Apr. 2 〜 Apr.8 2018

”Desperation of YouTuber Wannabes”
YouTube本社銃撃事件がきっかけで脚光を浴びた
YouTuber達の馬鹿げたまでのスター願望



今週もアメリカでは ケンブリッジ・アナレティカのスキャンダルに端を発した フェイスブック関連の報道が多かったけれど、来週に控えた同社CEO、マーク・ザッカーバーグの下院公聴会の証言の前に 明らかになったのが、流失した個人情報の被害件数が当初報道された5000万人よりも遥かに多い8700万人であったという事実。
加えて今週明らかになったのが、フェイスブックがアメリカ国内の主要な病院とデータ・シェアリングを交渉中で、その医療データをフェイスブックのプロフィールと マッチさせることにより、ソーシャル・エコノミーと健康問題の分析を試みるトップシークレット・プロジェクトの存在。 フェイスブックによれば、「このプロジェクトは未だ計画段階で、ユーザーのプライバシー・データを守るシステムを構築するまで、 一時停止となった」とのことだったけれど、実際には風邪を引いたり、花粉症になったり、手術をしたり、入院するような事態になる度に、 その様子を フェイスブックにポストしているユーザーに対しては、それに応じた広告展開が行われているので、フェイスブックは 病院と提携するまでも無く、既にかなりの医療データを持ち合わせているのが実情。
この先、もしフェイスブックがその医療プロジェクトを再開した場合、自分の医療データを勝手にシェアされたくなかったら 気を付けなければならないのはフェイスブックのプライバシー規約だけでなく、 病院側のプライバシー規約も然り。 これからの時代はプライバシー規約に留意しなければ、 何が起こっても文句は言えないことを痛感させる出来事が、実際に今週のアメリカで起こっているのだった。





それが、イースターの週にフロリダの保育所で撮影された写真上のビデオで これはイースター・バニーの着ぐるみを着たスタッフの姿を見て、2歳の少女が パニックになって怯える姿を 保育所の20歳のスタッフが撮影して、ソーシャル・メディアにポストしたもの。
恐怖のあまり叫び続ける少女の様子をコミカルに捉えた人々が多かったことから、 ビデオはあっという間にヴァイラルになり、メジャー・ネットワークの夜のトークショーでも 同ビデオが放映されて ジョークのネタになっていたけれど、 当然の事ながら これに抗議したのが 自分の子供を笑い者にされた母親。 でもその段階で母親が初めて悟ったのが、自分が知らない間に 「保育所側が子供のイメージを使用する際には、親の許可を必要としない」というプライバシー規約を含んだ 書類にサインしていたということ。そのため母親には、自分の娘のイメージが勝手に使用されても抗議をする権利もなければ、 ビデオがヴァイラルになって以来、ショックを受けて落ち込む娘の損害賠償を保育所に請求することも出来ないのだった。
でもこの状況は、決して母親が不注意なのではなく、細かい文字で書かれた規約などは一切読まずにサインするのは誰もがやっていること。 ソフトウェアのアップデートや、フェイスブック等のソーシャル・メディア上のアプリのダウンロードの際にも、 規約など読む人はまず居ないのだった。しかしながらケンブリッジ・アナレティカのスキャンダルを受けて、 メディアがアイフォン・アプリの規約を実際にチェックしたところ、その内容は30ページにも及ぶものが多く、自分の個人情報へのアクセスだけでなく、 その様々な用途に対して許可を与えているという。
中でも最も個人情報を取り込んでいたのがスターバックスのアプリで、友達にスターバックスのギフト・カードを贈ると、 同社がその友達からも個人情報が取得できるという、ケンブリッジ・アナレティカのアプリと似たシステムになっていることが明らかになっているのだった。




さらに今週は、火曜日にカリフォルニアのYouTube本社で起こった銃撃事件にもメディアの報道時間が大きく割かれていたけれど、 犯人は、アメリカ史上10人目の女性銃撃犯となったナシム・アグダム(写真上)。
イラン人のナシム・アグダムは、動物愛好家のヴィ―ガン・トレーナーであり、アーティストという不思議なプロフィールの持ち主で、 事件当日、シューティング・レンジで射撃の練習をしてから 向かったのが、サンブルーノにあるYouTube本社オフィス。 そのコートヤードで3人に発砲してから、自らに銃口を向けて自殺を図った事件は、 当初、元ボーイフレンドに対するドメスティック・バイオレンスと報じられていたのだった。
ところが、実際にはナシム・アグダムが殺したいほど憎んでいたのは YouTubeと、そのビデオのモニタリング・システム。 YouTuberとしてフィットネス、ヴィ―ガン・ダイエットのレクチャー、ミュージック・ビデオを発信していた彼女は、 彼女のビデオが不当にセンサーシップの対象となり、 結果的に広告収入が激減したとして YouTubeに対して、タダならぬ怒りを覚えていたとのことで、 家族にも常日頃から「YouTubeによって人生を台無しにされた」と語っていたとのこと。
そのナシム・アグダムは、母国イランを中心に3万人のサブスクライバーを擁し、 そのビデオは合計で900万回視聴されており、この数字はソーシャル・メディアの世界では そこそこのサクセスぶり。 一部のメディアでは今回の事件の原因が、YouTubeという自己陶酔的な世界におけるサクセスのせいで、ナシム・アグダムが まともな判断力を失っていたためと指摘する声も聞かれていたのだった。

その一方でYouTubeのポリシーに対しては、ナシム・アグダム同様に フラストレーションを感じるYouTuberは決して少なくないのが実情で、 特にそれが高まってきたのは、今年1月にYouTubeが収益化の基準を 1000人以上のサブスクライバーと 1カ月に4000時間以上のヴューイング・タイムへと ハードルを高くしてからのこと。 それまで通りの収入が得られなくなったYouTuber達が、同社への不満をつのらせていることがレポートされているのだった。




それと同時に今週報じられていたのが、YouTuber達が、サブスクライバーを増やして収入を上げるために、 如何に常軌を逸したビデオをクリエイトしているかという実態。
今年1月には、 YouTubeスター、ローガン・ポールが青木ヶ原の樹海で首吊り死体に話しかけるビデオを公開して 大顰蹙を買ったばかりであるけれど、写真上左のモナリザ・ぺレス(20歳)は、彼女のYouTubeパートナーであるペドロ・ルイズ(写真上左から2番目、22歳)を射殺して 現在服役中の身。何故そんなことになったかと言えば、 ペドロが 百科事典で銃弾を受け止めるスタントのアイデアを思いついて それを実践したため。そのスタントが見事に失敗した様子は2台のビデオカメラで捉えられていたというけれど、この2人のサブスクライバーの数は僅か218人。 それを一挙に増やそうとしたために、双方の人生を台無しにしているのだった。

そうかと思えば、写真上右から2番目のマイク・マーティンは、息子をからかったり、虐めたりするビデオでサブスクライバーを増やし、 年収3700万円を得ていたYouTuber。息子はそのせいで頻繁に泣いたり、怪我をする様子がビデオに収められていたという。 結局、そのビデオのシリーズが原因で マイク・マーティンは離婚した妻に息子の親権を奪われ、 収入源と息子の双方を同時に失う羽目になっているのだった。
また写真上右のテキサスのカップルは、YouTubeを通じて子育ての様子をレポートしていたけれど、 2015年に2人が演じたのが 3人目の子供の妊娠と流産の狂言。 これがバレたのは、狂言ビデオのお陰で サブスクライバーと収益が増えたことを 2人がオープンに祝っていたためと伝えられているのだった。
その他にも、娘2人と共に玩具のデモンストレーションをして、毎月1億円以上の収入を得ていたシングル・ファーザーが、 やはり批判の対象となり、親権を失うのを恐れてビデオを全て削除した例などがあるけれど、 傍目で見ているほど簡単ではないのが、YouTuberとしてのサクセス。

私のアメリカ人の友達の息子の元クラスメートが ヒスパニック系を中心に3000万人のサブスクライバーを擁する YouTuberになっているけれど、彼女は高校時代から ローガン・ポール同様に今は無きソーシャル・メディア、”ヴァイン”で ビデオを発信して、その時点で500万人のサブスクライバーとプロダクション・チームを持っていたようなビジネス・サヴィぶり。 現在21歳にして、既にマルチミリオネアになっているけれど、サポーターも居れば、辛辣なレビューを書くヘイタ―も非常に多いのがこの世界。
彼女の場合、頻繁に他のYouTuberとコラボレーションをするなど、アイデアは豊富で、 サブスクライバーを増やし続けるのが決して簡単なことではない様子を窺わせているのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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