July 16 〜 July 22 2018

”Cold Cases Solved by Snapshot DNA”
迷宮入り事件を短時間で犯人逮捕に導く、 スナップショット DNA


今週のアメリカのメディアは月曜にフィンランドのヘルシンキで行われた会談後の 共同記者会見で自国の調査機関よりも、プーチン大統領を信頼する発言を行ったトランプ大統領についての 報道に最も時間が割かれていたけれど、これまでトランプ氏が何をしようと諸手を挙げて支持&賞賛してきたFOXニュースまでもが この会見でのトランプ氏批判をしたほどなので、このインパクトはかなりのもの。
一方、週末に大きな報道になったのはマンハッタン5番街のフラットアイアン地区で起こった地下スチーム・パイプの爆発事故。 マンハッタンの地下にはダウンタウンの南端から西側は96丁目まで、 東側は89丁目まで、100マイル以上に渡ってスチーム・パイプが走っていて、それが2000以上のビルディングを結んでいる構造。 同様の爆発は数年前にグランドセントラル駅付近でも起こっているけれど、今回の被害を大きくしているのが爆発と共に空気中に飛び散ったアスベスト。 このため付近の住民500人と近隣オフィスに強制立ち退き令が出て、スチーム・パイプを管理するニューヨークの電力会社、コンエディソンでは 爆発時に現場付近に居た人々の衣類の無料のクリーニング・サービスを受け付け、衣類に付着したアスベストの危険性を呼び掛けていた状況。 土曜日の大雨によって、空気中のアスベストの危険は収まったことから 一部の住人の帰宅が許されたのが今週末なのだった。




さて、今週アメリカで逮捕されたのが インディアナ州で30年前に起こった少女性的虐待殺人事件の容疑者。
アメリカではこのところ、”コールド・ケース(迷宮入り事件)” の殺人容疑者が 立て続けに3人逮捕されており、警察の特別捜査班が20年、30年といった月日をかけて捜査しても 一向に真犯人逮捕に繋がらなかった事件が、2〜3週間のDNA鑑定捜査によって解決しているのだった。 これを可能にしているのが 2015年から実用化がスタートした最新テクノロジー、“スナップショットDNA” 。
スナップショットDNAでは 遺伝子のマッチだけではなく、その遺伝子を持つ容疑者の肌、髪の毛、目の色、顔の形といったルックスの詳細情報や、 容疑者の顔のエイジング・プロセスに加えて、容疑者の祖先のDNAを想定することが出来、 その結果可能になったのが 遺伝子系図学による犯人の割り出し作業なのだった。

今週逮捕されたのは、1988年に一人で帰宅中のエイプリル・ティンズレー(写真上右、当時8歳)をレイプ&殺害した容疑のジョン・ミラー(写真上中央、現在59歳)。 事件現場から採取された容疑者のDNAは 前科者のDNAデータベースとマッチせず、捜査は暗礁に乗り上げて久しい状況となっていたもの。 既に40件以上のコールド・ケースの容疑者DNAが 鑑定ラボに送られていることが伝えられるけれど、 ここへきて遺伝子系図学による捜査が行えるようになったのは、過去数年間にアメリカ社会でトレンディになっていたDNA鑑定テストのおかげ。 アメリカ人の多くが自らの人種バックグラウンドや、自分の将来の健康リスクを正確に知るために行っているのが こうしたDNA鑑定テストであるけれど、 これによってDNA情報のデータベースが、前科者だけでなく一般の人々を含めた膨大な規模に広がったことから 容疑者のDNA家系を辿るというユニークな捜査法が生まれているのだった。
そのプロセスは以下のようなもので、容疑者に類似したDNAを持つ遠縁の親戚をデータベースから探し当てる作業から始まり、 その親戚のDNAを分析して、容疑者と同じ祖先に辿り着くまでのファミリー・ツリー(家系図)を遡って構築するのが次のステップ。 そしてその祖先から 犯人のDNAに辿り着くまでのファミリー・ツリーをデザインするのが捜査プロセスで、同事件では それによって絞り込まれた犯人像が ジョン・ミラーと彼の兄弟の2人。 警察は逮捕状や捜査令状が無ければDNAの提供を本人に求めることが出来ないため、 容疑者自宅のゴミの中の 紙コップやタバコの吸い殻などからDNA情報を得なければならなかったけれど、 ジョン・ミラーの紙コップ、及び使用後のコンドームから採取したDNAが容疑者のものとぴったりマッチしたことから 逮捕の運びとなっているのだった。
ジョン・ミラー本人はその容疑を認めており、30年前にエイプリルを誘拐してレイプしたのち、首を絞めて殺害。 その死体をさらにレイプした後、遺棄したことを自白しているのだった。






こうして何十年も解決しなかった殺人事件の犯人がDNAテクノロジーの著しい進化で逮捕されるのは朗報である一方で、 女性達の間で不満の声が上がっているのが、俗にいう”レイプキット”(レイプの被害者から 採取された容疑者のDNA情報)が全米の州で、 DNA鑑定の対象にさえならず、倉庫で野放し状態になっているという事実。 これについては、NBCの長寿人気ドラマでニューヨーク市警察のスペシャル・ヴィクティムズ・ユニット(性犯罪捜査班)を描いたドラマ「ロウ&オーダーSVU」で主役の女性警部、 オリヴィア・ベンソンを演じるマリシュカ・ハージティが立ち上がり、それに抗議するムーブメントを起こしている真っ最中。 そのムーブメントはケーブル局、HBOが「I am Evidence」というドキュメンタリーを製作して、今年4月に公開しているのだった。

レイプを始めとする性犯罪の容疑者は常習犯が多く、採取したDNAから わざわざ祖先を遡るような手間を掛けなくても、 前科者のDNAデータベースでマッチが見つかるケースが殆ど。 見方を替えれば 簡単に容疑者の割り出しが出来る一方で、その容疑者が犯罪を繰り返す可能性があるにも関わらず、 捜査自体が野放し状態であるだけでなく、犯罪再発防止対策が全くされていないということ。
この背景にあるのは社会に根強かった性犯罪におけるヴィクティム・ブレーミング、すなわち容疑者を捉えたところで 「被害者が”No”と言わなかった」、 「被害者が挑発的な態度や服装をしていた」等、被害者の非が責められて 容疑者が不起訴、もしくは無罪放免となってきた歴史。 その状況がようやく変わり、レイプ・ヴィクティムに対する社会の偏見が取り除かれてきたのは近年で、それに大きく拍車が掛かったのがMeTooムーブメント。
世の中には MeTooムーブメントに批判的な人々が居るけれど、 女性が歴史上で犠牲になってきたものと言えば セクハラ以前に まずは性犯罪。そんな犯罪の取り締まりやジャスティスが疎かであったからこそ、社会でセクハラというものがまかり通ってきたとさえ言えるのだった。




今週には上のビデオがソーシャル・メディア上でヴァイラルになっていたけれど、これはジョージア州のレストランで7月初頭に起こった出来事を捉えた防犯カメラの映像。 ホットパンツを着用したウェイトレスのヒップを 後ろを通り過ぎた男性来店客が白々しい様子で触り、それに激怒したウェイトレスが 後ろから男性に飛び掛かって 壁に投げつけたというのがそのアクション。 ウェイトレスはその後すぐに警察に通報。男性は「後ろを通りかかる時に 女性を避けようとしただけ」と言い訳したものの、 警官が防犯カメラの映像をチェックし、文句なしにその場で逮捕の運びとなったのだった。
この男性が 男友達とビールを飲んで酔っ払った大学生ならば未だ状況が理解できるものの、実際には男性31歳。 レストランに彼と一緒に来ていたのは11年間も交際しているガールフレンドと 二人の間に生まれた双子の女児。 結婚はしていなくても 家族連れでの来店。 にも関わらず こんな行動に及んだというのは、この男性が同様のチャンスがある度に痴漢行為を行ってきたと思われる訳で、 たまたまこの時だけの出来心とは考えられない状況。
こういう映像を観ると、痴漢男性が ”アクシデントで触れた状況” と ”意図的に触った状況” の区別が 女性にはつかないだろうと 高を括っている様子が感じられるけれど、これが如何に異なるかは痴漢の被害に遭った女性なら誰でも証言出来ること。 したがって触られた21歳のウェイトレスが 怒って男性に飛び掛かるのは 当然のリアクション。 男性側にしてみれば、まさかこんな事になって自分の顔写真が ”女性に投げ飛ばされた痴漢” として 全米のメディアに掲載されるとは 想像も出来なかったことなのだった。

一方のウェイトレスは、今週様々なメディアからインタビューを受けて 一躍 ”時の人” になっていたけれど、 私の見解では ”女性のエンパワーメント” と言いながら 自分のヌードをソーシャル・メディアで公開したり、裸同然のシースルードレスで レッド・カーペット上に現れるキム・カダーシアンに代表される一部の女性セレブリティよりも、 このウェイトレスの方が 遥かに ”女性のエンパワーメント” を実感させてくれる存在なのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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