Apr. 3 〜 Apr. 10 2017

"You're No Longer Needed"
ロボット&AI導入で真っ先に無くなる仕事と、
ロボット&AI導入以前に無くなる仕事



今週最大のニュースになったのが、シリアのアサド政権が自国民に向かって化学兵器を使用した報復として、 アメリカ軍がシリアの軍事施設に巡航ミサイルで攻撃を行った報道。
アサド政権がシリア国民をサリンで攻撃する2日前には、アメリカの国連大使、ニッキー・ヘイリーが アサド政権の独裁を認めるというトランプ政権のポジションを明らかにしたばかりであっただけに、 この手のひらを返したようなトランプ政権のシリア政策の変化には アメリカ国内にも驚きのリアクションが見られていたのが実情。
当然のことながら この攻撃に腹を立てたのがアサド政権を支持するロシアで、アメリカの攻撃を国際法に違反する侵略行為と非難。 またアメリカ国内でも、トランプ氏が議会の承認を得ずに他国に対して武力を行使したことに批判が集まっているけれど、 これは立派に合衆国憲法に違反する行為。 合衆国憲法では、大統領の一存で武力行使が出来るのはアメリカが攻撃を受けた場合のみで、 今回のような軍事介入は下院の承認無しでは行えないもの。
このため、アメリカ国内ではトランプ氏が合衆国憲法を無視して 勝手に武力行使う様子に批難、反発の声が 聞かれた一方で、 アサド政権がこれを機に益々自国民に対する攻撃を悪化させることを危惧する声も聞かれていたのだった。 また今回のアメリカ軍の攻撃が北朝鮮の武力行使を挑発する結果になることを案じる指摘もあり、 ニューヨークではこの攻撃に反対する人々がトランプ・インターナショナル・ホテル前で抗議活動を行っていたのだった。




ところで、トランプ政権と言えば環境規制を取り払って、数年後に絶滅の危機に瀕している アメリカの炭鉱業を蘇らせることを公約の1つにして大統領選挙を戦っていたけれど、 今アメリカでそれよりも遥かに深刻な失業問題をもたらすことが見込まれているのが小売業。
今週にはラルフ・ローレンが全米の50店舗を閉店し1000人のスタッフを解雇するだけでなく、 オープンから僅か2年のマンハッタン5番街のフラッグシップ・ストアもクローズすることを発表したばかりであるけれど、 同様の閉店や撤退はウォルマート、シアーズ、J.C.ペニーなども行っていて、 それに伴う人員削減が行われている状況。 2週間ほど前にはディスカウント・シューズ・ストア ”ペイ・レス”が 倒産し、全米の378店舗を閉店して従業員を解雇することを発表したばかり。
小売業がこれだけ振るわないと当然影響を受けるのがショッピング・モールで、 その30%が向こう2年以内に閉鎖に追い込まれるという見込みが出ているのだった。

トランプ政権が救おうとしている炭鉱業に従事するのは全米で僅か7万6000人。これに対して小売業は 現在倒産の危機に追い込まれているJ.C.ペニー1社だけでも11万4000人を雇用しているのが実情。 アメリカでは4人に1人が小売業、もしくは小売り関連の職業に従事しており、今後は景気の動向とは無関係に 小売業から多くの失業者が出るのは目に見えているのだった。
小売業が苦境に追い込まれている要因は、その売り上げがどんどんオンライン・ショッピングに移行しているためで、 このトレンドはもう止められないと言われるもの。 でもオンライン・ショッピングがその売り上げの増加に伴って、雇用を拡大しているかと言えば 決してそうではなく、 アマゾン・ドット・コムのウェアハウス(写真下)に代表されるように、オンライン・ショッピングは ロボットの導入が最も積極的に行われている業種。
ロボット掃除機の”ルンバ”を大きくしたような円形のロボットが、 商品を積んだカートを的確かつ迅速に動かしていく様子は圧巻で、 ここまで来たら人間の出番がないのは当然とも言えるのだった。










では、オンライン・ショッピングで購入されたものをデリバリーするビジネスなら雇用が増えるかと言えば、 この世界も今後大幅に無人テクノロジーが導入される業種。既に荷物運搬用のトラックは無人ではないものの 自動運転になっているし、アマゾンからドミノ・ピザまでが既に試験的に開始しているのがドローンによるデリバリー。
またドミノ・ピザはヨーロッパとアメリカの1部の州で、既にカプセル・スタイルのロボットによるデリバリーもスタートしており、 時速約7キロ、センサーや複数のカメラを搭載したロボットが、近距離のデリバリーを専門に 実践トライアルをこなしているのだった。(写真上1段目)

それよりも早くロボット導入の実用化をしていたのは、ホテル業界のルーム・サービス。 利用者にとっては人間によって運ばれて来るよりも、ロボットの方がプライバシーが守られて気が楽とあって、 食べ物を運ぶロボット、ランドリーを運ぶロボット、ポーター替わりに荷物を運ぶロボットなど、既に用途に合わせて異なる機種が 開発されているのだった。(写真上2段目)
またレストランやバーにおいては、ポスシステムと連動したタブレットのメニューが人件費削減以上のメリットをもたらしているのが実情。 というのは、まずオーダー・ミスが無いので 料理や食材が無駄にならないことが1つ。 もう1つは、店員を呼び止めてオーダーする手間が無く、 テーブルに備え付けてあるメニューで簡単にオーダーが出来るため、来店客がサイド・ディッシュやデザート、食後のコーヒーなどを 気軽にオーダーする結果、客単価がアップすることが指摘されているのだった。
今後はこのタブレットに、その場でカード決済をする機能がプラスされることになっていて、ロボットが料理を運んで来る日も 近いと言われるのだった。

前述のように小売店が売り上げ不振に陥る中、 少しずつストア展開を始めているのがオンラインの最大手、アマゾン・ドットコム。 そのアマゾンが2017年上半期にシアトルにオープンするスーパーマーケット、”アマゾン・ゴー”は レジが無いスーパーマーケットとして既に世界中からの話題を集めているもの。
以下がそのシステムを説明したビデオで、 その中では店のスタッフが品物を棚に納める姿が描かれているけれど、これもやがては棚の裏側から ロボットによって在庫が補充されるシステムに替わるとのこと。

こうした業種は、ビジネスが拡大していても 人間の労働の場がどんどんなくなっているので、 景気とは無関係の失業者を生み出すビジネス。でも、 組合もストライキも無く、休暇も取らず、時間にも遅れず、 健康保険も要らないロボットやAI(アーティフィシャル・インテリジェンス)の導入は、 それによるコストの削減を消費者に還元しながらも、経営側を益々潤すだけの利益を上げると言われるのだった。






アメリカでは今後15年の間に約40%の仕事がロボットとAIに取って替わられると言われているけれど、 これは他の先進諸国に比べると最も高い数字。 アメリカに次いで多いのはドイツの35%、 イギリスの30%で、日本は21%になっているのだった。

アメリカにおいてロボットとAIの導入が最も顕著になるのが、ウェアハウス&ストアレージ(卸売り&倉庫管理)、 フード・サービス、既にドライバーレス・カーの導入がスタートしているトランスポーテーション(交通と輸送)、 そしてホテルを含むホスピタリティ・ビジネス。前述のルームサービス・ロボットに見られる通り、 ホテル業界はロボットやAIを最も積極的に取り入れている業界の1つ。
ラスヴェガスのホテルWinn/ウィンでは、今年の夏までにアマゾンが開発した AIパーソナル・アシスタンス・ガジェット、アマゾン・エコーが全4,748の客室全てに設置されることになっていて、 アマゾン・エコーのアシスタント・キャラクター、”アレクサ”に頼むだけで、 空調の温度調節から、カーテンの開け閉め、ルームサービスのオーダーなどが行われ、 アレクサが人間のバトラー(召使)に替わる役割を果たすことになっていて、 その様子を描いたのが上のビデオ。

それ以外には製造業も1990年から現在までに 既に雇用が30%失われている業種。 にもかかわらず生産率は70%もアップしており、これはロボットやAIが進化する前から始まっていたオートメーション化によるもの。 昨年の大統領選の際には、トランプ氏が「メキシコや中国に奪われた製造業を取り戻す」と演説して、中西部の ブルーカラーの支持を取り付けたけれど、実際にはメキシコや中国よりもアメリカ人から仕事を奪ってきたのが テクノロジーの向上とオートメーション化の波。
それが最も顕著なのは農業で、100年前にはアメリカの就労者の41%が農業を営んでいたけれど、現在その割合は 2%になっているのだった。
近年では音楽や映画のダウンロードが広く行われるようになった結果、タワー・レコードや ブロックバスター・ビデオといったビジネスが消え失せたけれど、 そうなった背景にはパーソナル・コンピューターの普及、ソフトウェアの向上、インターネット・スピードのアップ、 MP3ファイル&プレーヤーの開発と普及というような、細かく挙げたらキリが無い、様々な要素が絡み合っている訳で、 以前栄えた仕事やビジネスが社会から消えていくのは、企業の経営判断というよりも、 世の中の大きな流れにしたがって起こっていると考えるべきなのだった。

ではこれからの時代、どんな仕事をすればロボットやAIに脅かされないかといえば、 現時点では教育、医療、クリエイティブ関連、エンジニアなど、高学歴を要する職業が影響を受け難いと言われるもの。 とは言っても医療現場には様々なロボットが既に導入されているし、教育やその他も 今後AIが取って替わっても 不思議ではないもの。
事実、学歴が物を言うアメリカの金融業界は、向こう15年でその61%の仕事が ロボットやAIに取って替わられるリスクが指摘されるビジネス。 これがイギリスになると、その割合は約半分の31%と言われるけれど、 これほどまでの違いが出る理由は、アメリカの金融業界の方がロボットやAIが導入し易いシステムになっているためなのだった。

したがって学歴を積んで、先を見越して安全な仕事を選んだとしても、今後のテクノロジーの進化で どうなるか分からないのがジョブ・セキュリティ。 その一方でオールドファッションなビジネスでも、 トップ0.1%のウルトラ・メガ・リッチをターゲットに人間の労働のラグジュアリーを売るビジネスをしたり、 絶滅の危機に瀕した品物のコレクターを相手にしたビジネスなどは 生き残ることが見込まれる訳で、 そう考えると将来的な打算よりも、自分の適性にあった仕事を選ぶことが これまで以上に 成功や生活安定のカギを握ると思われるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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