
Mar. 20 〜 Mar. 26 2017
年齢層に関わらず、最も効果的なエクササイズとは?

今週のアメリカで最大のニュースになっていたのが、トランプ新政権が打ち出し、各方面から批難轟々だった新保険法案が
下院で投票に至る事も無く葬られて、”オバマ・ケア”こと健康保険改革法案がそのまま継続することになったという報道。
これによって選挙戦中のトランプ氏の公約がまず1つ果たされなかったことになるけれど、
それよりもトランプ政権にとってのイメージダウンとなったのが、そのプロセスにおいて身内である共和党議員を
法案可決に導く説得が出来なかったこと。これまでトランプ氏は ”ビジネスで培った取引の手腕”をウリに
「政治家にはできない折衝を簡単にやってのける」と宣言し、それが支持者にアピールしてきただけに、
今週の新保険法案の挫折は そんなトランプ氏の真価を問う指針として受け止められているのだった。
しかも今週、そのトランプ政権の威信をかけた新保険法案の根回しがワシントンで必死に行われる中、
シニア・アドバイザーで娘婿のジャレッド・クシュナー、そしてホワイト・ハウスの職員でないものの、今週からホワイト・ハウスの
大統領執務室のすぐ傍にオフィスを構えて、国の最高機密にアクセスする立場になったイヴァンカ・トランプ夫妻は、
子供を連れてコロラド州アスペンのラグジュアリー・スキー・リゾートでバケーションを楽しんでおり、
その様子をソーシャル・メディアでポストする有り様。
これについては、さすがの娘びいきのトランプ氏も穏やかとは言えないリアクションだったことが伝えられるのだった。

アメリカでは健康保険案が人々を混乱させているだけでなく、食生活やエクササイズについても 果たして何がベストで
本当に身体に良いかは誰もにも分からない状態。
90年代にはノンファット&ローファット・ダイエットが一世を風靡したけれど、今ではオリーブ・オイルやアヴォカド、アーモンドなど
良質の脂分を多めに取るべきと言われるし、ヴェジタリアン&ヴィーガンがもてはやされる一方で、動物性たんぱく質の
重要さが訴えられているのが実情。またここ数年流行ってきたグルテン・フリーにしても、発がん性が高まる指摘がされるようになり、
近年もてはやされているプロバイオティック(善玉バクテリア)のサプリメントやフードにしても、
人によって腸内バクテリアのリアクションが異なると言われる有様。
加えて炭水化物をカットするダイエットのせいで、常に疲労感を味わう人々も多く
果たして何をどう食べるのが身体に良いのかが 専門家にさえ分かっていない様子を露呈しているのが
現代社会なのだった。
そもそも身体に良いと言われる食品や食材、それらを原料に用いたサプリのデータというのは、研究費の出所が
それらを生産する大手企業。そのデータにしても、実際には700人を対象にした調査を行っていても、
発表される段階ではその対象者数が500人になって、データが研究の依頼元に有利に改ざんされていることは
決して珍しくないことで、これが違法行為に当たることはないのだった。
したがって世の中で発表されている健康にまつわるデータとて、どの程度信憑性があるかは分からないのだった。


でもエクササイズに関するデータについては それによって恩恵を受けるスポンサーがついて居るとは判断し難いだけに、
比較的信頼に値すると考えられるけれど、今月、”セル・メタボリズム”誌に掲載されたのが エイジング・プロセスにおいて
ベストなエクササイズは何かを調査した実験結果について。
この実験を行ったのはがんや心臓病の治療で有名なメイヨ・クリニックで、
被験者となったのは健康であるものの、エクササイズの習慣が無い72人。
そのうち半分は30歳以下で、残りの半分は65歳以上。
実験前に全員が血糖値、遺伝子のアクティビティ、および筋肉の細胞におけるミトコンドリアの
状態をチェックし、その後ランダムに以下の4つのグループに分けてモニターが行われたのだった。
- グループ 1:
週に4〜5回のキツメのウェイト・トレーニングを行う。 - グループ 2:
インターバル・トレーニングを週3回行う。この実験でのインターバル・トレーニングは、 スローペースで3分間の自転車こぎをした後、全力による自転車こぎ1分、計4分を1セットとして、 それを3セット連続で行う12分間のエクササイズ。 - グループ 3:
無理の無いペースでの自転車こぎ30分と、軽いウェイト・トレーニングという穏やかなエクササイズを1日置きに行う。 - グループ 4:
食生活&ライフスタイルは他のグループと同様ながらも、何もエクササイズをしない。
これを12週間続けた結果、グループ4以外は どちらの年齢グループも全員が肺活量のアップ、血圧が下がるなどの
フィットネス・レベルが上昇した他、血糖値が安定したというけれど、
研究者さえもが驚いたのはその詳細の数値なのだった。
それによれば、年齢を問わず最も筋肉と筋力が付いたのは 当然のことながらグループ1。
最も持久力がアップしたのはグループ2。
でも研究者を驚かせたのは、被験者の筋肉細胞検査。
30歳以下のグループでは、インターバル・トレーニングを行った
グループ2が274の遺伝子のアクティビティ・レベルを高めた一方で、
キツメのウェイト・トレーニングを行ったグループ1はアクティビティ・レベルが高まった
遺伝子の数は170。自転車こぎとウェイト・トレーニングの双方を
軽めのレベルで行ったグループ3は最も低い74の遺伝子に好影響を与えるに止まっているのだった。
ところが、これが65歳以上の被験者グループになると、インターバル・トレーニングを行ったグループ2で
アクティビティ・レベルが高まった遺伝子の数は、若いグループを遥かに上回る400。
それに対してウェイト・トレーニングを行ったグループ1は33、無理の無い 穏やかなワークアウトを行ったグループ3については僅か19で、
さほど大きなメリットをもたらしていないという結果が得られているのだった。
これらの結果から言えるのは、エイジングのプロセスで衰える筋肉細胞の活力が
エクササイズでリバース出来るということ、そのためには短時間のインターバル・トレーニングが
極めて有効であるということだけれど、研究者および、このレポートを読んだ人々のリアクションは、
年齢に関わらずいかにエクササイズが 人間の健康や若さの維持に大切であるかということ。
私自身、今年に入ってから珍しくインフエンザにかかってしまい、3週間殆どエクササイズが出来ない状況に追い込まれたけれど、
その間、体重は殆ど増えなかったものの、
回復後にジムの鏡に映った自分の身体が、たるんで見えた印象が脳裏から離れないのだった。

ところでメイヨ・クリニックの実験では、あまり目覚ましい効果が無かったウェイト・トレーニングであるけれど、
私自身が生涯で最も理想に近い体型をしていた時期に真剣に取り組んでいたのがウェイト・トレーニング。
両手にそれぞれ30パウンドのダンベルを持ちながらショルダー・プレスをしていたという過去の記録を今眺めると、
我が目を疑ってしまうのだった。
筋肉は脂肪と違って引力に逆らって身体に付くだけでなく、エクササイズでは鍛えられない骨を守ってくれるので、
昨今、私はウェイト・トレーニングの重要性を再認識していて、
女性にとっても 男性にとっても、ボディラインをキープしたい人は筋肉を付けることはマストだと思うのだった。
ヴェジタリアンでも筋肉隆々になれることからも分かる通り、筋肉を付けるために大切なのは食べ物ではなく、
重たいウェイトを使った筋トレ、腕立て伏せやけん垂など自分の体重を使ったワークアウト、
そしてボクシングのようにパワーを込めた動きが絡む有酸素運動。
アメリカには80歳の女性プロフェッショナル・ボディ・ビルダー、アーネスティン・シェファード(写真上)というインスピレーショナルな存在が居るけれど、
全く運動をしたことが無かった彼女がウェイト・トレーニングを始めたのは71歳の時。
今やギネス・ブックに認定され、自身もトレーナーになっている彼女が、毎日16キロ歩いてジムに出掛けて
トレーニングをする様子が以下のビデオに描かれているけれど、
彼女のボディだけでなく、シワの無い活き活きとした顔を見ていると、
益々ウェイト・トレーニングの必要性を真剣に考えてしまうのだった。
執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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