人間で、当時はそれがカルチャーだった」という いかにも「以前だったらこんなことは問題にさえならなかった」と言いたげな書き出しで始まるもので、 ラッパーのジェイZの歌詞を引用した謝罪文。 この時点では まさかこのスキャンダルが原因で 自分が辞任に追い込まれるとは思っても居なかった様子が窺い知れるものなのだった。

ここ2年ほどの間に、ハーヴィー・ワインスティン同様に 長年のセクハラ行為が突如脚光を浴びて、 職を追われたり、批判の対象になったパワー・プレーヤーの中には、 80年代に一世を風靡した黒人コメディアン兼俳優のビル・コスビー、FOXニュースの設立者であるロジャー・エール、 FOXニュースの看板スターで、現在はその職を追われたビル・オライリーなどが居るけれど、 そんな過去から浮上した複数のセクハラ報道を上手く逃れた存在と言えるのが2016年の大統領選挙の際のトランプ大統領。
そのトランプ氏は、今週のワインスティンのセクハラ報道について「彼のことは長年知っているけれど、決して驚かない」とコメントしているのだった。


一部には、長年セクハラを行ってきたパワフルな男性たちが ここへきてようやく長年の制裁を受ける結果となっていることを歓迎する声も聞かれるけれど、 ハーヴィー・ワインスティンは 被害者の女性の手にによってその地位から引きずり降ろされたという訳ではないようで、 彼の長年に渡るセクハラ容疑に関するニューヨーク・タイムズ紙の記事の仕掛け人になったと噂されるのが、 ハーヴィー・ワインスティンの弟であり、ワインスティン・カンパニーの共同設立者として 長年に渡って彼との権力争いの様子が伝えられてきたボブ・ウィンスティン(写真上、左側)。 したがって男性社会でお払い箱にしたいパワフルな存在を追っ払う手段として、 男性が自分達で手を下したくないから 女性を利用しているとも受け取れる状況。
ビル・コスビーやロジャー・エールに対するセクハラにしても、女性達は長年に渡って被害を訴え続けてきた訳であるけれど、 それが ここ2年ほどで突然 女性達のウソや 無駄な悪あがきとして揉み消されることなく、深刻に捉えられるようになったのは、 その問題を扱う男性社会の判断や利害関係がその背景にあると言えるもの。 だからこそ過去に同じようなセクハラ行為をしていても、裁かれる存在と そうでない存在が出てくると言えるのだった。

そう考えると、ウーマン・リブ発祥の地であるアメリカでも まだまだ女性は男性に比べてワンランク下の人種と見なされている訳で、 それは何時まで経っても埋まらない男女の給与の格差にも如実に現れている事実。
そうかと思えばサウジアラビアのように、やっと来年から女性による車の運転が許されることになった国も存在するけれど これとてノンドライバー・カーやテスラのセルフ・ドライヴィングのテクノロジーが開発され、車の方が先に車を運転するようになってからの法改正。 したがって決して諸手を上げて祝福できる状況とは言えないのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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