June 19 〜 June 25 2017

” Rich Gets Richer, Easily ”
ジョージ・クルーニー&ランディ・ガーバーのテキーラ・ブランド買収に見る
リッチ・ゲッツ・リッチアーの典型的シナリオ



今週のアメリカで最大の関心を集めていたのは、上院議会に提出されたオバマ・ケアに取って代わる 新たな健康保険案。その内容は貧困層が健康保険を失うだけでなく、既に心臓病や糖尿病を患っている人々は 命をも失うリスクに瀕する一方で、 富裕層は大幅な税金カットで益々潤うというもの。
でも今週、それよりも ”Rich Gets Richer, Easily / リッチ・ゲッツ・リッチアー・イージリー” のシナリオを印象付けたのが、 ジョージ・クルーニーとランディ・ガーバーが趣味で始めたハイプレミアム・テキーラのブランド、カーサアミーゴが、 ブランド誕生から僅か4年で イギリスの蒸留酒製造業者、ディアエゴPLCに約10億ドル(約1110億円)で買収されたというニュース。

ジョージ・クルーニーの親友であるランディ・ガーバーは、シンディ・クロフォードの夫としても知られ Wホテル・チェーン内の、「ウィスキー」、「ウィスキー・ブルー」といったバー経営等をビジネスにするアントレプレナー。
2人はヴァケーションでメキシコに出掛けた際にテキーラの味にはまってしまい、 自分達の好みのハイプレミアムのテキーラを作ろうと考えたのが カーサアミーゴのビジネス誕生のきっかけ。 ランディ・ガーバー自身、このビジネスが生まれたのは「アクシデント」と語っており、 お金儲けなど考えてもいなかったとのことなのだった。




ジョージ・クルーニーとランディ・ガーバーの2人は その後2年ほどに渡って、地元メキシコのテキーラ蒸留業者を巡り、 好みのテキーラのレシピを開発。 自分達と家族や友達のみに流通する目的のプライベート・ブランドとしてカーサアミーゴをクリエートしたものの、 メキシコからそれを1000本輸入するに当たって、業者にアドバイスされたのが きちんとリカーの流通ライセンスを取得しないと 取り締まりの対象になるということ。そのため2人はプライベート・ブランドの段階で ライセンスを取得したけれど、この段階では未だ販売は目的にしていなかったという。

でも友人達の間で その口当たりの良いテキーラーが思いの他 好評であったことから、 2人は共通の友人である 不動産ミリオネアのマイケル・メルドマンを3人目のパートナーとして迎え、 アメリカのリカー流通業者とチームアップし、2013年からカーサアミーゴを一般に向けて販売し始めたのだった。
それからというもの、カーサアミーゴはその味わいが評価されて 数々の賞を受賞する一方で、 口コミの評判も広がって、アメリカにおいて最も急速に売り上げを伸ばしているスーパープレミアム・テキーラとなり 2016年には12万ケースを売り上げるまでに成長。
スーパープレミアムとは言ってもテキーラなので そのお値段は40〜50ドル程度。 ラベルにはジョージ・クルーニーとランディ・ガーバーのシグニチャーがフィーチャーされており、 彼らのネーム・バリューがビジネスに貢献していることは言うまでもないのだった。




ディアエゴPLCによるカーサアミーゴの買収額は、前述のように10億ドルと報じられているけれど、 実際に買収の段階で ジョージ・クルーニー、ランディ・ガーバー、マイケル・メルドマンの3人のパートナーが受け取るのは 7億ドル(約777億円)。その後のセールス・パフォーマンスが好調であれば、さらに3億ドルが支払われるのが買収の条件。
でも3人のパートナーは企業とは一切組まず、自らの資金だけでカーサアミーゴを経営してきたので、 買収が成立した段階で それぞれが7億ドルの3分の1、すなわち250億円以上を受け取る計算。
これが僅か4年前に趣味で誕生したビジネスで、しかもオーナー達が行うプロモーションはパーティーやイベントをホストしては テキーラを飲むという、仕事でなくても日頃からやっきたことである状況を考えると、 これほど簡単なお金儲けは無いと思えてしまうけれど、 こんなことが出来るのはジョージ・クルーニーとランディ・ガーバーが、 インベスターに頼らずに 自力でビジネスをスタートできるだけの資産を持ち合わせているためなのだった。

カーサアミーゴを買い取ったディアエゴPLCと言えば、プレミアム・ウォッカのCIROC/シロックのオーナーでもあり、 同ウォッカのプロモーションにおいては ショーン・ディディ・コーン(写真上)とパートナーシップを組んでいる企業。 ショーン・ディディ・コーンは そもそも同ウォッカの大ファンで、あまりに同ウォッカを熱心にプロモートすることから、 彼がシロックのオーナーだと信じている人は多いほど。 でも実際には 彼がプロモーションを担当して、利益をディアエゴPLCと折半しているのがそのパートナーシップ。 年間にそれぞれが約100億円以上を稼ぎ出すドル箱ビジネスなのだった。
このシロックからの収入も手伝って、ショーン・ディディ・コーンの総資産は8億2000万ドル(約9130億円)。 2017年度のヒップホップ・アーティストの長者番付では、ジェイZを抜いてトップに輝いているのだった。




今週にはコントアー・メークの女王、キム・カダーシアンも 自らのコスメティック・ブランド、KKWビューティーの発売を開始し、 僅か10分で完売したコントアー&ハイライト・キットで 約14億円を稼ぎ出したニュースが伝えられたけれど、 同ブランドは、これまでライセンシングで自分の名前を企業に使わせて、 そのロイヤルティだけを受け取ってきたキム・カダーシアンが、初めて自分の資金でクリエイトしたビジネス。 従って利益の大半が彼女だけのものになるという点で、これまでの彼女のビジネスとは異なっているのだった。

でもセレブリティが自分の趣味やニーズを満たすためにクリエイトしたブランドで、 近年最も大きなサクセスを収めたのは、ドクター・ドレが2006年にクリエイトしたヘッドフォン・ブランド、Beats/ビーツ。 生産コスト 僅か7ドルのヘッドフォンが200ドルで飛ぶように売れてしまうだけでも かなり美味しいビジネスであったけれど、それを2014年にアップル社が30億ドル(約3330億円)で買収。 これによってドクター・ドレの個人資産が7億4000万ドル(約824億円)に跳ね上がっているのだった。
ちなみにビーツのヘッドフォンがこれだけ高額な理由は、「音楽好きは安いヘッドフォンには興味を示さない」という ドクター・ドレの考えを反映したもので、それがまさに大当たりしたのがこのビジネス。もちろん その背景には、彼のヒップホップ界における大きな功績を信頼する消費者心理があるのは言うまでもないのだった。

このように資産があれば、自分の趣味や好みを反映したプロダクトを自己資金で生産することが出来、 ネームヴァリューがあれば そのマーケティングも簡単に行えるというのがこれらの例。 でも資産さえあれば セレブリティであってもなくても 不動産や、スタートアップのビジネスに投資をすることによって 働くより効率良く、さらなる資産が築けるのが今の世の中。
今週には企業価値7兆円以上と言われるカーシェアリング・サービス、UberのCEO、トラヴィス・カラニックが 企業内のセクハラ・スキャンダルを含む不祥事で辞任したけれど、 そのUber創設時からのセレブ・インべスターとして知られるのが俳優のアシュトン・クッチャー。 昨今、映画やTVドラマで演技をしている姿を全く見た事が無い彼であるけれど、 働かなくてもUberのIPOと共に彼の個人資産は何百億円も膨れ上がるのは時間の問題。
アクセク働いても まともな健康保険にさえ加入出来ない庶民とは 全く異なる状況なのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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