Sep. 11 〜 Sep. 17 2017

”White Supremacists Love Japan?”
白人至上主義者のジャパン・フェティッシュ、
その背景にある様々な要因とは?



私が現在のアメリカで最も興味深いと思っているニュース・メディアがケーブル・プレミアム・チャンネルのHBOで放映されている「VICE/ヴァイス」。 同番組はミレニアル世代を中心にTVでニュースを見なくなった人々をターゲットにした、メジャー・メディアとは異なる切り口のシャープな報道がウリの番組で、 私がDVD録画をしてまで毎日チェックしている番組。 アメリカ人の友達の中にも、通常のニュースは見なくても「ヴァイス」は見るという人が少なく無いのだった。
その同番組が今週放映したのが「白人至上主義者がアジア、特に日本を好むと同時に賞賛している」という内容のセグメント。 日本という国は地理的にも、言語やメディアにおいても、世界から隔離されていて、 諸外国の人々が自分の国をどう思っているかを あまり把握していないだけに、自国が褒められた時の嬉しさの度合いが 他国民より大きいと言われるけれど、白人至上主義者に讃えられるのは 対外的にはあまり好ましいとは言えないのだった。




「ヴァイス」の報道では、8月にヴァージニア州シャーロットヴィルで行われた白人至上主義者のデモの参加者が 日本語のタトゥーをしていたことや、元KKKのリーダー、デヴィッド・デュークを始めとする極右派の著名人が アジア、特に日本を高く評価していることを指摘。その理由として日本が白人至上主義者が目指す”モノエスニック・ユートピア”、 すなわち単一民族国家を実現している理想的なモデルで、 人種や宗教の対立や争い、それによる価値観や道徳観の相違が生じない 平和で安定した社会であると 彼らが考えていることを挙げているのだった。
もちろんこれは外から見た一方的な見解の域を出ないものであるけれど、 それと同時に指摘されていたのが、白人至上主義者達が自分たちより学力において優れていると認めざるを得ないアジア人の存在を肯定することにより、 自分達の活動が人種差別ではなく、能力主義であることがアピールできるという都合の良さ。

同番組以外でも、白人至上主義者がアジア、特に日本を好むことを指摘するメディアは少なく無いようで、 そうしたメディアでは アジア人が他人種ほど人種差別を騒ぎ立てたり 自己主張をしないこと、 アジアの国々が伝統的に保守系の白人社会同様に男尊女卑の意識が根強いこと等に加えて、 白人至上主義者らが敵対する他人種、及びユダヤ人と 数的に張り合うために、同盟関係の人種が必要という見方もあるようなのだった。




「ヴァイス」のセグメントでは、白人至上主義者が日本を好み、評価することについて、第二次世界大戦時に歴史を遡って、 ヒットラーでさえも日本を個人的には好んでいなかったものの、 旧日本軍の軍事力を脅威に感じ、表向きに日本を賞賛して同盟関係を築いたことに触れていたけれど、 確かにこのセグメントを観た後、白人至上主義と日本についてグーグルすると 必ず出てくるのが 写真上左のような その当時の写真。
でも私がギョッとしたのは、そのグーグルの結果から 「Racism is normal in Japan/人種差別は日本では普通のこと」、 「Being racist is OK in Japan/人種差別主義者なのは日本ではOK」といったタイトルや内容のブログに辿り着いたことで、 そんなブログにフィーチャーされていたのが上の中央と右のような写真。 こうした写真がアメリカに住んでいる日本人の目に恐ろしく映るのは、 写真の中の日本人が 人種差別主義を掲げている訳ではないことが一目瞭然で分かるため。 すなわちカギ十字の腕章をしたり、白人至上主義のシンボル・フラッグの前でポーズをすることの意味を深く理解せず、 罪悪感のかけらも無しに、無邪気それをやっていることで、これは人種差別行為も無意識のうちにやっていることを意味するのだった。
こんな写真がインターネット上に掲載されていたら、アメリカやヨーロッパ諸国では危険分子扱いされて、 絶対に就職など出来ないだけでなく、アパートの入居や大学入学まで拒否されることになるけれど、 そうならない社会というのは人種差別がまかり通る社会。 そしてそんな人種差別がまかり通る社会、自分の人種に対する主張や考えの正しさを立証するために闘う必要が無い社会という部分も、 白人至上主義者に日本がアピールする大きな要因になっているようなのだった。

日本社会が悪意も無しに そうなってしまう理由として考えられるのは、日本人の殆どが世界史をさほどしっかり学んでいないため。 世界史とは 言ってみれば 宗教史という部分が多いだけに、それをあまり学んでいない日本人が人種や宗教のタブーに極めて疎いのは自然の成り行き。 以前ユダヤ系アメリカ人が、スター・オブ・デイヴィッド(ダビデの星、ユダヤ教のシンボル)のペンダントをつけている日本人の女友達に「ユダヤ教じゃないのに、 どうしてそのペンダントをつけるの?」と尋ねたところ、「これはユダヤ教のペンダントじゃなくて、ティファニーよ」という とぼけた返事が返ってきたエピソードを話してくれたけれど、 これは明らかにティファニーがどの客層を狙って製作したペンダントかを理解していないだけでなく、そのシンボルについて全く知識が無いからこそ言えること。 でもユダヤ人がこのエピソードを笑い話にしていることからも分かる通り、ここまで無知だと腹を立てることさえ出来ないのもまた事実なのだった。

かく言う私も、何人と話しても宗教の話題では絶対に口論にならないのは、私が相手に対して意見が出来るほどの知識を備えていないため。 これまでユダヤ教、キリスト教の友人やボーイフレンドからかなり宗教に関するレクチャーを受けてきたけれど、何を尋ねようと あまりに質問が初歩的過ぎるので、全く反感を買ったことなど無いし、話す相手も「自分だって仏教については何も知らない」と考えてくれるため、 特に無知扱いされることも無いのだった。
でも宗教はさておき、私の日本人の知り合いは 日本が世界で唯一の被爆国であるにも関わらず、 アメリカが精鋭の科学者を集めて原爆を開発した計画を「マンハッタン・プロジェクト」と呼ぶことや、そのディレクターであった原爆の産みの親として知られる ロバート・オッペンハイマーの名前を知らないケースは少なく無いもの。 そんな世界史についての知識の乏しさや 関心の無さは、日本人女性が白人至上主義者の男性とでも、ユダヤ人の男性とでも上手く付き合ったり、結婚出来る要因にもなっているようなのだった。




インターネット上には、日本人社会そのものが白人至上主義であるという見解も見られていたけれど、 そう捉えられてしまうのは、日本の雑誌や広告に白人がフィーチャーされているケースが多いことや、 日本人女性が二重まぶたの大きな目に憧れ、美白のための化粧品を使うなど、白人の美をもてはやす傾向にあること、 さらに例え醜い白人男性でも 日本に行けば問題なくガールフレンドが出来たり チヤホヤされるためで、 白人男性が日本で特別扱いされているうちに 自分を過大評価して自信家になる状況は 一部で ”スーパースター・シンドローム” と呼ばれているようなのだった。

そんな中、私が興味深く思ったのは1990年代に日本に3年ほど滞在し、その間 資生堂に勤めたアジア系アメリカ人が執筆した「White Supremacy in Japan(日本における白人至上主義)」という本。 それによれば、日本の人種差別はアジア人や日本人の優位を謳うものではなく、白人至上主義を促進するもので、 日本人は ”Honorary White/名誉白人(名誉会長などと同様、肩書だけの白人という意味)”になろうとしているとのこと。 そして白人以外の外国人が 白人に比べて遥かに冷遇されることが、著者の自らの経験から描かれているのだった。
ふと考えると、私も幼い頃に カトリーヌ・ドヌーブの美貌に憧れて「ブロンドのフランス人になりたい」と思っていたことがあって、 外国への憧れも人一倍強かったけれど、そうなった理由は10歳の頃から映画も音楽も外国のものばかりに馴染んできたため。 私の場合、日本人としてのDNAに感謝すると同時に、確固たる自信や誇りを持つようになったのはニューヨークに来てからのこと。 やはりニューヨークに住んでからの方が外国人に囲まれて生きる毎日の中で 自分が日本人であることを強く意識して、自分のIDの一部として捉えるようになるからだと思うのだった。

私のかつてのボーイフレンドは、日本に行った際にチヤホヤされた外国人の1人で、バーに行けばフリー・ドリンク、 食事に呼ばれて出て行けば、誰かが払ってくれるので全てタダ というような思いをしたと言っていたけれど、 その彼でも指摘していたのは、外国人は日本に旅行者、一時滞在者として出かければ歓迎されても、 日本人になろうとすれば拒絶や差別を受けるということ。その状況を実際に体験した外国人にとっては、 日本という国は極めて人種の壁が厚いという印象を持つようなのだった。

その一方で日本人を含むアジア人女性は、再婚をしようという白人男性には 宗教を問わず好まれる傾向にあると言われるけれど、 理由は白人男性がアジア人というマイノリティ人種に対して抱いている潜在的優越感が 夫婦関係には幸いするケースが多いこと、アジア人女性は口論を避ける傾向にあり、他人種の女性より男性の面倒を見る習慣が身についていること、 さらにアメリカ人女性のように強烈なフェミニズムを押し出してこないこと。それらに加えて アジア人女性は、結婚後に体重が増えたとしても 超肥満にはならないことが挙げられているのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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