May 14 〜 May 20 2018

”Yale's Class Teaches Happiness”
幸せは大学のクラスで教えられるか?


今週のアメリカのニュースは、芸能メディアを中心にロイヤル・ウェディング・フィーバーとなっていたけれど、 その一方でアメリカが突入したのが卒業式シーズン。 アメリカでは四年制大学を出ることは ハイステータスの仕事を得るために 近年必要不可欠と見なされること。 それだけに高額の学費をローンを組んで四年制大学に進学する若者が多かったのがこれまで。 でも今アメリカで問われているのが、果たして四年制大学に進学することにどれだけの意味や価値があるか?という疑問。
というのも四年制の大学に進学した40%が6年が経過しても卒業出来ないのが実情で、四年制大学卒業者の30%が 大学の卒業資格が必要無い仕事に就いているのに加え、 二年制のカレッジを出た人々の28%が四年制大卒者よりも高額な給与を コンピューター・プログラマーやメカニックとして受け取っているため。 今や私立四年制大学の授業料は、学校のレベルに関わらず平均で2500万円であるだけに、 果たしてこれだけの借金を背負って社会に出るだけのメリットがあるかが改めて問われているのだった。




大学のカリキュラムやクラスが一般メディアやソーシャル・メディアで報じられることは極めて珍しいけれど、 その例外と言えるのがイエール大学心理学の教授、ローリー・サントス(写真上)がクリエイトした「サイコロジー・オブ・ハピネス」。
過去15年に渡って同キャンパスで教鞭を取ってきたサントス教授のこのクラスは、 あっという間にイエール大学の300年の歴史上 最も人気のクラスになってしまい、 イエール大学の約4人に1人に当たる 1200人もの学生が受講を希望。 全学生を収容できるクラス・ルームが無いために、テレキャストをする事態になったほど。
今年3月からは、オンライン・エデュケーションのウェブサイト、”Coursera / コーセラ” でも 無料で受講できるようになっていて、実は私も5月末からスタートするコースの申し込みを済ませたばかりなのだった。

サントス教授がこのクラスを開発するに至った理由は、 大学生に限らず、アメリカの若い世代が落ち込みやストレスで精神的病いを患うケースが増えていること、 特に大学卒業直後の若者は アメリカで最も幸福度が低いと言われる層で、 そんな学生たちをサポートしたいと考えたため。
以下がそのカリキュラムの5つプロセスであるけれど、中でも重要なのは 何が本当の幸せかを理解すること。仕事のステータスや必要以上の金銭的な豊かさよりも 時間の自由や健康の方が人間を遥かに幸せに導くことは、頭では理解しているつもりでも、 実際にその価値を実感して、本当の幸福を味わっている人は少ないと言われるのだった。







このクラスで人間を幸福にする具体的なアクティビティとして、 アプリまで駆使しながら実践が奨励されているのが以下の6つ。

  1. 時間とエネルギーを正しいことに使う
    具体的にはツイッター、インスタグラムのように、落ち込みやジェラシーの原因となるソーシャル・メディアから遠ざかって、 家族や友人とフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションをする時間を持つ方が、遥かに不満や不安の無い、 ハッピーな生活が出来るのは容易に想像がつくところ。
    また余暇で自分の趣味を極めたり、新しい事を学ぶなど、目標や課題がある方が 人間は幸福度が高いとのことで、 それに伴って生活全般のパフォーマンスが向上するという。

  2. 感謝の気持ちを表すプラクティスをする
    毎日10分間、自分が恵まれていること、自分に与えられた環境や才能、人からの親切等に感謝する時間を設ける。 ”自分の財産”、”家族”、”友達”など一般的な名詞で羅列するのではなく、実際に起こった特定の出来事などを頭に描いて、 具体的な感謝することがポイント。 感謝の気持ちが高まれば高まるほど、人生の満足度がアップし、 自分をポジティブに捉える姿勢が身に付くというのがこの目的。

  3. 人のために良いことをしてあげる / 人に声を掛けて会話をする
    人に親切にして、その感謝が自分に返って来るのはユニヴァーサルに指摘される幸福のセオリー。 また人に話し掛けて 楽しい気分やユーモアをシェアするのも日々のハピネスにとってとても有効な手段。 エレベーターに乗り合わせた人など、見ず知らずの人との短いコミュニケーションが驚くほど気持ちをリフレッシュさせてくれたり、 1日を楽しくしてくれることは 実際にトライすると必ず実感できるもの。

  4. メディテーションや祈りなど、心や精神のための時間を持つ
    サントス教授が薦めるのは 自分が大切に思う家族や友達の幸せを願うという日課。 1日に5分でも10分でも マントラのように誰かの幸福を祈る時間を持つことで、 自分の精神が落ち着くだけでなく 豊になって行くとのこと。

  5. エクササイズをして睡眠を十分に取る
    エクササイズは 健康のために必要なだけでなく、ストレスを発散し、脳を活性化するためにも大切なこと。 睡眠は疲れを癒し、ストレスをリリースし、身体と脳を充電するために不可欠。
    逆に睡眠不足は長期的な疲労感と共に 過食、ストレス、精神不安定、被害妄想など様々な弊害をもたらすだけでなく、 睡眠障害を招く要因。

  6. 上記全てを 毎日実践するためのトレーニング
    十分なエクササイズと睡眠、メディテーション、ソーシャル・メディアを避けるといったことは、 簡単のように思えて意外に実現できないだけでなく、心掛けても先送りしてしまうもの。 そうするうちに、どんどん人生から消え失せて行くのが幸福感。 上記の項目全てを毎日実践するためには 心掛けるだけでは不十分で、 自分がそうせざるを得ないような状況やノルマをクリエイトする必要があるという。 このためサントス教授はその実践アプリをクリエイトし、その使用を奨励しているのだった。


正直なところ、上記は自己啓発本等に頻繁に登場するリストではあるけれど、 実際にそれを生活に取り入れるところまで導くところが同クラスと自己啓発本の違い。 受講者は 「事前に予想していたよりも ずっとチャレンジング」とこのクラスの感想を語っているのだった。




このイエール大学のカリキュラムから判断して、ニューヨーカーがどの程度ハッピーかを シエナ・カレッジ・インスティテュートによるアンケート調査の結果と比較しながらチェックしてみると、 さすがにニューヨーカーは ヘルス・コンシャスで肥満率が低いとあって、「毎日エクササイズをする」という人が何と52%。 「毎日ではないけれど頻繁 にする」という人が14%。「時々する」という人が15%で、 「エクササイズを全くしない」という人は僅か15%。
またメディテーションがブームになって久しいこともあり、30%が「毎日メディテーション、もしくは祈りを捧げる」と回答。 それとほぼ同じ28%のニューヨーカーが、「1日1度は誰かに親切にするなど、良い行いをしている」と回答。 加えて「家族や友人と一緒に食事をする時間を持つ」というニューヨーカーは35%。「1日に1度は大声で笑うようにしている」という人は45%で、 かなり精神的にはヘルシーな印象。
さすがにニューヨークはビジネスの街とあって、「1日に1度はお金のことを考える」という人が39%。 また朝起きると直ぐ、もしくは1時間以内にEメールやメッセージをチェックするという人々が60%。 果たしてソーシャル・メディアと どの程度関わっているかは定かではないものの、デジタル・ディバイスと関わる時間が長いのは容易に想像がつくところ。

でもニューヨーカー にとって最大の問題点は、睡眠時間が短いことで、8時間睡眠を取っている人は16%。8時間以上眠る人は4%。 最も多いのが6時間で31%、次いで7時間の28%、5時間以下という人々も19%居て、 これは「眠らない街、ニューヨーク」を象徴する数字となっているのだった。
ではニューヨーカーのコーヒー消費量が多いかと言えば 意外にそうでも無くて、77%の人々が1日2杯以下しかコーヒーを飲んでいないとのこと。 もちろんコーヒーだけがカフェインの摂取源とは限らないけれど、世の中一般が思い描くような 「コーヒーを何杯も飲んで寝不足と戦いながら仕事をする ストレスフルなニューヨーカー」というのは 実際とは異なる姿。
実はニューヨーカーは肥満度、経済レベル、向上心などを総合的に評価すると、アメリカでは逆にかなり幸福度が高いと見なされる人々。 また、自分でどの程度幸福を意識しているかは別として、精神的にはかなりタフと言われるのがニューヨーカー。
その証拠にニューヨークは、 全米で最も自殺件数が少ない街の1つになっているのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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