July 3 〜 July 9 2017

”The Lessons Learned from One 57 ”
既に銀行差し押さえ2軒の高級コンドミニアム、
ワン・フィフティセブンから学ぶニューヨーク不動産投資のリスク



3週間前に報じられたのが、マンハッタンの”ビリオネア・ロウ”というニックネームが付いたミッドタウン57丁目を中心としたハイライズ・コンドミニアムが集まるエリアの 中核的なビルディングで、ニューヨーク市初の100億円コンドミニアムが誕生したOne 57 / ワン・フィフティ・セブン(写真上)で、 2軒目の銀行差し押さえが出たというニュース。
ワン・フィフティ・セブンは、鳴り物入りで2015年にオープンしたビルディングではあるものの、その3分の1が今だに売れ残っている状態で 一部のアパートは購入者ではなく、デベロッパーによってレンタルされている状況の、言わば期待外れのプロジェクト。 にもかかわらず、今週ワン・フィフティ・セブンのデベロッパーが発表したのが、その並びの57丁目沿いに 新たに40億ドル(4440億円)のコンドミニアム、”セントラル・パーク・タワー” (写真下がそのレンダリング)を建設するプラン。
このビルディングが果たして何階建てになるかは未だ明らかにされていないものの、126ユニットのうちの20ユニットがペントハウスになるようで、 お値段は最低6000万ドル(約67億円)。 とても3分の1が売れ残っている高額ビルのデベロッパーとは思えない、非常に強気で野心的なプランなのだった。







ワン・フィフティ・セブン(写真上)は157 West 57th Streetに位置する75階建てのビルディングで、39階までがパークハイアット・ホテル、40階からが95ユニットのコンドミニアム。全ユニットが 床から天井までのウィンドウ・ウォールになっていて、そのうちニューヨークの 住宅価格の記録を塗り替えた$100.5ミリオン(約111億円)のお値段がついたのは、 最上階のペントハウス・デュプレックス。2軒目のペントハウス・デュプレックスはヘッジファンダー、ビル・アックマン率いるインベスター・チームが 10億円近く値切って、$91.54ミリオンで購入しているのだった。
アメニティ・フロアにはジム、プール、スパ、シアター、ライブラリーがあり、自宅でのダイニング&ケータリング・サ―ビス、自宅でのスパ・サービス、クリーニング・サービス、犬の散歩サービスなど、 パークハイアット・ホテルのサービスをコンドミニアムの住人が利用できるのが大きな魅力。 このようにホテルのアメニティをそのままコンドミニアムで利用できるというコンセプトは、ミッドタウン53丁目のバカラ・ホテル&レジデンスや、ファイナンシャル・ディストリクトの ビークマン・ホテル&タワーにも見られていて、ニューヨークの住人ではない バイヤーにとっては、投資兼ホテル代の節約になる願ったり叶ったりのコンセプト。
加えてワン・フィフティ・セブンはセントラル・パークや5番街にほど近いマンハッタンのど真ん中に位置しているとあって、 オープン前に同ビルディングの物件を購入した26人のバイヤーの半分程度は フリップ(投資目的の転売のスラング)目的であったと言われるのだった。

ワン・フィフティ・セブンは、ビリオネア・ロウにおける最初のシンボル的ビルディングであったけれど、 やがて同ビルディングは、これまで最もリスクが少ないと思われてきたニューヨークの高級不動産フリップにも リスクが伴うという教訓の象徴になっていくのだった。




ニューヨークの高額不動産のフリップには2通りの方法があって、1つはCUBE New Yorkでもご紹介した 俳優のメグ・ライアンのように、出物の物件を購入&リノベートして、利益を乗せて売りに出すというもので、これは一般的な不動産フリップのコンセプト。
もう1つは ビルディングの完成前、時に建築前の段階で物件を購入し、ビルディングが完成&オープンしてから利益を乗せて売りに出すというもの。 したがって、バイヤーはコンピューター・グラフィックのレンダリングを見て物件を購入することになるけれど、デベロッパーは建物が完成する前に 売り上げを得て それを建築費に当てたり、別プロジェクトの資金に回そうとしているので、 ビル完成後に購入するよりも安く手に入るのがこの段階。通常、マンハッタンの高級コンドミニアムは、建築中に売り上げが好調であればあるほど 完成を待たずして価格がアップしていくものなので、早く購入すればするほど利ざやが稼げるのがこのフリップ。 リノベーションの必要もなければ、それに伴うリスクもなく、組んだローンさえ支払えば それを返済している最中に売却することによって、 利ざやを乗せた売値のキャッシュが転がり込んでくるのだった。

ところがワン・フィフティセブンは完成しても価格が上がらないどころか、売れ残っている物件が多く、フリップを狙っていた数人のバイヤーが ビルディング完成後に買値よりも20%低い価格で売却していることで知られるビルディング。 ではワン・フィフティセブンの何が悪かったかと言えば、売れ残っているコンドミニアムについては間取りが悪く、値段の割に狭いことが1つ。 加えて同ビルの完成から間もなく、96階建てのラグジュアリー・コンドミニアムでデザイン的にも優れた 432パーク・アベニュー(写真上左)がそそり立ち、 そちらにバイヤーをかなり奪われたことも指摘されるのだった。(432パーク・アベニューについては、ここをクリックして トランプタワーとの比較記事でご覧いただけます
さらには不動産投資家は縁起を担ぐ人々が多いだけに、 ワン・フィフティセブンの建設中、ハリケーン・サンディの猛威でそのクレーンがひっくり返って大報道となり(写真上右)、近隣の住人が立ち退きを強いられる事態となったことを受けて、 同ビルディングに不運のオーラを感じる人が少なくないのもまた事実。 実際、同ビル内のパークハイアット・ホテルのレストランは常に閑古鳥状態。 インテリアはモダンで美しく、サービスも良く、味も悪くないけれど、何故かニューヨーカーが近寄らないスポットになっているのだった。





でもワン・フィフティセブンのコンドが売れ残る最大の理由は、バイヤーの層が限られている一方で、マンハッタン内に次々と新しいモダンな超高級タワー・ビルディングが 建設されているため。 ここ数年のダウンタウンで最も話題のコンドミニアムは、トライベッカの56レオナルド・ストリート(写真上)。アウトドア・テラスを設けるために 各フロアが少しずつスライドしたようなデザインの57階建てコンドミニアムは、全145ユニットでお値段は$3.5ミリオン~$50ミリオン(約3.9億円〜56億円)。 2013年に売り出され、2016年に完成したけれど、売り出しから7か月で92%に買い手が付いた人気物件。 私もつい最近このビルをルーフトップ・バーから眺めていたけれど、ダウンタウンのスカイ・スクレーパーで一際目を引くユニークな建物なのだった。

現在のマンハッタンの開発ブームはビリオネア・ロウや、ロックフェラー・センター以来の大開発と言われるハドソン・ヤード(写真下左)にとどまらず、ありとあらゆるエリアで行われている状況。 後発のビルの方がアメニティが良く、かつてはジム、プール、スパ、パーティー・ルーム、シアター程度で十分だったアメニティが、今ではボーリング場、茶室、ポーカー・ルームなど 住人のレジャーを幅広くカバーして差別化を図る傾向にあるのだった。
その一方で 56レオナルド・ストリートのようにユニークな建築がもてはやされるのも紛れもない事実で、 この春にはギリシャのアーキテクト、イオアニス・オイコノモウが、ワン・ワールド・トレードセンターよりも200フィート高い ”ビッグ・ベンド”という逆U字型のビル(写真下右)を ビリオネア・ロウに建設するためにインヴェスターを募っている最中であることが伝えられているのだった。

ちなみに再開発が盛んなのはマンハッタンだけでなく、昨今マンハッタンの家賃が上がり過ぎたのを受けて、 目下大開発中なのがミッドタウンのイースト・リバーを挟んで反対側のクイーンズのロングアイランド・シティ。 現時点だけで38のビルディングが建設されていて、ハドソン・ヤード完成後には同敷地内のオフィスに勤める人々にとっては、 地下鉄7ライン1本で自宅と職場が結ばれる地の利があるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

Shopping
home
jewelry beauty health apparel rodan

PAGE TOP