Apr. 16 〜 Apr. 22 2018

”Sex Cult & Sex Trafficking”
ハリウッドを巻き込んだセックス・カルト、
キャリアも上昇志向もある女性が犠牲となった背景は?



今週は、バーバラ・ブッシュ元大統領夫人死去のニュースにもメディアの報道時間が割かれていたけれど、 最も大きな報道になっていたのは、セックス・カルト、NXIUM/ネクシウムの実態に関するニュース。
月曜には、 リーダー、キース・ラニエール(57歳)が メキシコの高級リゾート地で逮捕され、 そのカルトのために、セックス・スレーブ(奴隷)となる女性メンバーのリクルートを行っていたハリウッドのB級女優、 アリソン・マックが金曜に逮捕されたことから、メディアは一斉に このセックス・カルトについて報じ始めたのだった。

とは言っても、ネクシウムに対しては これまでにも何度も同団体をカルトとして問題視する報道がなされ、 元メンバーによる裁判も起こされていたので、何故今までFBIが野放しにしてきたのかが不思議がられるような有様。 でも、昨今のアメリカでは ようやくにセックス・トラフィッキングの取り締まりに 連邦政府が本腰を入れ始めたところで、 3月には上院がセックス・スレーブの取引に使われるウェブサイトの徹底取り締まりの法案をほぼ満場一致で可決したばかり。
これにより出会い系サイトの走りとして登場し、グッズの取引やルームメイト探しにも頻繁に使われる クレイグ・リストは 同社の他部門のビジネスを守るために、出会い部門の撤廃を発表したほど。
また今週にはニューヨーク・ポスト紙がニューヨークにおけるセックス・トラフィッキングの実態を3日連続の特集レポート記事に纏めていたけれど、 それによれば セックス・スレーブとなるのは、もっぱら親元を飛び出してニューヨークにやってきた少女や、 親からの虐待が原因で 施設や里子システムで育った貧困層の少女たち。 彼女らが 英語でピンプと呼ばれる元締めに強制的に売春を強いられたり、時にスレーブとして人身売買の対象になる様子が明らかにされていたのだった。




今週大きく報じられた ネクシウムのセックス・カルトのシステムはもっと複雑なもので、 そもそもネクシウム自体は、「心理的、感情的なバリアを取り除き、人生の充実とサクセスをもたらす」 というスローガンを謳った セルフ・ヘルプのワークショップ。その”エグゼクティブ・サクセス・プログラム”は、 1990年代後半にスタートして以来、1万6000人以上が受講。 ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン等のセレブリティ・スピーカーがやって来ることも多く、 このプログラムの信者となって、ネクシウムの本部があるニューヨークのアップステート、アルバニーに 引っ越すメンバーも多かったほど。 メンバーは男女双方で、いずれも カリスマティックな同団体のリーダー、キース・リニエリー(写真上左)を神のように信仰しているのだった。

自ら” ヴァンガード” と名乗るキース・レニエリーは ”アクティビスト、サイエンティスト、フィロソファー、 ヒューマニタリアン” という肩書を持ち、1歳で完璧な文章を話し、12歳で高校の数学をマスターし、独学でコンサート・ピアニスト並みの演奏をするようになり、 16歳でポリテクニック大学に入学したという神童ぶりを自身のウェブサイトで紹介しているのだった。 しかし実際にはプログラムについて行くのがやっとで、成績も芳しくなかった というのが彼のバックグラウンドを徹底的に調べ上げたメディアのレポート。
キース・レニエリーは 1990年代半ばには、コンシューマーズ・バイラインというマルチ商法のビジネスに関わり、 あっという間に多数のメンバーを抱えるビジネスに成長させたものの、ねずみ講詐欺として 営業停止処分を受けたことから、ビジネスをクローズ。 その後、彼は心理学者の友人から学んだウンチクを使って、自らをニューエイジ・グルとして演出。 髪の毛を伸ばし、ネクシウムの前身となるセルフ・インプルーブメントのセミナーをスタートしたところ、 これが当って、どんどんその参加者を増やしていったのだった。

彼は多くのカルト宗教のリーダー同様に話術に優れ、修行と称してマインドコントロールを行い、 そのプロセスでは女性信者と不適切な性関係を結ぶことも決して珍しくはなかったとのこと。 また女性信者に プラスティックの牛の乳房を付けさせて、牛のように這い歩かせて、 その姿を罵倒するなど、「自分のバリアを破るため」と称したトレーニングは、マインド・コントロールを目的にした虐待行為も 珍しくなかったのは 多くの元メンバーが証言するところ。
元メンバーがネクシウムから脱会して、裁判を起こそうものならば、 脅迫や嫌がらせを受けることになり、、 信者の1人はキース・レニエリーに裏切者のレッテルを張られて、数ヶ月間監禁されたことが明らかになっているのだった。




今週大報道になっていたセックス・カルトは、そのただでさえ怪しげなネクシウムの中に存在する 女性メンバーのみのシークレット・ソサエティ。 これはネクシウムの実態を暴くメディアのネガティブ報道を避けるために、極秘でクリエイトされたもので、キース・レニエリーは裏から糸を引くだけで、 その存在を知らないかのように振る舞っていたのだった。
メンバーの勧誘を行っていたのは、 ネクシウムの幹部の女性達で、そのうちの1人と言われていたのが 今週逮捕された女優のアリソン・マック(写真上左)。
「女性のサクセスのためのシークレット・ソサエティで、その存在を決して公表してはならない」 という厳しい掟を提示し、勧誘されたメンバーは それぞれに”担保”と称して、 自分のヌード写真や、家族の法に触れる不正行為について証言したビデオ等を提出することが まず第一の関門。 自分が万一、シークレット・ソサエティの存在を明かした場合に、世の中に公開されるという条件で差し出すのがその担保で、 表向きには その守秘義務の証になっているのが担保。 しかし 実際には脅しの道具に使われてきたのが担保で、そうなるリスクは考えるまでもなく分かりそうであるけれど、 女性達は あえてそれらを提出してまでメンバーになろうとしていたのだった。

そして次に待ち受けているのがブランディング。写真上右のように、 下半身に焼き印を押すというイニシエーションで、この儀式を行うのは メンバーをリクルートした女性幹部。 マッサージ・ベッドに取り押さえられた女性の肌に焼き印を押す作業は、皮膚が焼ける匂いが部屋中に立ち込めるために、 その場の人間が手術用のマスクをして臨むという残酷なもの。 焼き印を押される側の女性達は、泣き叫ぶというけれど、もちろん勧誘の段階ではそのようなことは全く明かされず、 15分程度のイニシエーションと説明される程度なのだった。
そして一度、メンバーになると 次に強要されるのがリーダーであるキース・レニエリーとのセックスで、 彼は常に女性幹部が送り付けてくる 15〜20人の女性メンバーと関係し続けていたという。 しかしながら、このセックス・カルトの存在も徐々に明らかになって行き、 その決定打となったのは2017年10月にニューヨーク・タイムズ紙が掲載した ネクシウムとセックスカルトの全容の記事。
この掲載の直後から、キース・レニエリーはメキシコに姿を消しており、 ようやく今週になって身柄がFBIに引き渡されているのだった。




そんなカルト団体、ネクシウムを金銭面で支えてきたのは、シーグラム社の後継者で、今は亡きエドガー・ブロフマンの2人の娘である サラー&クレア・ブロフマン(写真上左)。
2人がネクシウムと関わりを持ったのは、父親のエドガー・ブロフマンが、ネクシウムのエグゼクティブ ・サクセス・プログラムに 参加したのがきっかけ。しかし、その彼は後に娘達が勝手に自分の資産2億円を ネクシウムに貸したことで訴えを起こしており、後に娘たちがネクシウムとキース・レニエリーに洗脳されて、 自分とは口も利かなくなったことをメディアに明らかして、ネクシウムを”カルト”と呼んでいたのだった。
2013年のエドガー・ブロフマンの死後、ブロフマン基金とその銀行口座からは、 ネクシウムのために約160億円が引き出されており、 その分かっている内訳は、約66億円がレニエリーの先物市場の投資の失敗を賄った費用、 約30億円がロサンジェルスとニューヨークの不動産購入費で、約11億円がプライベート・ジェットの購入費、 残りはネクシウムに対して起こされる裁判の費用で、 これまでネクシウムを訴えた元メンバーの訴訟を 極めて難しいものにしてきたのが、ブロフマン姉妹の有り余る資産で雇った弁護士たち。 それだけでなくブロフマン姉妹は、2009年にはネクシウムの当時のスキャンダルを知って公演をキャンセルした ダライ・ラマをインドまで出向いて説得。その説得費用も進んで自己負担するほど ネクシウムにどっぷり洗脳され続けてきたのが同姉妹。
その信仰ぶりは、2009年にヴァニティ・フェア誌が「The Heireses and the Cult」という記事(写真上右)で特集したほどで、 10年以上が経過した今も その状況は全く変わっていないことが伝えられているのだった。

今週には、アリソン・マックが逮捕されたことを受けて、彼女の勧誘を受けたハリウッド女優らが どのようなアプローチを受けたかなどをメディアに語る様子も見られていたけれど、 ネクシウムによって明らかになったのが、セックスカルトやセックス・トラフィッキングが 親に虐待された貧困家庭の出身者だけでなく、 立派にキャリアを持ち、エグゼクティブ ・サクセス・プログラムに参加するような向上心がある女性もが 陥る悲劇であるという点。
でも社会的なステータスに関わらず、「誰か/何かに頼りたい」という人間的な弱さに付け込まれているという点では、 どちらも同じ状況と言えるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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