Mar. 5 〜 Mar. 11 2018

”Bachelor Nation Shocker!”
全米が熱くなったバチェラー・フィナーレの
大どんでん返しと その余波&リアクション



今週のアメリカでは、トランプ大統領が鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を掛けるというTariff/タリフの法案に署名したことや、 北朝鮮のキム・ジョン・ウンとトランプ氏の直接会談に向けて両政府が動き出した事が大きなニュースになっていたけれど、 タリフは「国別に交渉の余地アリ」という何とも不明瞭な内容。 一方の北朝鮮との直接対話にしても両国首脳に一貫した姿勢が欠落していることから、 政治・経済の専門家はどちらも騒ぎ立てるには時期尚早という見方を示しているのだった。

それよりも、今週のアメリカで誰もが話題にしていたと同時に、 メディア&ソーシャル・メディアでも大きく取沙汰され、ミネソタ州政府までをも動かしたのが、月曜に放映された 三大ネットワークABCの長寿人気リアリティTV 「バチェラー」のファイナル・エピソード。
「バチェラー」とは英語で”独身男性”という意味で、2017年からはその日本版も放映されている番組。 毎シーズン30人前後の女性コンテスタントの中から、 男性が最後の1人を選び出して、プロポーズに至るというコンセプト。 その女性版の「バチェラレット」の場合は、最後に女性が選んだ男性がプロポーズするというスタイル。
ファイナル・エピソードは、最後の2人までに絞られた候補者のうちの どちらに軍配が上がるか? という内容で、 番組のファンは シーズン中のエピソードを視聴するうちに、最後に残った2人に 対して様々な感情移入があるので、 最も話題と関心、視聴者を集めるが毎シーズンのファイナル・エピソード。
今週月曜の夜に放映された最新シーズンのファイナル・エピソードは 「バチェラー」の番組史上、最も物議をかもし、 最も視聴者からの怒りを買ったと言われるもので、実際に放映局であるABCに苦情が殺到したことが伝えられるほどなのだった。




今回で22シーズン目を迎える「バチェラー」で花嫁探しをしていたのはアリー・ルインディック・ジュニア(36歳)で、殿堂入りを果たした著名レースカー・ドライバーの息子。 彼自身もドライバーであったものの、現在は不動産業に転向した身。 その最終エピソードに勝ち残ったのは、29歳でブルネット、PR会社勤務のベッカ・クフリンと26歳でブロンドのローレン・バーンハム。 そしてアリー・ルインディックが選んで、プロポーズしたのはベッカ・クフリン。ローレンは泣きながら「裏切られた気分」とカメラに告白しながらその場を去り、 あとはベッカとアリーの幸せそうな姿でハッピー・エンディングを迎えると思っていたファンは多かったのだった。
ところが、そこから ノーカットの編集無しで始まったのが、アリーのベッカに対する24分間の別れの告白シーン。 いきなり幸せ絶頂のベッカに対して、「ローレンとのやり直しを模索したい」と言い出したのが彼で、彼女と過ごせば過ごすほど、ローレンとやり直したい気持ちが高まったというのが その言い分。 それを突然、何の予告や 前触れも無しに 言い渡されたベッカは、当然のことながら ショック、混乱、絶望に陥ったけれど、 その様子を容赦なしにABCが生々しく放映したことから 「辛くて見ていられない」、「婚約解消の現場は個人のプライバシーであって、リアリティTVとして放映するようなものじゃない」といった苦情が殺到。 ファンの怒りは収まらず、番組プロデューサーや、ホスト、そしてアリー・ルエンディックに対しては、殺人の脅迫まで寄せられたという。
ベッカによれば、 アリーは 番組が終わったら「何をしよう」と、「何処へ行こう」と将来をプランするようなことを彼女に言い続けていたいたとのことで、 彼女は 一方的かつ裏切りとも言える別れを 全米ネットのTV番組で言い渡される屈辱を味わっただけでなく、 1人でミネソタ州の自宅に戻り、涙する姿までをも ABCTVのクルーが追いかけて撮影するという残酷な扱いを受けるに至っているのだった。

月曜に報じられたファイナル・エピソードの終盤では、そのベッカ・クフリンが登場。 ホストにその時の気持ちを 落ち着いた様子で説明する姿が見られたけれど、 そんな事が可能なのは この大どんでん返しの結末の撮影が 2か月以上前に収録されていたため。
ファイナル・エピソード放映後のメディア&ソーシャル・メディア上では、言うまでも無く このショッキングな結末と、残酷なまでの ABCの演出の話題で持ち切りとなり、「火曜日の朝にこれを話題にしないアメリカのオフィスは存在しないのでは?」と言われたほどなのだった。




「バチェラー/バチェラレット」は、そのファイナル・エピソードの後に、最後まで勝ち残ってフラれたコンテスタントが、 番組収録後初めてバチェラー/バチェラレット対面すると同時に、番組放映が終了するまで 2人で会うことを契約で禁じられていた カップルが初めて人前で一緒の姿を披露する「After the Final Rose/アフター・ザ・ファイナル・ローズ」という番組が放映されることになっているけれど、 通常1時間の同番組が2時間になって、ファイナル・エピソードの翌日、火曜日に放映されたのが今シーズン。
そこでは、アリー・ルインディックの弁明インタビュー、 彼がローレン・バーンハムの自宅を訪ね2人がよりを戻すシーン、 そして「アリーを許すし、恨んではいない」というベッカのインタビューに加えて、 番組のハイライトとなったのが、突然の別れ以来、初めて再会したベッカとアリーの対面(対決)シーン(写真上左)。 その後、アリーがローレンにプロポーズをする(写真上右)という盛り沢山の構成になっていたけれど、最後は番組ファンの誰もが予想した通り、 ベッカが次シーズンの「バチェラレット」に選ばれ、新しいロマンスに巡り合えることを予感させるハッピー・エンドで幕を閉じているのだった。
しかし同番組の放映が終わる段階では 「バチェラー」のファンだけでなく 全米の多くの人々がアリー・ルエンディックに対して敵対心とも言えるネガティブな感情を抱いたと同時に、自分をフッてから戻ってきた彼と交際するならまだしも、 あっさり婚約したローレンに対しても批判が集中。
これを受けてベッカが住むミネソタ州の共和党議員、ドリュー・クリスチャンセンがアリー・ルインディックに対する ミネソタ州立ち入り禁止令を週半ばに正式に法令化。 またミネソタ、サウス・キャロライナ、そしてニューヨークのタイムズ・スクエアには、ベッカをサポートするための 合計17のビルボードが番組ファンの広告料負担によって登場(写真下)。 オンラインではベッカに対する寄付金集めも行われ、 アメリカが「バチェラー・ネーション」と呼ばれるだけの理由を立証していたのだった。
お陰で火曜日に放映された「アフター・ザ・ファイナル・ローズ」は高視聴率を記録。 アリーがベッカに別れを言い渡したシーンは、今週末の「サタデーナイト・ライブ」もパロディにするほど、 アメリカ国内の殆どの人が知る有名なシーンになってしまったのだった。






もし 今回の”バチェラー・ショッカー” で大きなベネフィットを得た存在が居るとすれば、それは同フィナーレと時を同じくして出版された 「バチェラー・ネーション」(写真上左)の著者であるエイミー・コフマン。 というのも今回の物議がきっかけで、多くのメディアが 「バチェラー」の舞台裏を赤裸々に描いた同書に注目し、 普通ではあり得ないほどのパブリシティを獲得したため。
同書によれば、「バチェラー/バチェラレット」はその収録全行程が6週間で、その間は TVを観ることも スマートフォンやコンピューターを使うことも許されず、 完全に世の中から隔離された状況になるとのこと。仕事を6週間も休むというのは かなりのハードルであるため、コンテスタントは男女とも無職であるケースが少なく無いようなのだった。 同書では、毎シーズン、ニール・レーンが担当する婚約指輪のABC側が負担するお値段から始まって、 コンテスタントが審査の際に受ける性格診断テストの内容や 性病の検査、及び性病検査で失格する候補者の多さ、 同意しなければならない契約書の内容など、事細かな情報が書かれており、 番組プロデューサーが 女性コンテスタントの生理のサイクルを把握して、 あえてPMSで精神が不安定な時に、モノローグ(撮影中の心境の告白シーン)を撮影するなど、 視聴率獲得のためのアグリーな小細工が行われていることも明らかになっているのだった。
更には番組の編集を担当するチームが、撮影シーンを組み合わせて、 ライバル同士の争いや陰謀など、実際に起こっていないストーリーラインのでっち上げを行っていることも 同書で明かされているけれど、編集側にしてみればそれは、詐欺でも偽りでもなく、 渡された撮影シーンのクリップで、番組を構成する作業をしているだけとのこと。 「ブロックのLEGOを渡されて、それで何を作るかという作業に似ている」とも語っているのだった。

リアリティTVがリアリティと かけ離れているのは、既にアメリカでは織り込み済みの事実であるけれど、 それでもアメリカ社会が熱くなったのが今回の「バチェラー」。 ちなみに最終候補2人の間で、婚約者の乗り換えを行ったのは アリー・ルインディックが番組史上2人目。 1人目は2009年のバチェラー、ジェイソン・メスニックで、 やはり彼もブルネットからブロンドに乗り換えているのだった。
この時に屈辱を味わったメリッサ・ライクロフトは、その後、同じABCのリアリティTV「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」に出演し、 芸能レポーターになり、彼女自身も一度は別れたボーイフレンドと結婚して現在は三児の母(写真上右)。
ジェイソン・メスニックは、番組のフィナーレで 一度は泣きながら別れを言い渡したモリー・マラニーと結婚(写真上中央)。 二人はその後二子を設け、今も結婚生活を続ける数少ない バチェラー・カップルのうちの1組となっているのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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