June 5 〜 June 11 2017

” Summer Destination, Japan "
メガリッチがこの夏のヴァケーションで日本を選ぶ理由は?


今週のアメリカは、木曜に行われた元FBI長官、ジェームス・コミーの下院公聴会での証言が 最大の話題になっていたけれど、それと同時にイギリスで行われた選挙で、テレサ・メイ首相率いる保守党が過半数割れをしたことで、 アメリカでは「あとどのくらいメイ政権が持続するか?」と、早くも同政権が短命であるという予測で溢れていたのだった。

その一方で 欧米では6月に入ったのを受けて、富裕層ほど庶民に先駆けてヴァケーション・モードになるシーズン。
7月、8月に入ってミドル・クラス以下の人々がヴァケーションに旅立つ前にリッチ・ピープルが羽を伸ばすのは 70年代からずっと続いてきた傾向。 でも今年はテロを懸念するあまり、例年に無くそのヴァケーションの行き先が限られており、ヨーロッパにおける No.1デスティネーションになっているのが スペインのイビサ。というのもリッチ・ピープルがヴァケーションに行きたがるような国で、未だテロが起こっていないのはイタリアとスペイン。 その中で昼はビーチ、夜はパーティー三昧というヴァケーションを楽しみたいミレニアル世代が押し寄せるのがイビサ(写真下)。 海やビーチの美しさもさることながら、世界中からルックスが良い人々が集まることで知られているのがイビサで、 ナイト・クラブは毎晩のように著名DJを招いたパーティーで盛り上がっているのだった。






ヨーロッパにおけるテロへの懸念のせいで、この夏、例年よりもさらに人気が高まっているのはニューヨーク郊外の ハンプトンも然り。なので今年はサマーハウスのレンタルに強気な価格を設定するオーナーが多いと言われるけれど、 ハウス・レンタルよりもここ数年争奪戦になってきたのが ソウル・サイクルが夏場にオープンするポップアップのスピニング・クラスのブッキング。
でもこの夏、それよりも予約が難しいと言われるのがニューヨークのミシュラン3つ星レストラン、 イレブン・マディソン・パークが夏の間ハンプトンにオープンするポップアップ・レストラン、その名も イレブン・マディソン・パーク・サマーハウス(写真上右側がポップアップのためにレンタルされたロケーション)。
これはマンハッタンの同レストランが夏の間リノベーションのためにクローズするため、9月1週目月曜日のレイバー・デイまでオープンするポップアップ。 オリジナルのイレブン・マディソン・パークは、1人約300ドルのテイスティング・メニューのみで、ドリンク、タックス、チップ込みで平均1人450ドルは 支払うことになるけれど、ポップアップはよりカジュアルなセッティングで、メニューもアラカルトのみで遥かに安価。 目玉となるメニューはフライドチキン・フィースト(75ドル)で、これは6〜12人で申し込まなければならないのだった。

でもイレブン・マディソン・パーク・サマーハウスは予約が難しいだけでなく、そのルールも若干トリッキー。 今からだと7月中旬〜8月初頭の予約受付開始を待たなければならなくて、それ以降の予約は期日まで受け付けないシステム。 定休日は水曜と日曜で、営業日はランチ&ディナーでオープン。
予約の際には アメリカン・エクスプレスのクレジット・カードを使うことが義務付けられていて、 予約を入れた途端に 25ドル×予約の人数分の返金不可のデポジットがチャージされることになっているのだった。 アメリカン・エクスプレスを持っていない人は、屋外のテーブルのウォークイン(予約を取らない先着順の着席)のエリアのみでの食事が可能で、 支払いはキャッシュで済ませなければならないのだった。 要するに同レストランではVISAやMastercardが使えないということであるけれど、 そんな厄介な条件にも関わらず、予約申し込みが殺到する人気ぶりを見せているのだった。




そしてイビサ、ハンプトンと同様にこの夏、リッチ・ピープルの間でサマー・デスティネーションになっているのが日本。 2016年に外国人旅行者の数が史上最高の2400万人に達した日本であるけれど、 この夏日本に出掛けようとしているのは、それまで日本に行った事が無かった欧米人。
その理由は テロの心配が少ないこと、 出回っている武器の量が少ないこと、イスラム教の移民が殆ど居ないこと、 そもそも犯罪が少ない治安の良い国であること等、「安全である」というのがまず最大の理由。
次に食べ物が美味しい、サービスが良い、街がきれいで人々が礼儀正しい という理由が列挙されているけれど、 私が知る限り、この夏初めて日本を訪れるリッチ・ピープルは 「今まで興味はあったけれど、行った事が無いから行ってみたい」という人が非常に多いのだった。

こうした人々の周囲には、通常 既に日本に何度か行った事がある人が居るもので、 日本に興味を持つのは、もっぱらそういった人達から聞いている話のおかげ。 既に日本に出掛けたことがある人たちと、この夏のリッチなファースト・タイマーの違いは、 前者がよりアドベンチャラスな旅行をする傾向があるのに対して、後者は純粋に休暇を楽しむための旅行をするという点。 なので、後者にとっては安全や街の清潔度、食べ物の味等が前者よりも大切なポイントになる傾向があるのだった。

そもそも昨今のリッチ・ピープルは1週間に4回もスシを食べるなど、 日本食を好んでいるケースが多いけれど、 やはり外国人の目から見ると、日本のこだわりの文化というのは卓越したものがあって、 お金があればあるほど それを評価するテイストを持つ傾向が強いようなのだった。
その一方で、「チップを受け取らないのに ここまでやってくれる」という日本のサービスは、 日本を訪れた外国人が必ずと言って良いほど自国に戻ってから人に語って聞かせるもの。 時にその丁寧さは滑稽であったり、それが続くと疲れてしまう場合もあるようだけれど、 私は逆にそこまでするから、人に語って聞かせる価値があるエピソードが生まれると思って見ているのだった。




私は つい最近マイアミに出掛けてきたけれど、現在のマイアミはテロや政情不安を受けて、 ヨーロッパからの裕福な移民がどんどん増えて、益々大金持ちが増えている状況。 そのマイアミで出会った人々も、6月からイビサ、その後に日本というサマー・ヴァケーションをプランしているケースが多くて、 私が日本人だと知ると 訊いて来るのがお薦めのスシ・レストランと懐石レストラン。
ひと昔前に日本に出掛ける外国人に尋ねられたのは優秀なスシ・レストランとコーべ・ビーフが美味しいステーキ店であったけれど、 今ではそれが懐石になっているのは時代を反映した現象。 ちなみに懐石料理は、「こんな小量を食べさせるのに、こんなにプレゼンテーションに手を掛けてくれる」という ラグジュアリーがウケているのだった。
マイアミでは 何処へ行っても日本人はおろか、アジア人を見かけることさえ全くなかったので、 私に日本の情報を訊いて来るのも不思議ではないと思ったけれど、 そのせいで 随分日本の某寿司店と某懐石料理店の宣伝をすることになってしまったのだった。

そんなマイアミのリッチ・ピープルと話した後、私が思い出したのは2年前に読んだ日本びいきのアメリカ人記者が書いた 「何故日本は中国に比べて外国からの旅行者が少ないのか?」という記事。 その記事によれば、欧米人旅行者が中国へは大挙して出掛けても、日本には行かない理由は 「日本に行って何をしたら良いのか分からないから」で、 パンダや万里の長城のような超目玉アトラクションが無いと、欧米人はカルチャーが異なるアジアの旅行を 計画しようという気持ちになれないと述べていたのだった。 そしてその記事は「だからこそ東京オリンピックというアトラクションが、日本における外国人旅行者増加のカンフル剤になるのでは?」と 締めくくっていて、その当時は「そんなものか…」と思って読んでいたのだった。

でも今回マイアミで 日本にこれから出掛けようという人々と話をしてからは「それは違うのでは?」という 気持ちを強くしたのだった。 というのも今 日本に出掛けようという人々は、長年日本食を食べて、任天堂やプレーステーションのゲームをプレーして、 映画に登場する日本という国を見るなど、その存在やカルチャーには馴染みが深いものの、 これまで頭の中でイメージを描いて、想像してきただけの日本という国が 「一体どんなものだか 実際に行って見てみたい」という好奇心が最大のアトラクションになっている訳で、 私はそんな好奇心の方が 数か所の観光アトラクションよりもパワフルな旅行のモチベーションになると思えるのだった。

もちろん2020年に東京オリンピックが開催されれば、世界中から多数の旅行者が訪れると見込まれるけれど、 オリンピックがあるから日本に行こうと思う人は、オリンピックが無ければ日本に行こうと思わない旅行者。 本当に旅行が好きなインターナショナル・トラベラーだったら、オリンピックが開催されている時期をあえて避けて旅行をする訳で、 日本、特に東京がニューヨークのようなドル箱観光都市となるためには ここ数年がとても大切な時期だと思うのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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