Sep.25 〜 Oct. 1 2017

”Team Sarah Jessica or Team Kim?”
本当のファンだけが分かる!?
映画「SATC 3」が製作されなくて良かったこれだけの理由



今週のアメリカでは、ハリケーンの大被害を受けながらも救援が遅れるプエルトリコの問題、NFLプレーヤーによる国歌斉唱時の抗議ジェスチャーと それに対してツイッターで猛攻撃をするトランプ大統領、 そしてトランプ政権メンバーによる国民の税金を使ったプライベート・ジェットによる旅行ぶりが大きな報道になっていたけれど、 エンターテイメントの分野で突如木曜日に報じられたのが 映画「セックス・アンド・ザ・シティ(以下SATC)」の3作目の製作が、 クランクイン数週間前にしてキャンセルされたというニュース。
それによれば、過去2本の映画版「セックス・アンド・ザ・シティ」の脚本とプロデュースを務めたマイケル・パトリック・キングが 既に脚本を書き上げ、 ニューヨークでのロケーション・ハンティングも行われ、10月には撮影がスタートする予定であったと言われるのが「SATC 3」。 しかしながらサマンサ役を演じるキム・カトゥラルが 製作元であるワーナー・ブラザースに対して無理な要求を突き付けたために製作を断念せざるを得なくなったというのがその報道で、 キムの要求と噂されたのが、彼女のために別の映画も製作するようにというもの。 この報道は 「SATC」でキャリーのゲイ友達、スタンフォード役を演じていたウィーリー・ガーソンによってもリツイートされ、 ソーシャル・メディア上には 番組のファンから「サマンサ無しでも3本目を製作して欲しい」という意見が寄せられていたのだった。

それに対して金曜なって逆襲のツイートをしたのがキム・カトゥラルで、「私が唯一 要求したのは3本目の映画はやりたくないということ。しかもそれは2016年のこと」というのがその内容。 キムがこのツイートをしてからというもの、写真下左のヴォーグ・オンラインから ツイッターを含むソーシャル・メディア上に溢れてきたのが 彼女の決断を支持する意見や、「SATC 3が製作されなくて良かった」 というコメント。
中には、「ムービーゴーワーは、SATCのシークウェルから逃れることが出来る!」という喜びの見出しまであったけれど、 「SATC」が今でもファンに支持される存在でありながら そんなリアクションが出てくるのは、写真下右に見られるように2010年に公開された 「SATC 2」の映画が、アメリカでは酷評に次ぐ酷評の 痛々しいほどの駄作であったためなのだった。







「SATC 2」の評判が極めて悪かった理由は稚拙なストーリー・ラインや自己陶酔的なシーンが多かったのに加えて、 「SATC」で最も大切な要素であるニューヨー・シティやニューヨーカーが殆どストーリーに登場せず、アイデンティティ・クライシスに陥っていたこと。 映画の中の スタンフォードとアンソニーのウェディングはコネチカットで行われ、その後4人のキャラクターが出かけたのがドバイ。 「セックス・アンド・ザ・シティ」の”ザ・シティ”の部分が欠落して、「セックス・アンド・ドバイ」というストーリーとファッション(写真下段)になっていたのだった。
とは言っても実際にはドバイのシーンの撮影が行われたのはモロッコ。アラブ首長国連邦は「セックス・アンド・ザ・シティ」という映画のタイトルだけで、撮影を却下したことが伝えられているのだった。 加えて、ブルックリンのセットで撮影されたドバイのカラオケ・バーのシーンで、4人のメインキャラクターが1970年代のウーマン・リブ・ソング「I am a woman」を歌った姿(写真下段右)は、 TV番組のSATCのイメージとは100%かけ離れた 時代錯誤がはなはだしいフェミニストぶりで、長年のファンをすっかり失望させているのだった。 今週「SATC 3」製作キャンセルのニュースを好感した人々の多くはそんな長年のファンで、 ソーシャル・メディア上では、「自分にとってのSATCは、映画の1本目で終わった」という人も居れば、 「SATCと呼べるのはTVシリーズだけで、映画は製作されたこと自体が間違っている」という声も少なくなかったのだった。

確かに 2008年に公開された1本目の「SATC」も、アメリカ国内での評価は決して高いとは言えなかったけれど、 この時はTVシリーズが終了して4年が経過し、TVシリーズのファンが「SATC」映画版を切望していたタイミング。 メイン・キャラクターの4人が一緒にいる姿を見るだけで胸がワクワクするファンが多かったことに救われたのが同作品なのだった。 そんな1本目のサクセスの要因となったのが、サマンサ役のキム・カトゥラルが、 TVシリーズ終了直後に製作しようとした映画版への出演を断ったこと。
TV版の「SATC」があえて不完全燃焼的なフィナーレを迎えたのは、マイケル・パトリック・キングとサラー・ジェシカ・パーカーが 既にこの時点で映画版の製作をもくろんでいたいたため。しかしながら、その段階での映画出演を拒否したのがキムで、 この時も 「SATC」でまだまだ稼ぎたいというキャストやクルー、及びファンから 彼女に対する批判が寄せられていたけれど、実際に映画が公開される段階では称賛されたのがキムの決断。 「1本目のSATCが あの程度の内容で、あれだけのバズをクリエイト出来たのは、4年のブランクのお陰で ファンの期待感が高まっていたからこそ」 という意見が大半を占めていたのだった。

結果的に映画「SATC」1本目の全世界合計の興行売り上げは4億1500万ドルで、2本目は2億8800万ドル。 通常ハリウッド映画はアメリカ国内の興行売り上げが 世界売り上げの半分を占めるけれど、「SATC」に関しては2本ともアメリカ国内売り上げが 3分の1程度。 アメリカ国内より海外に大きくアピールするというのは、ハリウッド映画の世界では「コンセプト的に古い、将来性が無い作品」と見なされる傾向があって、 「SATC 3」の製作について その後7年近く、何の音沙汰も無かったのは十分に納得できること。 それでも特撮などが無いため製作費が極めて低いのが同作品で、1作目は約72億円、海外ロケで大金を使った2作目でも110億円で、 その製作費の低さは、「SATC」シリーズの利益率の高さに繋がっているのだった。






アメリカにおいて映画版のSATCの評判が悪く、長年のファンから嫌われる理由は大きく分けて2つあって、 その1つは 映画版はファッションが大袈裟になり過ぎて、一般の女性が着たいと思う服が無いこと。 TV番組のSATCが数多くのトレンドを生み出していたのは周知の事実であるけれど、映画版がクリエイトしたトレンドはゼロ。
TV版が放映されていた段階では、誰もが「キャリーが着ていたから欲しくなった」というアイテムがあったもので、 私にとっては写真上、上段左のプラダのスカートはウェイティング・リストに名前を入れてまで入手したもの。 それ以外にもキャリーが毎週のように違うスタイルを持っていたフェンディのバゲット、Carrieの文字をフィーチャーしたネーム・プレート・ペンダント、 そして写真上、上段右のパシュミナを巻いたキャリーの姿は CUBE New Yorkが1999年からパシュミナを取り扱うきっかけになったもの。
写真上 上段、左から2番目のベルトバッグのコーディネートはこの夏のファッショニスタ達のスタイルとほぼ同様、 その隣のカルバン・クラインのボディコン・ドレスにグッチのヴィンテージ・バッグを持ったスタイル、最終エピソードでキャリーが着用した チュチュ・スカートなどは今のトレンドに通じるスタイルで、TV版の方が遥かにモダンでニューヨークらしいファッションだったのは紛れもない事実。 逆に写真上、下段の第一作目の映画に登場したアウトフィットを身に着けた女性は、ハロウィーンでもない限りはニューヨークには皆無と言えるのだった。

映画版が長年のファンに嫌わる2つ目の理由は、映画のストーリー展開にニューヨークらしさや、TV版に見られるリズム感が無いこと。
TV版のSATCは女性で構成されるライター・チームが自分の友人から聞いたニューヨーカーの恋愛&セックスのゴシップ、ニューヨークのメディアにフィーチャーされた実話のエピソードを盛り込んでいたので、 ストーリーの展開から台詞までが 非常にニューヨーク的だったのは多くの人々が指摘するところ。 キャリーが追いはぎにバッグだけでなく、マノーロ・ブラーニックのシューズも盗まれたストーリーはNYタイムズのコラムに掲載されたエピソードであるし、 ウォールストリートの金融マンがインサイダー・トレーディングの容疑で自宅で逮捕された際の実話は ミートパッキング・ディストリクトのアパートでのサマンサと住人とのセックス・シーンで再現されていたもの。 このようにニューヨークの街中のシーンだけでなく、リアル・エピソードが盛り込まれていたのがTV版のSATC。
映画版はそれが無い、ただのロムコム(ロマンティック・コメディ)として製作されている上に、複数のストーリーラインを30分でコンパクトに纏めるTV版より間延びしていて、 歯切れの良さが全く感じられない仕上がりになっているのだった。




もちろん、4人のキャラクターの現在のエイジング状況も「SATC 3」が製作されない方が良いというファンの意見の中に聞かれるもの。 写真上、一番左は、つい最近スナップされたサラー・ジェシカ・パーカー(52歳)で、 左から2番目と中央は、この夏に彼女が撮影していた映画のロケ中のスナップ。 右から2番目はキャリーがホームパーティーでマノーロのシューズを盗まれたという TV版SATCの中でも有名なエピソードのラスト・シーンで、 キャリーがシルバーのマノーロを普段着に合わせて履いてしまう場面。 一番右はシーズン3の最終エピソードで、ミスター・ビッグと共にセントラル・パークの池に落ちるシーンのドレス。
誰もがキャリーのイメージで頭に描いているのは右から2枚のサラー・ジェシカ・パーカーで、 人々が「SATC 3」が製作された場合、その中で見たがっているのも かつてのサラー・ジェシカの面影。
同じことはジュリア・ロバーツにも言えて、アメリカ人は一般的にジュリア・ロバーツを非常に好む傾向にあるけれど、過去10年以上彼女にヒット作が無いのは、 多くのアメリカ人にとってジュリア・ロバーツを好む理由が 映画「プリティ・ウーマン」であり、そのイメージから遠ざかる彼女をお金を払ってまで観たいと思わないためなのだった。


残念ながら現時点では、サラー・ジェシカだけでなく他のメイン・キャストも 以前のイメージを損ねることなく、SATCのキャラクターを演じるのは CG で顔や手のシワを消したところで 難しいと思われるのは多くの人々が指摘するところ。
そんな彼女らの現状はと言えば、前述のようにサマンサ役のキム・カトゥラル(61歳、写真上、右)は、「SATC 3」の出演を断ったことで 今週話題になったけれど、 彼女は今後何もしなくても余生に困らない程の財産があり、引き続きTVシリーズの再放送で収入が入ってくると言われる状態。 彼女がプロデュースする映画の撮影が程なくスタートすることが伝えられているのだった。

シャーロット・ヨーク役のクリスティン・デイビス(52歳、写真上、左)は、アフリカから黒人の女児を養子縁組して育てていることもあり、 昨年の大統領選挙後に人種差別主義者によるヘイト・クライムが増加したことを懸念するコメントをしていたけれど、 そんな彼女が熱心に取り組んでいたのが、象牙目当ての違法ハンターに殺されて絶滅の危機に瀕している 象たちを守るためのチャリティ。また、彼女は写真を見ての通りSATC時代に比べてヘアのボリュームがかなり減ってきたこともあり、 現在はヘアにボリュームをもたらすプロダクトのスポークスモデルも務めているのだった。 ハリウッド・プロジェクトからすっかり遠ざかっていることもあって、彼女が最も「SATC 3」の製作に積極的であったと言われており、 製作がキャンセルになったフラストレーションを最も主張しているキャスト。

ミランダ・ホッブス役のシンシア・ニクソン(51歳、写真上、中央)は、TVシリーズ終了から2年後の2006年に乳がんを宣告され、その闘病生活で彼女を支えたレズビアン・パートナーと2012年に結婚。 3人の子供が公立学校に通っているとあって、NY州の公立学校システムには非常に熱心な存在。。 年々政治的な活動や言動が増えてきた彼女は、ニューヨークの州知事に民主党候補として立候補するという噂が有力で、 インタビューを受ける度に出馬について尋ねられるものの明言を避け続けている状況なのだった。
俳優としても ブロードウェイのプレイや映画等、最も忙しく活動しているのが彼女。でもファッションに拘るような役どころではなく、シリアスなアクティングが専門。 彼女は、「SATC 3」については全くコメントしていない唯一のメジャー・キャストなのだった。

私が一連の「SATC 3」製作キャンセルの報道を見て自問自答してしまったのは、先週このコラムでも触れた90年代の5人のスーパーモデル達(47〜51歳)がヴェルサーチのショーのフィナーレに登場し、 以前同様の存在感やエキサイトメントを見せつけて大評判となった一方で、 今週SATCの4人のキャラクターが映画3作目の製作が取り止めになったことで、「カムバックしなくて良かった」と言われるのとでは、何がどう違うのか?ということ。 前者は遠目で2分程度、無料で眺められたのに対して、後者は有料、大画面で2時間付き合うことになるからなのか?、 それともエイジングの度合いが違うからなのか?、SATCにとって今という時代のタイミングが悪いからなのか?、考えても結論は出ないまま。
でも エンターテイメントの世界では 強烈なイメージのヒット・キャラクターがあるということは、キャラクターが人々に好かれる限りは それを使って食べて行く手段があるということ。 サラー・ジェシカ・パーカーが 現在自らのシューズのコレクションを販売していられるのも SATCのキャリーのキャラクターのお陰。 政治やビジネスの経験が無いシンシア・ニクソンが州知事立候補する噂が流れて、人々が笑い飛ばさない理由にしても SATCのミランダのキャラクターである バーバード出身の弁護士のイメージが人々の中にあるため。
もし「SATC 3」を製作した場合、前作の半分程度の興行売り上げは得られたかもしれないけれど、 それによって崩れるイメージがもたらす損失やそのリスクに見合うだけの収入と言えるかは疑わしいのが実情。 そんなリスクを冒すよりも、余計な新プロジェクトはせずに 過去のサクセスとそれによって築かれたイメージを使っていく方が ビジネスの見地からは遥かに安全かつ、正解と言えるのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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