Mar. 26 〜 Apr. 1 2018

”Closed and Empty in Booming Economy?”
景気が良いはずなのに…、コンドミニアムの値段が下がり、
閉店&空店舗が増えるマンハッタンの背景とは?



私がこのコラムを書いている4月1日は、イースター・サンデー。それと同時に今週末はユダヤ教のパスオーバー(過越の祭)。 これを前後した時期は、アメリカでは スプリング・ブレーク(春休)の休暇を取る人々が多いとあって、 旅行者で溢れていたのが今週のニューヨーク。
休みは取っても何処にも行かない ”ステイケーション ” という言葉が過去のものとなり、 ウォールストリートのボーナスも 平均で18万4200ドル(約1959万円)と 前年比17%アップが伝えられ、 すっかり景気が回復しているように見えるアメリカ。 しかしながらアリゾナ、オクラホマといった州では、公立学校の教員が給与の引き上げを求める大々的なデモを繰り広げており、 それもそのはずで、全米の多くの州において教員の給与は過去10年間ほぼ据え置き状況。 ウォルマートやファストフード店でアルバイトをしないと 、教員たちが食べていけないような状況となっており、 アリゾナ州の教員の時給はアトランタ州のドッグウォーカーより安いという有り様。
2週間前には ウエスト・ヴァージニア州で、教員が9日間のストライキの末、5%の給与アップを勝ち取っており、 それに触発された 他の州でも教員ストライキが起こる気配を見せているのだった。





その一方で今週のニューヨークで報じられたのが、2015年に 3000万ドル(約32億円)で売りに出されたグリニッジ・ヴィレッジのトリプレックスのペントハウス(写真上)が、 今年2月に 何と62%のディスカウントに当たる、1150万ドル(約12.2億円)でやっと売却されたというニュース。 かつては10億円、20億円といったペントハウスが右から左へと売れていたニューヨークであるけれど、 現在は1000万ドル(約10.6億円)を超える物件の売却が非常に難しい状況で、不動産市場のスローダウンを窺わせていたのだった。
でも同じく今週に伝えられたのが、J.Rodことジェニファー・ロぺス&アレックス・ロドリゲスが 西半球で最も高層のレジデンシャル・ビルディングとして知られる432 Park Ave.(写真下左)内の 1500万ドル(約16億円)のコンドミニアムを一緒に購入したニュース。 このことからも分かる通り、今のニューヨークで10億円以上のコンドミニアムを買っているのは、もっぱらセレブリティや、世界的富豪で、 ニューヨークに常住していない人々。

432 Park Ave. を例に挙げると 、このビルの92階と93階のペントハウス3つを合体させて、9110万ドル(約97億円)で 購入したのは 中国人の大富豪で、 そのIDを隠すために会社を設立して、物件のオーナーにしているとのこと。 また、子供がコロンビア大学やNYUといったニューヨークの大学に入学するのに備えて 6〜8億円前後の物件を購入している中国人オーナーもいるようだけれど、 その子供が生まれたばかりであったり、未だ8歳というようなケースも少なく無いとのこと。
更に同ビル84階の物件を4440万ドル(約47億円)で購入したメキシコの富豪、ユアン・ベックマン・ヴィダルは この物件以外にも、トランプ・タワー、プラザ・ホテルにコンドミニアムを所有することで知られる人物。
そんな状況なので、昼間はマンハッタンのどこからでも見えるような高層ビルにも関わらず、 夜になると窓に電気が殆ど点かないため、突然 存在感が薄くなるのが432 Park Ave.という建物なのだった。
イースター・サンデーの早朝には、その432 Park Ave.の88階から火が出たニュースが伝えられ、 幸い、怪我人も無く、被害も小さかったけれど、非難を強いられた住人の友人女性は、 「グッチのハイヒールで40階も階段を降りなければならなかった」と、 高層ビルにおける批難の悪夢を語っているのだった。






NYの不動産マーケットが スローダウンしてきた原因に挙げられるのは、 ニューヨークが再開発ブームで、新しいビルディングがどんどん建設されていること。 低所得者住宅が不足している一方で、ミドルクラス以上を対象にした アパートやコンドミニアムの市場は飽和状態になりつつあるのだった。 前述の68%のディスカウントを強いられたペントハウスにしても、近隣に最新のコンドミニアムが 2軒建設中で、後発のビルの方が キッチン・アプライアンスが最新であったり、 周囲との競争を考慮したアメニティの充実等、好条件を打ち出すケースが多いことから、 買い手市場になっているのだった。
もう1つに挙げられる原因は、トランプ政権で可決した税制法案により固定資産税がアップしたこと。 そのため バイヤーがより慎重に税金の計算をするようになっており、ジェニファー・ロぺスとアレックス・ロドリゲスが1軒のアパートを2人で購入したのは、 税制上でも理にかなっていることなのだった。

でもレジデンシャルよりも ずっと冷え込みが深刻なのが、商業不動産のマーケット。
ウェスト・ヴィレッジのブリーカー・ストリート沿い、ソーホーのブロードウェイ沿いといった商業の一等地で、 18.5〜20%の空き店舗率を記録している一方で、これがアッパー・ウエスト・サイドのブロードウェイ沿いになると、 62〜109丁目までの間で35%という極めて高い 空き店舗率となっているのだった、
私が住むアッパー・イーストサイドでも、出掛けてみたら店が閉店していた という状況がこのところ2回も続いていて、 「Store for Rent」、「Retail Space Available」といったサインが目立ってきているのだった。




そうなってしまうのは、ストア・レントが高過ぎて ビジネスが撤退してしまうためで、 特に近年のアメリカでは、オンライン・ショッピングが毎年売り上げを20%前後伸ばしていることを思うと 高額のレントを払えるほどには、ストアが儲かっていないのは容易に想像が出来るところ。
同様のことはレストランにも言えて、昨年秋からどんどん増えているのがレストランの閉店や撤退。 この夏には、バルタザール等で知られる著名レストランター、キース・マクナリーのローワー・イーストサイドのレストラン、 シェルシュ・ミディ(写真上右)が、そして2018年末にはユニオン・スクエア・カフェやシェイク・シャックで知られるレストランター、 ダニー・メイヤーが手掛けるノースエンド・グリルの閉店が決まっているけれど、これら2軒については 閉店までに時間があるので、 リース切れを待っての閉店。 著名レストランターがレストランを売却するのではなく、閉店するというのは、そのロケーションに家賃に見合うだけの集客力が無いと 見切りを付けた状態を意味しており、どちらのレストランも決して 閑古鳥が鳴いているような状況ではないだけに、 如何にレントが高額かを示唆しているのだった。

こうした状況を受けてニューヨークのデブラジオ市長は、ランドロード(家主)側が テナント選びに高いハードルを設け過ぎているとして、 「空き店舗税」を導入することを検討しているというけれど、ランドロード側は 「ニューヨークの高額な固定資産税を支払うためにレントを上げざるを得ない」と反論しているのだった。

そんな中、今週金曜にニューヨーク市議会で可決されたのがマンハッタンの96丁目以下で のタクシーやUberの 利用に際しての”渋滞税”。Uberのようなカーサービスの利用で2.75ドル、タクシーの場合で2.5ドルがチャージされる渋滞税は、 ニューヨークのバス&地下鉄を運営するMTAの老朽化した駅や施設のアップデートのバジェットに充てられるとのことで、 年間448億円の税収が見込まれるとのこと。 施行は来年2019年の1月からとなっているのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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