Aug. 7 〜 Aug. 13 2017

”Food Phobias Reveal Inner Damons”
フード・フォビアで分かる その生い立ちや 深層心理


今週のアメリカでは北朝鮮情勢のニュースに最も報道時間が割かれていたけれど、トランプ大統領の大人げない挑発ツイートに対して 北朝鮮がグアムを標的にすると応戦したことから、グアムに住む16万人のアメリカ人に対して配布されたのが、万一核兵器で攻撃された場合の注意書き。 でも国連の経済制裁には同調した中国が、”北朝鮮がアメリカを攻撃した場合は介入を避けるが、アメリカが北朝鮮を攻撃した場合は 軍事介入する準備がある”という姿勢を打ち出したこともあり、アメリカが軍事力を行使しないという見方が現時点では有力なのだった。

週末になって 北朝鮮情勢よりも遥かに大きく報じられたのは、ヴァージニア州シャーロットヴィルで起こった白人至上主義者の 武装デモと それに抗議する人々との間で起こった大衝突のニュース。事の発端は、南北戦争の南軍将軍の銅像が人種差別の象徴であると判断され、 今年4月に撤去が決定したものの、「歴史的遺産を保存すべき」という地元の反対勢力と対立を続けていたことから、 これに便乗してきたのが南北戦争時代の奴隷制を肯定するKKK、ネオ・ナチスを始めとする白人主情主義グループ。 表向きには銅像保存を掲げたデモに、ナチスのカギ十字やヘイトスピーチのプラカードを持って武装した白人至上主義者が大挙して州外から 流れ込み、それに反発する人々がやはり大規模なカウンター・デモを行なったことから、ヴァージニア州は緊急事態を宣言。 人々に外出をしないようにと呼びかけたものの騒ぎは大きくなる一方で、土曜日にはカウンター・デモの中に オハイオ州からやって来た白人主情主義者が運転する車が突っ込み、1人の死者と大勢の怪我人を出すヴァイオレンスに発展。またヘリコプターで事態をフォローしていた 警官2人もその墜落で死亡。
白人主情主義グループのデモに対しては銅像撤去に反対する地元市民も「歴史は保存すべきだが、歴史上の悪魔を称えるつもりはない」と反発している一方で、 KKKのリーダーで トランプ氏との個人的な繋がりが指摘されるデビッド・デュークは、 「トランプの選挙公約を自分たちが達成する。そのために自分たちはトランプを選出した」と語る鼻息の荒さで、日曜にはカリフォルニアとワシントン州でも同様の 白人主情主義者のデモが行われていたのだった。

これに対して、トランプ大統領はヴァイオレンスを否定するコメントをしたものの、白人至上主義グループを名指しで批判することを避けており、 それというのは白人至上主義者がトランプ氏の支持基盤であるため。 トランプ政権関係者で即座に白人至上主義グループを非難するツイートを行ったのはイヴァンカ・トランプで、それは彼女が ジャレット・クシュナーとの結婚に際して ネオ・ナチスが標的とするユダヤ教に改宗しているため。
いずれにしても現在のアメリカは アンチ・トランプ派が最も恐れてきた核戦争のリスク、人種差別のエスカレートによるアメリカ分断という 2つの最悪のシナリオが同時進行する状況になっているのだった。




話は全く変わって、先日友人と食事をしている最中に尋ねられたのが「何か嫌いな食べ物とか、食べられない物はある?」という質問。 実は私はティーンエイジャーの時に傷んだピータンを食べてしまい、その激烈なアンモニアの匂いと味がトラウマになって 以来、ピータンが食べられなくなってしまったので その話をしたところ、「それはトラウマではなくて、”ガルシア・エフェクト”だ」と 訂正されてしまったのだった。
ガルシア・エフェクトとは、ジョン・ガルシアが発見した症状で、特定の食べ物による身体のリアクションで その食べ物に苦手意識を抱くこと。 これには身体の消化器官が受け付けないケースと、私のピータンのように食べ物が傷んでいるケースの双方が含まれるのだった。 ふと考えると 私は子供の頃にそら豆を食べた後に 乗り物酔いをして吐いてしまったことがあり、 以来、何年も食べなかったのがそら豆。特にフォビア(恐怖症)はないし、食べろと言われれば食べられるけれど、自分でそら豆を買って食べたことは未だ一度もないのだった。

人間が特定の食べ物を非常に嫌うケースには、身体のリアクションで嫌いになるガルシア・エフェクトと、精神的な嫌悪感で食べられないフード・フォビアがあるけれど、 著名人の例を多数挙げながら、フード・フォビアについて800ページの本に纏めたのがアレクザンダー・セロー著の「アインシュタインズ・ビーツ」。 このタイトルは、相対性理論で知られるアルバート・アインシュタインがビーツが大嫌いであったという有名なエピソードから来ているけれど、 ビーツ嫌いはアインシュタインに限った珍しい現象ではなく、私の友人にもビーツが苦手な人は沢山居るし、オバマ前大統領夫妻も2人揃って ビーツが嫌いであったのは有名な話。
アレクザンダー・セローはハーバード、イエール、MIT(マサチューセッツ工科大学)のようなエリート校で教鞭をとってきた小説家であるけれど、 彼によれば、人間がどんな食べ物を好むかよりも、何を苦手とするか、どんな食べ物にフード・フォビアを 抱いているかの方が、その人間性を正確に把握するのに役立つとのことなのだった。




アレクザンダー・セローのリサーチによれば、セレブリティの中には特定の食べ物を嫌う人は少なくないようで、 ブリットニー・スピアーズはミートローフが嫌い。シューズで有名なマノーロ・ブラーニックはワインとヴィネガーを嫌い、 テイラー・スウィフトはどんなに努力してもスシが好きになれないとのこと。ジョージ・W・ブッシュ大統領の父親である、ジョージ・H・ブッシュ元大統領は ブロッコリーを嫌悪しており、オバマ政権下で国務長官だった元大統領候補、ジョン・ケリーはセロリが大の苦手。 ジョン・トラヴォルタは食通で知られるもののニンニクを拒絶しており、 エルヴィス・プレスリーは魚とその匂いが大嫌いであったとのこと。 またジェニファー・アニストン、ナオミ・ワッツはキャビアを決して食べないという。

変わったところでは、オプラ・ウィンフリーのガム嫌いというのがあるけれど、 彼女は自分でガムを食べないのはもちろんのこと、他人がガムを噛んでいるのさえ耐えられないそうで、 かつて自らのトークショーをホストしていた時代には、そのスタジオが入ったビル全体でガムを禁止したほどのガム嫌い。
何故彼女がそれほどまでにガムが嫌うかと言えば、 ミシシッピー州で過ごした子供時代に、彼女の祖母が頻繁にガムを噛んでは 噛み終えたガムを捨てずにキャビネットに貼り付けていたとのこと。 そのためキャビネットにはペパーミント・ガムとフルーツ・ガムが列になってこびり付いていたそうで、 オプラ・ウィンフリーは子供心にそれを眺めては嫌悪し、恐怖心さえ抱いていたと語っているのだった。
このエピソードにはオプラ・ウィンフリーの几帳面な性格と、本来コントロールを好む彼女が それが出来ない状況をいかに嫌うかが表れているけれど、 スタジオが入ったビル全体で彼女がガムの禁止令を出すに至ったのには、その嫌悪と恐怖心を 彷彿させるトリガー(引き金)となる出来事があったと言われるのだった。




フード・フォビアと人間心理の関連を如実に表しているのは映画監督、アルフレッド・ヒッチコック(写真上左)の例。
彼は 映画「鳥」で知られるだけあって鳥嫌いは有名で、代表作「サイコ」の中でもメイン・キャラクター、ノーマン・ベイツの異常性を演出するために 彼が部屋の中に 鳥の はく製を飾っている様子を描いているのだった。 そのヒッチコックは卵が何より嫌いで、彼は「卵を食べた事が無い」というだけあって味が嫌なのではなく、、不気味な物体として恐れていると語っていたのだった。 彼のヒット映画「泥棒貴族」の中ではヒロインのグレース・ケリーの母親役が、タバコの吸い殻を目玉焼きに押し付けるシーンがあるけれど(写真上右は そのシーンを描いた絵画)、それにも如何に彼が卵を嫌ったか、特に卵黄を恐れて敵視していたかが表れているのだった。

でもヒッチコックの父親は養鶏業者で、彼が育ったのは鳥や卵と深く関わる環境。 そんな彼が鳥や卵と同様に恐怖心を抱いていたのが警察と父親で、それというのも ヒッチコックが5歳の時に父親が「自分の息子に罰を与えたいので 5分間牢屋に留置して欲しい」というメモを持たせて 彼を近所の警察に行かせたため。 心理学の専門家の中には、彼の卵や鳥への恐怖や嫌悪が 父親に対する彼の潜在意識を反映したものと指摘する声も聞かれるのだった。
ヒッチコックは自らのフォビアを理解しているだけに、周囲の人間のフォビアも直ぐに察知する嗅覚があり、 クモを恐れる人間に あえてクモが箱詰めにして送りつけるようなダーク・ユーモアを好んでいたことも伝えられるのだった。

さて前述の通り、テイラー・スウィフトはスシ嫌いであるけれど、逆に彼女が好むのはダイエット・コークとハンバーガー。 14歳の時からテネシー州、ナッシュヴィルに住み、カントリー・シンガーを目指していた彼女であるけれど、 テネシー、アラバマ、ミシシッピー等、アメリカの南部では、未だにスシを食べたことが無い、食べた途端に吐き出す人は珍しくないのが実情。
これはフォビアというよりも「魚は火を通して食べるもの」という意識によるもので、 南部の人にとって「白米の上に生魚を乗せて食べる」というのは、まだまだ理解できないコンセプトなのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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