Mar. 12 〜 Mar. 18 2018

”Be Craful for Cryptocurrency!”
クリプトカレンシー(仮想通貨)・フィーバーで知っておくべき基礎知識


今週のアメリカでは、火曜日にトランプ大統領によってツイートで解任されたレックス・ティラソン国務長官のニュース、 そして金曜日にジェフ・セッションズ司法長官よって 退職2日前に免職処分にされた FBI副長官、アンドリュー・マケイブについての ニュースが最も大きく報じられていたけれど、 スポーツの世界では、現在行われている”マーチ・マッドネス” ことNCAA全米大学男子バスケットボール選手権の金曜夜のゲームで、 サウス地区の第1シードのヴァージニア大学が、同地区最下位の16シードのUMBC(ユニヴァーシティ・メリーランド・ボルティモア・カウンティ)に 54-74の大差で敗れるという史上初の大番狂わせが起こり、全てのメディアのヘッドラインがこの試合結果にフォーカスされるほどの大報道になっていたのだった。

かく言う私は、毎年NCAAのブラケット予測を埋めているほど NCAAトーナメントのファンであるけれど、 この歴史的なゲームを観損ねた理由が、試合時間に日本に住む親友夫妻とスカイプをしていたため。 その時に 長々と時間を割いた話題の1つが クリプトカレンシー(仮想通貨)についてで、 それというのも、日本の仮想通貨取引所、コインチェックからハッキングされた 580億円相当のNEMコインについての話が出たからなのだった。




実は私が昨今真剣に勉強しているものの1つが ブロックチェーン・テクノロジー。 もちろんブロックチェーンを語る上で、不可欠なのがクリプトカレンシーなので、 クリプトカレンシーについても かなりの勉強をすることになったけれど、 その私でさえ、NEMの3色のシンボルと「XEM」というトレードネームには見覚えがあったけれど、 いきなりNEMと言われてもピンと来なかったほど、アメリカでは知名度が低いのがNEM。
私がそのハッキングのニュースを知らなかったので、「世界中で大きく報道されているんじゃないの?」と 日本の友達も驚いていたけれど、アメリカのサーバーで ”NEM” を 英語でグーグルした場合、ハッキングの記事が出るまで 3ページも遡ることになっただけでなく、その記事は大手メディアのニュースではなく、クリプトカレンシー専門のウェブサイトのもの。 なので、特に私が ”モグリ” という訳ではないようなのだった。

実際調べたところ、NEMは日本ではビットコインに次いで第二位で流通しているコイン。 逆にアメリカの取引所では、NEMが直接購入できるところは殆ど存在しないのだった。 NEMのように マイナーな クリプトカレンシーは、アルトコイン(Alternative Coin/ アルタナティブ・コインの略)と呼ばれていて、 それらを購入しようと思ったら、まずビットコインを購入して、ビットコインとトレードしなければならないのが通常。
したがって、昨年末の2万ドルの最高値をピークに 価格が下落しているビットコインであるけれど、 少なくとも現時点では NEMのような アルトコインを購入する手段として、誰もが購入する必要があるのがビットコインなのだった。




NEMの話題をしていた際に、友達が日本のメディアで読んだ記事の内容が 私が勉強したことと少々違ったので、クリプトカレンシーの誤解され易い部分について簡単に説明しておくと、 先ず、初歩的な間違いとして多いのは、ビットコインを含むクリプトカレンシーは、実際にコインではなく、 ソフトウェアであるということ。
そのソフトウェアを 仮想通貨にしているのが、クリプトグラフィー(暗号化)。 そして仮想通貨の実際の存在に不可欠なのが ”Miner/マイナー(鉱夫)” の存在。 マイナーとは、世界中に何千台も存在するハードウェア、すなわちビットコインのソフトウェアを走らせているコンピューターのこと。 仮想通貨の価値を決めるのは市場での取引であるけれど、その価値を仮想通貨に盛り込むのが 世界中のマイナー達が繰り広げるゲームなのだった。
ビットコインについて言えば、そのゲームは 約10分置きのサイクルで巡ってくる 暗号化のチャレンジ競争。 どのマイナーが一番最初にチャレンジの暗号化を達成するか というのがそのゲームであり、 そのチャレンジとは、世界中で24時間行われているビットコインの取引の記録を通貨に盛り込むこと。 それを10分毎に新たに暗号化するのがマイナー達の仕事であり ゲームなのだった。 もちろん一番最初にチャレンジを達成したマイナーがその試合の勝者となるけれど、すると他のマイナー達は その達成結果が有効であるかを承認する役割を担うことになるので、マイナーのコミュニティは お互いに競争相手であり、承認委員会でもあるというのが実情。
そしてマイナー・コニュニティからの承認が得られて、初めて そのチャレンジの内容がブロックとしてレコードにつみ重ねられることになっており、 ブロックチェーンというのは この10分毎に生み出されるブロックの連続状態を意味する言葉。 言わば時系列のデータベースで、ブロックチェーンは改ざんや並び替えなど、一切の変更を受け付けない仕組み。 したがってクリプトカレンシーの売り買いにもキャンセルや変更は許されない事を意味するのだった。

ちなみに、CUBE New Yorkはウェブサイト運営以外に、私のかつての経歴を利用してマーケティング・リサーチの仕事も行ってきているけれど、 昨今 寄せられるようになったのがブロックチェーン・テクノロジーについての解説兼リサーチの依頼。 ブロックチェーンと仮想通貨が同じ物だと思っている人は少なく無いけれど、 実際には仮想通貨はブロックチェーンというテクノロジーを利用した最も有名な実例であって、ブロックチェーン自体は ウォルマートや船舶貨物の大手輸送会社等が実際の業務に取り入れ、時間の短縮化や業務の簡略化に成功し、多額の費用節約に成功しているもの。
そうかと思えば、”ロングアイランド・アイスティー”というボトル入りアイスティ―・メーカーが、 その企業名を ”ロングブロックチェーン” に替えただけで、 株価が3倍に跳ね上がったというニュースもあって、実態はどうあれ、名前だけ取り入れるだけでも 業績にプラスになるのが現時点でのブロックチェーンなのだった。




ところで、クリプトカレンシーの取引には、ソドニマス(pseudonymous /仮名) のものと、アノニマス(anonymous/匿名)のものがあって、 ビットコインはソドニマス、NEMやDashなどはアノニマスで、当然のことながらマネー・ロンダリングに使用されるのは後者。
ビットコインもアノ二マスだと思っている人は多いけれど、かつてダークネット上にあった麻薬取引のネットワーク ”シルクロード”の捜査に当たって FBIがその手掛かりにしたのがビットコイン。アメリカでは事件捜査の際に必ず言われる格言に「金の流れを追え」というものがあるけれど、 シルクロードでの麻薬取引の支払いに使われていたのがビットコイン。同コインは 前述のように全ての取引記録がブロックチェーンの中に残っているため、 その記録の仮名から麻薬取引に関わった人々をことごとく割り出し、シルクロードを閉鎖に追い込んだのがFBIなのだった。

その一方で頻繁に勘違いされがちなのは、仮想通貨の投資の単位について。仮想通貨は前述のようにソフトウェアなので、どんなに少額でも投資が可能。 すなわち500円をビットコインに投資したければ、それが可能であるということ。私がこのコラムを書いている3月18日現在、ビットコイン1枚は 8,408.22ドルで取引されているけれど、だからといってビットコインの投資に8408.22ドルが必要という訳ではないのだった。

今の世の中では、比較的簡単にクリプトカレンシーが発行できるようになっているので、既に5000種類以上のコインが出回っていて、 中には「トランプコイン」、「ジーザスコイン」といった馬鹿げたネーミングのものも多いけれど、 昨今特に増えているのが、スタートアップ企業が 株式を発行する感覚で 発行するコイン。
クリプトカレンシーの世界では、IPO(イニシャル・パブリック・オファリング)の替わりに、ICO (イニシャル・コイン・オファリング)という言葉があって、 この段階だと10億枚ものコインが 100ドル程度で買えたりするのだった。 そのため 外れてもリスクが小さく、当たればすぐにマルチミリオネア、上手くすればビリオネアも夢ではないというのがクリプトカレンシー。 そんなこともあって、人々が深く考えずに投資をするのがICOで、 2017年のICO総額は約7200億円。 中には僅か30秒で 約40億円を集めた企業もあったという。
ICOを逃しても、アルトコインならば 3日で10倍、半年で100倍というような跳ね上がりが全く珍しくないのがクリプトカレンシー。 なので、トラストレス(信用無し)と知りながらもゲームやギャンブル感覚で投資をする人々が急増しているのが現在のアメリカ。 もちろんヴェネズエラなど、政情不安で銀行が当てにならないような国の人々にとっては、 クリプトカレンシーは命綱。また金融の中央集権型の体制を嫌ってクリプトカレンシーに投資する人々も多く、 そんな人々から投資のフィロソフィーやポリシーを聞くとなかなか面白いのもクリプトカレンシーなのだった。

通常の株式であれば、企業業績や買収の噂、スキャンダル等が価格の動向に影響を与えるけれど、 クリプトカレンシーの場合、価格に影響を与えるのはデジタル界でのバズ。 したがってブロックチェーンの仕組みなど全く理解していなくても、デジタル界のバズに敏感な人であれば 有益な投資が出来るのが実情で、 ティーンエイジャーや20代の若者がマルチミリオネアになってしまうのも納得がいくところ。
そんな若い世代における クリプトカレンシーへの投資は、今やカルト・カルチャーになりつつあって、それと共に生まれてきたのがクリプトカレンシー・スラング。 ”Hodl/ ホドル”と言えば ”Hold/ホールド” のことで、売らずに持ち続けるということ。 ”Bagholders/バッグホルダーズ” と言えば、売ろうとしていたコインを売り損ねて持ち続ける人や状態。 ”Moon(ing)/ムーン(ムー二ング)” と言えば、通常の英語のスラングではお尻を見せることであるけれど、 クリプトカレンシーの世界では コインの価格が急騰すること。 ”Whale/ホエール(クジラ)” は、市場に影響を与えるほど1つの通貨を大量に所有している人のこと。 そして、これはクリプトカレンシー・スラングではないけれど、昨今クリプトカレンシーに投資する人々に対して頻繁に使われるのが、 ”Craful/クレイフル”。 これはCrazyとCareful を くっつけた造語で、「クレージーになるのは分かるけれど、気を付けるように」という警鐘。
確かにクリプトカレンシーは前述のようにトラストレスなので、多額の財産を投資するのは間違っていると思うけれど、 宝くじを買い続けるお金や、毎日の300円、400円といった少額の無駄遣いをクリプトカレンシーに投資をするのは、私は大いに奨励する立場。 クリプトカレンシーの将来については、様々な意見が聞かれるけれど、 インターネットが登場した際にも、誰も今のような世の中になるとは思っても見なかった訳で、 私は決して侮るべきではないと思うのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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