July 10 〜 July 16 2017

”Not So Fast…”
アマゾンのホールフーズ買収に待った?、
& 今メガリッチが食材を調達する場所は?



今週のアメリカは、ドナルド・トランプ Jr が、ジャレッド・クシュナー、元トランプ選挙参謀のポール・マナフォートと共に、 ロシアの弁護士及び、元ロシア軍スパイであったのロビーストらと、2016年の選挙期間中 トランプ・タワーでミーティングを行っていたスキャンダルが毎日のように報じられていたけれど、そのスキャンダルの台風の目になっていたのは、 ドナルド・トランプ Jr 本人が公開したミーティングをアレンジするEメールのやり取り。その中ではロシア政府の トランプ支持が明記されていたのに加え、日を追うごとにドナルド・トランプ Jr の 事実隠蔽が明らかになっていたのが今週。
トランプ氏は例によってこのロシア・スキャンダルがフェイク・ニュースと言い逃れしているものの、トンランプ陣営は今や トランプ Jr から ジャレッド・クシュナー、イヴァンカ・トランプまで全員弁護士を雇っているだけでなく、その弁護士までもが弁護士を雇っていることが 伝えられているのだった。




それ以外に今週ちょっとした報道になっていたのが、6月16日に発表されたアマゾン・ドットコムによるホールフーズ・マーケットの買収が 消費者市場に与えるインパクトについての公聴会を下院で行うべきとの提案が出されたニュース。
アマゾンが全米に450店舗を構える高級食料品マーケット、ホールフーズを137億ドル(約1兆5410億円)で買収するニュースは、 その後1日でアマゾンの株価ヴァリューを112.5億ドル(約1兆2650億円)アップさせ、買収費用の殆どがそれだけで賄える状況をもたらしたのは大きく報じられた通り。 その反面、ライバル業者20社の株式がその日に失ったヴァリューは合計で37.7億ドル(約4241億円)。 この時点で年間8000億ドル(約90兆円)と言われるアメリカの食料品市場において アマゾン・ドットコムがそのシェアを大きく拡大することを誰もが予想したけれど、 ここへきてそれに待ったの声が掛かる可能性が様々な方面から浮上しているのだった。

下院公聴会の提案をしたのは、ホールフーズに食品を卸す大手企業の本拠地があるロードアイランド州の議員であるけれど、 世界最大の小売業者であるアマゾンがホールフーズ買収によって食料品の販売に本腰を入れることにより、 何が見込まれるかと言えば、消費者の食材購入ルート、食材の流通経路、食材のパッケージングが大きく変わること。 加えて中小の食材店の生き残り困難や、アマゾンに対抗するための更なる大手の合併等、ビジネスにも消費者にも少なからぬインパクトが見込まれるのだった。
でも下院には買収について口出しをする権限はなく、この買収を承認するか否かを決めるのはFTCことフェデラル・トレード・コミッション。 当然の事ながら、トランプ政権下のFTCのメンバーはトランプ大統領によって指名されているけれど、 アマゾンのCE0、ジェフ・ベゾスと言えばアンチ・トランプ派で知られるビジネスマンの筆頭。 しかもアマゾンが買収したワシントン・ポスト紙は、選挙戦の最中から現在に至るまでトランプ氏に対して厳しい批判報道を行ってきた存在で、 トランプ氏が CNNやニューヨーク・タイムズと同様に嫌うメディア。
それもあって、トランプ政権=FTCがアマゾンとジェフ・ベゾスへの報復や嫌がらせで、”独占禁止法”を持ち出してこの買収を認めない可能性を示唆する声が ここへ来て浮上しているのだった。

とは言っても全米にたかだか450店舗しかないホールフーズは、全米の食料品スーパーの中では第10位の規模で、 その売り上げは2016年度で151億ドル(約1兆7000億円)。これに対して第1位のウォルマートは 2016年の食料品部門だけの売り上げが4820億ドル(約54兆2620億円)。 すなわちアメリカの食料品市場の半分以上を1社で売り上げている訳で、それを思えばウォルマートが独禁法に引っかからないことの方が不思議と言えるのだった。




さらにこの買収に不協和音を唱えているのはホールフーズの株主も然り。
ここ数年 経営不振で株価を落としていたホールフーズには、アマゾン以外にも数社から買収のオファーが寄せられていたというけれど、 株主に他社からのオファーを公開しないままアマゾンからの買収に応じたこと、そしてその買収がアマゾン側に一方的に有利に進んだとして、 ホールフーズの株主達が不満の声を上げ始めているのだった。

先週明らかになった同買収の舞台裏の情報によれば、アマゾンに対して買収のアプローチをしたのはホールフーズで、それは4月23日のこと。これに対して アマゾンが1株当たり41ドルの買収価格を提示したのは それから1か月が経過した5月23日。ホールフーズ側はそのカウンター・オファーとして5月30日に1株当たり45ドルの価格を提示。 アマゾン側に付いてこの買収のアドバイスをしていたのはゴールマン・サックスであったけれど、アマゾンもゴールドマンもこの時点のホールフーズからの カウンター・オファーをかなり不服としていたという。
そして2日後の6月1日にゴールドマンのチームが「これ以上を望むなら、アマゾンは別の可能性を模索するだけ」と宣言して突き付けたのが1株当たり42ドル。 負債を抱えて業績が下降線を辿ってる中、アマゾンに借金ごと買い取って貰えるオファーを逃したくなかったホールフーズは 程なく自ら提示したカウンター・オファーより1000億円以上安い価格で買収に応じたのだった。

このバックストーリーから窺い知れるのは、アマゾン側にとってはアマゾン・フレッシュを拡大して、ウォルマートと張り合う食料品ビジネスをするパートナーは、 特にホールフーズで無くても良かったということ。実際、アマゾン・プライムのメンバーだけで全米に8000万人を擁するアマゾン・ドットコムにとって、 ホールフーズの客層は極めて小さなターゲット。そうなってしまうのはホールフーズが、全米の食料品マーケット・チェーンの中で最も高価格で知られるためで、 同じシリアルのボックスを買ってもホールフーズの方が他より高いのが実情。ホールフーズが高額スーパーになってしまったのは、 オーガニックが広く普及する前から オーガニック食材を幅広く仕入れていたためで、現在ホールフーズの オーガニック食材の取り扱い数は約3万点。スーパーの中ではダントツの品揃えを誇っているのだった。

そんなアマゾンによるホールフーズの買収直後には、ツイッター上に以下のようなジョークが数多く飛び交ったけれど、その殆どはホールフーズの食材の高額さをネタにしたものなのだった。






私もかつてはホールフーズで食材を調達していた時期があったけれど、それはオーガニックの野菜や果物が一般に普及する前の話。 今ではホールフーズと同等の新鮮なオーガニック食材をホールフーズより安価で提供するマーケットが増えてきており、それが昨今ホールフーズが売り上げを落としている要因。
それ以外にも私がホールフーズに足を運ばない理由はベーグルを含めたパンの味が悪い事、チーズのセレクションが悪く 新鮮でない事が挙げられるけれど、 ホールフーズが好きな人は、とにかくホールフーズでしか食材を買わないケースは少なくないもの。 でもそんな人でも「甘すぎる」と言って買わないのがホールフーズのケーキ類で、私は未だかつてお土産としてケーキを持参した人が、ホールフーズで買ったものを持ってきた例に 遭遇したことが無いのだった。

さて、ホールフーズと共によく名前が挙がるマーケットにトレーダー・ジョーズがあるけれど、日本からの旅行者の中には同店がホールフーズと同等と勘違いしているケースが少なくないもの。 そのトレーダー・ジョーズは ”庶民のホールフーズ” と言われる大衆的な存在で、ホールフーズと一緒にしたら ホールフーズのぼったくりプライスを支払っている人に申し訳無いような 安さがウリのマーケット。 お値段だけでなく 野菜や果物の質もホールフーズとは段違いで、トレーダー・ジョーズの野菜、特に葉物は一晩冷蔵庫に入れておいただけで、 鮮度がガタ落ちするケースが多く、私にとっては「オーガニックといってもピンからキリまである」ことを思い知らさせてくれた存在になっているのだった。

目下、ニューヨークの食材調達のマーケットで最もプレステージが高いのは、ホールフーズではなくフラットアイアンと、 ファイナンシャル・ディストリクトのブルックフィールズ内にあるイータリー(写真下)。 ここは野菜や果物をホールフーズのようにドサッと並べるのではなく、バスケット等に入れて少しずつしかディスプレーしないポリシーで、見た目も味も素晴らしいクォリティ。 ホールフーズより肉や魚の質も良いけれど、ホールフーズが「安い」と思えるお値段が付いていることも珍しくないのだった。
ではお抱えのパーソナル・シェフがいるようなメガ・リッチの場合、何処から食材を調達しているかと言えば それはマーケットではなく 一流のレストラン。 パーソナル・シェフになる人物というのは通常、一流レストランで働いていた経歴があるので、その古巣のコネクションや シェフを雇っている大金持ちと一流レストランのお得意様関係を利用して、レストランを通じて食材を調達しているケースが非常に多いのが実情。 そうすることによって、提携のオーガニック農家からの直送の野菜が安定して手に入るだけでなく、肉やシーフードも 一流のものが入手できるようになっているのだった。
要するに「お金さえあれば新鮮かつ安心な食材で、美味しいものが食べられる」というレベルにも、上には上があるということなのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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