May 8 〜 May 14 2017

” Functional Alcoholics Like Brad Pitt”
”ブラッド・ピットに代表される
ファンクショナル・アルコール中毒が増加する背景”



今週のアメリカで最も大きく報じられたのが、FBI長官で2016年の大統領選挙の行方を左右したとも言われ ジェームス・コーミーが突如解雇されたニュース。
ニュースが報じられた火曜日以来、ホワイト・ハウスやトランプ氏が説明する解雇の理由は数時間置きに変わり続けてきたけれど、 結局のところはFBIが取り組んでいた大統領選挙時のトランプ陣営とロシアとの癒着に関する捜査に横やりを入れること、 プライベートなミーティングの席でトランプ氏に忠誠を求められ、それに応じなかったジェームス・コーミーを ロシア疑惑の捜査のトップから外すことが目的であったという見方が有力で、それはトランプ氏もNBCによるインタビューで自ら認めるコメントをする有り様。
その一方で、今週にはトランプ氏の娘婿、ジャレッド・クシュナーの妹が、中国のビジネス・パートナーに対して 投資と引き換えに、優先的な米国ビザの発行を約束していた事実が発覚。 益々アメリカ政府がトランプ・ファミリーによって私物化されているイメージを与えていたのだった。

その一方で、今週日曜の母の日にヤンキー・スタジアムで行われたのが「デレク・ジーター・デイ」。 これはデレク・ジーターの背番号2を永久欠番にするセレモニーで、ジーターはヤンキーズの1桁背番号を付けた最後のプレーヤー。
過去に永久欠番になった1桁背番号の顔ぶれは、ビリー・マーティン(1)、ベーブ・ルース(3)、ルー・ゲーリック(4)、ジョー・ディマジオ(5)、 ジョー・トリ(6)、ミッキー・マントル(7)、ヨギ・ベラ(8)、ロジャー・マリス(9)という、アメリカの球界史上を代表する物凄いラインナップ。
そのヤンキーズは今シーズン、久々に首位争いに絡む健闘を見せているものの、過去数年の観客動員数は下り坂で、 昨年にはその数が全球団中第6位の成績に転落。今シーズンもそのトレンドは顕著で、5月1日の対トロント・ブルージェイズ戦では、 2万5,566人の観客数で新ヤンキー・スタジアムでの最低を記録。 その原因はジーターのような人気とカリスマ性があるプレーヤーの不在、ピッチング・ラインナップの弱さに加えて、 チケット代が高額なため。ロサンジェルス・ドジャースのホーム・スタジアムの57ドル(約6,460円)の席と同等のチケット代が、 ヤンキー・スタジアムでは92ドル(約1万400円)になることが伝えられているのだった。
でもヤンキーズ側は、今のところチームの成績が良いだけに、新しい選手達が知名度を上げることを期待して、 チケット代の見直しは全く考えていない様子。とは言ってもチームが好成績を収めていたところで、選手が人気や知名度を上げたところで、 ヤンキー・ファンの給与や収入が増える訳では無いことは球団側が悟るべき事実だと思うのだった。




さて5月初頭に発売されたGQ誌とのインタビューで、自らのアルコール・プロブレムとマリファナの使用について認めたのが ブラッド・ピット。2016年に彼とアンジェリーナ・ジョリーが離婚する要因になったと言われるのが ブラッド・ピットのアルコールとドラッグの使用であったけれど、 このインタビューがきっかけで一躍脚光を浴びることになったのが、”ファンクショナル・アルコホリック”。 すなわち表面的には普通に日常生活を送っているアルコール中毒。

アルコール中毒というと、どうしても低学歴で低所得者住宅に住むジョブレスなど社会的ステータスが低い人々を想像しがちであるけれど、 実際には、現在アメリカの都市部で増えているのが弁護士やヘッジファンダー等、 人も羨むようなサクセスを収めているビジネスマンやビジネスウーマン、メガ・リッチの夫人から、 ドクター&ナースといった医療関係者までのアルコール中毒。 すなわち、「まさかあの人が!」というような人々のアル中が増えている訳であるけれど、 医療関係者やセラピストによれば、アルコール中毒とそうでない人がはっきり分かれていたのは昔の話。 今ではその境界線が非常に曖昧になってきているとのことで、それを反映してアメリカでは アルコール中毒という言葉よりも”リスキー・ドリンカー”という言葉が頻繁に使われるようになっているのだった。
リスキー・ドリンカーの殆どはソーシャル・ドリンカーで、ある程度アルコールに強く、最初は周囲と一緒に楽しんで飲んでいるうちに リミットを超えたり、自己制御が効かなくなるのが通常。 その結果、酷い二日酔いになったり、飲んでいる最中から記憶が無くなったり、 些細なことで怒りだして友人と喧嘩をしたり、取り乱して泣き出す等、ハイパーな振舞いをするけれど、 その後罪悪感から周囲に謝ったり、自己嫌悪に陥る人々を指す言葉。
したがって周囲もそんな様子を見慣れており、”お酒好き”、”酔い癖が悪い”程度に捉えて アルコール依存症、アルコール中毒のレベルまで悪化しない限りは、放置してしまう傾向にあるのだった。




これに対して”ファンクショナル・アルコホリック”と呼ばれる人々は、”リスキー・ドリンカー”とは若干異なる人々を指す言葉。 マンハッタンのサイコセラピストによれば、”ファンクショナル・アルコホリック”とカテゴライズされる人々の 特徴は以下の4つのポイント。

  1. 日常のストレスから逃れる目的でアルコールを飲む
  2. 1人でお酒を飲む
  3. 自分の酒量を制限しようとする
  4. 他の娯楽や自分が行うべきタスクよりもアルコールを飲む方を選ぶ


”ファンクショナル・アルコホリック”は、その名の通り、アルコールさえ絡まなければ機能的かつ理性的な生活を送っているため、 周囲が気づかないだけでなく、時に本人でさえ自分がアルコールの問題を抱えていることに気付かないケースが多いとのこと。
そのため「アルコールを飲んで少しリラックスした方が自分の機能が向上する」などと考えている場合も多く、 実際にはそれがアルコール中毒になりかけの軽度のウィズドロー(禁断症状)であることに気付かず、 自分に対してアルコールの摂取を奨励してしまうのだった。

でも”ファンクショナル・アルコホリック”にとっての救いは、 経済的に恵まれているケースが多いので、クリニックに通ってメディカル・ケアを受け、セラピストによる精神的なサポートを受ける等の 治療に支払うお金があるということ。
実際にブラッド・ピットがアンジェリーナ・ジョリーによる離婚申請の直後に受けたのもこれらの治療で、 加えてエクササイズによって身体に残ったアルコールやマリファナの影響を排除し、 ウェイトを落とすと同時に、ライフスタイルをクリーンアップしたことが伝えられており、 彼はGQ誌のインタビューで「過去6カ月間アルコールを断つことに成功している」とコメントしているのだった。




”ファンクショナル・アルコホリック”は、リハビリ入りすることなく日常生活を続けながら治療をするのが通常で、 時に3〜5日のデトックス・キャンプ入りする場合もあるとのこと。
またブラッド・ピットの場合、アルコールとマリファナの問題を克服しない限りは、第三者の立ち合い無しでは子供達との面会が許されず、 青少年虐待の疑いを掛けられて親権をも失いかねない状況であったけれど、そうしたモチベーションがあるケースの方が 遥かに状況を克服し易いとのこと。 更に昨今のブラッド・ピットはアート・スタジオにこもってスカルプチャーの製作に長時間を費やしているとのことで、 自分が好きで打ち込める趣味の存在もアルコール中毒からの脱却に役立つことが指摘されているのだった。

とは言っても、アルコール中毒者の60%以上が1年以内に再び飲酒を始めるとのことで、 「乾杯だけ…」というようなオケージョンがきっかけになったり、精神的なショックや落ち込みが原因で禁酒の決意が崩れると 直ぐに中毒状態に戻ってしまうのが実情。
事実ブラッド・ピットとて、離婚前の状態に悪化する以前に 一度はアルコールを絶ったことがあり、 彼が一時ヴェジタリアンになったのもそれがきっかけと言われているのだった。

”ファンクショナル・アルコホリック”の原因はもっぱらストレスやプレッシャーで、現実逃避のための 飲酒が招く症状であるけれど、現在のアメリカでこれが富裕層の間で増えているのは、 貧困層ではアルコール中毒になるほどのドリンク代を支払う経済力が無いのもまた事実。
そんな貧困層は安価で、簡単にハイになれるヘロインに手を出す傾向が顕著なのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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