Feb. 27 〜 Mar. 5 2017

"Can't Afford to Get Sick!"
健康保険に頼れない!病気になれない時代の
健康管理を考える前に知っておくべきこと



今週のアメリカで最大の報道になっていたのが、与党共和党がオバマ・ケアこと健康保険改正法案に替わる 新しい健康保険案を打ち出したニュース。 ドナルド・トランプが大統領選で掲げていた最大の公約の1つがオバマ・ケアを廃案にして、新しいプランに切り替えることであったけれど、 蓋を開けて見れば 新たなプランは”オバマ・ケア・ライト”と呼ばれるほどに、 オバマ・ケアに似通ったもの。でもバドワイザーではないので、”ライト”という言葉が付いたからといって 健康的になる訳ではなく、この法案が通って恩恵を受けるのは裕福な人々のみ。
2000万人のアメリカ人が新たに健康保険に加入することが出来たのがオバマ・ケアであったけれど、 新しい法案では貧困層を中心に600〜1500万人が保険を失い、 がんや心臓病など既往症を持ち、健康のリスクが高い人々は別途に掛け金の高い保険システムに加入しなければならないので、 当然そのプレミアムは貧困層には支払えない金額。
しかもオバマ・ケアでは国民全員に健康保険の加入が義務付けられていたけれど、 代替案にはその強制がないため、保険を使わない若い世代や健康な人々が支払うプレミアムが 財源として見込めない状況。したがって資金的にも一体どう回っていくのかが全く分からないシステムで、 オバマケアに頼っていた 病気で貧しい人々を浄化しようとしているのでは?と疑いたくなるような、 いかにも共和党らしい法案。
でも皮肉なことに、同プランで保険を失うリスクがある人々ほど、 選挙戦中の「オバマケアを”Something Terrific(何か素晴らしいもの)”に切り替える」という 具体性の無いスピーチを真に受けてトランプ氏に投票していたのが実情。
多くの専門家はこの案が上院、下院で可決されることはないと見ているけれど、 新大統領が選挙戦中に最も強調した公約であるだけに、 トランプ政権下で新しい健康保険案に切り替わると見る声は多く、 それは現在の法案よりはマシであっても、決してオバマ・ケアより良くなることは無いという意見が 圧倒的なのだった。




アメリカの病院は一晩入院しただけで 100万円以上の請求が来るなど、日本では 考えられないほどに医療費が高額。このため 保険が無い、もしくはカバー率が悪い保険にしか加入出来ない人は、自分や家族が健康を害すると やがて 破産状態になるというのは アメリカではありがちなシナリオ。
オバマケアが廃案になれば、その状況のさらなる悪化が見込まれるので これからの世の中では 病気に掛かって その十分かつ適切な治療が受けられるのはリッチな人々にのみ与えられるラグジュアリー。 でもこの傾向はアメリカに限ったことではなく、どの先進諸国においても健康保険の自己負担率が アップする状況が見られており、世界的に今まで以上に病気になってはいけない世の中になってきているのだった。

にも関わらず、現在のアメリカでは心臓病、糖尿病等、様々な健康障害をもたらす肥満に歯止めが掛からず、 益々悪化の一途を辿る状況。 その背景にあるのは アメリカ社会で肥満が増え続けた結果、肥満モデルが雑誌の表紙を飾り、 新大統領までもが超肥満とカテゴライズされる体型という社会風潮を受けて、 肥満が”ニュー・ノーマル”になりつつあること。 加えて多くの人々が健康的な食生活を心掛けては、 挫折を繰り返してきた結果、病気にならないための食生活を心掛けるより、 「健康を害するまでは 好きな物を食べよう」という刹那的な考えにシフトしていることがレポートされているのだった。

その一方で、他の世代よりもヘルス・コンシャスなミレニアル世代で増えているのが大腸がん、直腸がん。 この原因は医学界でも不明と言われているけれど、 いずれの世代においても健康のカギを握っていると言われるのが腸。
ここ数年の間にプロバイオティックがもてはやされて、腸内の善玉菌の存在がこれまでになく重視されるようになったのは周知の通りであるけれど、 腸というのは消化や吸収をするだけでは無く、実は脳に大きな影響を及ぼす器官。 つい最近になってから、アルツハイマー病やパーキンソン病なども その原因が腸内のコンディションにあることが 判明しているほどなのだった。

そもそも人間の腸内には2億の神経細胞があり、これは犬の頭脳に匹敵するもの。 その腸を取り仕切っているのが腸内のバクテリアで、そのバクテリアは 脳やDNA細胞にシグナルを送ることにより、食べ物の好みから 精神状態、 エネルギー効率、アレルギー反応、身体の痛み等、人間の身体と精神にあらゆる影響を及ぼすもの。 このため昨今の医学界では腸神経をセカンド・ブレイン、すなわち第二の脳と見なすようになってきているのだった。

かつては、人間の健康状態は30%が先天的なDNA、残りの70%が後天的なライフスタイルによるものと言われたけれど、 今では人間の健康を決めるのは、親から貰い受けたDNAが10%、バクテリアのDNAが10%、そして残りの80%が ライフスタイルによるものと言われ、 その80%のライフスタイルも腸内バクテリアの影響を大きく受けていることが明らかになっているのだった。




人間の体重の1〜2キロを構成すると言われるのが体内のバクテリア。 特に腸内バクテリアの数は100兆と言われ、これは全身の細胞内のバクテリアの100倍の数。
世の中一般で知られるように、抗生物質が悪玉バクテリアを退治し、 発酵食物に含まれるプロバイオティックが善玉バクテリアを増やすけれど、 善玉バクテリアを意図的に増やし、徹底的に悪玉バクテリアを退治してしまうと、 消化効率が上がるかと思いきや、逆に精神が錯乱して、 防衛本能が鈍る等の問題が生じるのは モルモットを使った実験で明らかになっていること。
事実、アメリカでは抗菌剤を含んだハンドサニタイザーの売り上げが上がった途端に、 アレルギー症が増えているので、バクテリアに大切なのは 悪玉の退治ではなく善悪のバランスと言えるのだった。

そのバクテリアが果たす役割は、人間が食べた物の分解、消化、吸収で、 これはバクテリア無しでは人間には行う事が出来ないもの。 すなわち、花が蜜バチに蜜を提供することによって受粉をしてもらうのと同じ様に、 人間は自分の意思で物を食べていると思っても、実はバクテリアに餌を与えている訳で、 バクテリアが餌を受け取って、それをエネルギーに替えてくれると解するべきもの。 その餌となる食べ物も 実は腸内バクテリアが脳にシグナルを伝達して、リクエストしているものなのだった。

現在、医学の世界で定着してきているのが体内、腸内で善玉&悪玉バクテリアが繰り広げる様々な状況を 生態系として捉える見解。 すなわち自然界において、害虫が、別の害虫駆除に役立つと同時に、 鳥の餌になっているというような生態系が人体の中でも繰り広げられているというのがそのセオリーで、 悪玉バクテリアが別の悪玉を退治し、それによって善玉バクテリアが活発になる等、 体内における生態系がバランス良く機能している状態を 健康と見なすように なってきているのだった。

したがって、自分の身体を使って生きている生物が 自分自身だけと思った大間違いで、 実際には何を食べても、飲んでも、それを受け取るのは腸内のバクテリア。人間の身体はそんなバクテリアとその活動をホストをする小宇宙のような存在なのだった。 そんなバクテリアの中には、ホルモンや遺伝子に影響を与えるものが含まれているのは言うまでもないことで、 脳がストレス・ホルモンをリリースしたり、時に食欲コントロールのホルモン分泌を妨げて過食に導くのは 腸が脳に送るシグナルの影響。
人間は時に食の好みが変わることがあるけれど、これも脳が味覚や消化器官をコントロールしているというよりも、 腸内バクテリアが求める餌を与えていると解した方が良いようなのだった。




要するに健康を保つというのは、腸内バクテリアと上手く付き合っていくということ。 そもそも腸は人間の免疫力を掌る器官。 したがって病気にならないための健康管理は腸の管理であり、食生活の管理。
そのためには 特定のバクテリアが増えて、腸内でアンバランスを生み出すのを防ぐために、 偏食を避け、なるべく多くの食材を食べることが大切。たとえ健康的な食生活でも 毎日同じ物を食べているのではダメなのだった。

さらに食材を新鮮な状態で食べること、 農薬や保存料、GMOなど自然界の生態系を崩すものは、体内の生態系を崩すので それらを避けることもマスト。 加えてファスト・フード、インスタント食品、加工食品は、それに含まれているケミカルが消化と吸収のプロセスを 難しくするために善玉バクテリアのエネルギーを消耗し、悪玉バクテリアと結び付いて、 精神的な落ち込みや集中力や気力の低下、満たされない食欲やストレス、疲労感をもたらすのもの。
アメリカでは2週間ほど前に、サヴウェイのロースト・チキン・サンドに用いられている鶏肉の DNAをチェックしたところ、その50%しか鶏肉が用いられておらず、残りは大豆やオニオン・パウダーなどの フィラーであったというニュースが報じられたけれど、ファスト・フードや冷凍食品などは、 一見健康的なメニューを選んでも、実は何を食べているか分からないというリスクがあるのだった。

また悪玉のバクテリアは砂糖を好むだけに、知らない間に多量の糖分が体内に入ってしまうソーダなどのソフト・ドリンク、 体内で消化される段階で砂糖に替わるパンや白米などの炭水化物も控えるべきもの。
もちろん過食もご法度ではあるけれど、 世の中には多少太っていても、痩せている人よりも健康で身体が強い人は沢山居ることからも分かる通り、 痩せている人が腸内バクテリアと上手く付き合っているとは限らないのが実際のところ。 健康的で引き締まったスリムな体型は腸内もヘルシーであることを意味するけれど、 単に痩せていて骨も弱そうな身体である場合は、身体の組成を促すバクテリアが十分な働きをしていないことを意味するのだった。

腸というのは医学の世界でも解明しきれていない部分が多い神秘的なもので、人それぞれにコンディションが異なるもの。 したがって腸や腸内バクテリアと上手く付き合う方法は、日頃から食べ物と体調に気を付けて、 自分自身が一番良く知っているべきこと。
特に体調が悪い訳でなく、同じ時間眠っているのに、何となく疲れている、集中力が無い、 決断力が鈍っているという場合は、食べ物に原因があると考えて 食生活を改めてみると、2〜3日後には 問題が改善されるケースが多いのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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