Feb. 27 〜 Mar. 5 2017

"Well Done with What??"
テイストはお金では買えないプレジデンシャル・エグザンプル!?
全米を驚愕させた ドナルド・トランプ好みのステーキ!



今週末からアメリカで最大の報道になっていたのが、 オバマ前大統領が選挙前にトランプ・タワーの電話を盗聴させていたという批判ツイートを、 トランプ氏が 例によって証拠や根拠を一切提示しないまま行ったというニュース。
これに対しては、直ぐにオバマ氏側が「大統領やホワイトハウスが、一般市民の盗聴の指示をすることはない」と反論。 事実、一般人の盗聴はFBI等の捜査機関が犯罪の可能性を立証し、司法局の許可を得て行われるもの。 同件については既にFBI長官が トランプ氏のクレーム却下を司法省に要請したことが伝えられ、 メディアや政治評家は、今週トランプ政権とロシアの癒着スキャンダルが いよいよ本格化したことを受けて、 「国民とメディアの関心をそらすためにトランプ氏がこのツイートを行った」という見方を強めているのだった。
その一方で金曜にはホワイトハウス内で トランプ氏が アドバイザーのスティーブ・バノン、首席補佐官のラインス・プリーバスと 大衝突したニュースが伝えられ、今やトランプ政権の動向はアメリカ国民にとってリアリティTV状態。 それを象徴するかのように、昨今では本来政治とは無関係の芸能ゴシップ誌が トランプ政権のニュースを大きく誌面で取り扱っているのだった。




そのオバマ大統領盗聴ツイートが大報道になるまでの間、ソーシャル・メディア上をかなり騒がせていたのが、 先週末にトランプ氏が ワシントンDCのトランプ・ホテル内のレストラン、BLTステーキで オーダーしたステーキについてのニュース。
それによればトランプ氏は 「いつものようにウェルダンのステーキをケチャップで味わった」そうで、 もしそれがデニーズの18ドルのステーキ・セットであれば誰も文句は言わないところ。 でもそれが1皿56ドルもする グラスフェッド(草食)のニューヨーク・ストリップであったことから アメリカ中のまともな味覚を持つ人々を愕然とさせていたのだった。

ニューヨーク・ストリップとは、ショートロインのことで、サーロインより脂身が多めであるものの、 若干硬めの部位。それだけに火を通し過ぎず レア、もしくはミディアム・レアのジューシーな状態で味わうのが最高のステーキ。 ちなみに写真下左は生のニューヨーク・ストリップで、右側はそれをレアで焼いた状態。
強火のグリルでサッと表面に焼き色を付けて、レアでサーヴィングするステーキは、 肉の表面にふりかけた塩と 肉の脂肪、たんぱく質が 高温の熱によって独特の化学反応をおこし、 味わい深い肉汁と 独特のアロマを生み出すのは、ポークやチキンには無い 牛肉ならではのもの。
この化学反応の恩恵が最も肉の味に反映されるのがレアで、高額の肉になればなるほど それが芸術味を帯びたテイストになるのは それを食べたことがある人が脳裏に刻み付けていること。 逆に火を通せば通すほど、肉汁とアロマが失われて、肉がどんどん硬くなっていく訳で、 グルメほどステーキはレア、もしくはミディアム・レアで味わうというのは 世界共通の意識なのだった。







そんなこともあって大のステーキ好きで知られるビリオネアのトランプ氏が、ウェルダンでニューヨーク・ストリップをオーダーするというニュースには、 「肉が勿体ない」といった指摘に加えて、「ウェルダンのステーキを平気で食べる人間は味音痴で、日頃から同じものばかり食べている」、 「ウェルダンのステーキをオーダーする人間は、味覚も感覚も狂っているので信頼に値しない」、 「好んでウェルダンを食べる人間は、価値観が変で、しかも頑固だ」といったキャラクター批判にまで発展していたのだった。

ちなみに、私も生涯に1人だけウェルダンのステーキを好む相手と交際したことがあるけれど、 確かに日頃から同じものばかり食べていて、生の状態を嫌うので お寿司など絶対に食べない主義。 したがってグルメには程遠くて、食事をしていても楽しくなかっただけでなく、ボーイフレンドとしても最悪だったけれど、 別れた後で、肉好きの女友達から「相手がステーキをウェルダンでオーダーした時点で別れるべきだった」と言われて 妙に納得したのを覚えているのだった。
なのでステーキの国、アメリカで、その焼き具合や肉の部位の好みが人間性をジャッジする指針になっていても驚かないだけでなく、 それはかなり当たっているとさえ思うのだった。

とは言ってもアメリカ人の23%はウェルダンのステーキを好むとのことで、その傾向はトランプ氏に投票した南部や中西部で特に顕著。 したがってウェルダン・ステーキについては100歩譲ってOKを出した場合でも、トランプ氏が そんなウェルダンに焼いて味が台無しになった高級肉にケチャップをつけて食べるのを好むというのは、やはり人々を愕然とさせていた事実。
写真上、下段右の60年代のヘインツ・ケチャップのポスターにフィーチャーされているステーキでさえ、肉の焼き具合はレア。 とは言ってもこのポスターは、ステーキにケチャップを掛けるための宣伝ではなく、添えられたオニオン・リングに掛けるという広告。 大衆的なレストランでも ステーキにケチャップが付いてくることは少なくないけれど、それはサイドのフライドポテト用のもので、 70歳のビリオネアが ステーキにケチャップを掛けて食べるというのはかなり意外なこと。そして、それが米国の大統領となれば尚のこと。
ちなみに日本にはケチャップ・ライスというものが存在し、トマトソースが普及するまでは、 スパゲッティもケチャップで炒めていたけれど、これらは欧米では「日本人は無類のケチャップ好き」と見られる 要因になっていたのだった。




これまで ステーキ以外で新大統領が主食としてきたのが、マクドナルド、KFC、ドミノ・ピザなどのファスト・フード。 この理由として本人は オーダーしたら早く出て来ること、食中毒の心配が無いことを挙げているとのこと。 ピザについては チーズとトッピングだけを食べて クラストは殆ど食べないそうで、 これは健康のために炭水化物をカットしている訳ではなく、単に嫌いだからと説明されているのだった。

お酒を飲まない新大統領が、ケチャップを掛けたウェルダン・ステーキを始めとする フードを流し込むのは もっぱらダイエット・コークで、一日に大瓶1.5〜2本は開けるペースとのこと。 さらに大統領はスナックを好み、トランプ氏就任以降は 大統領がお気に入りのレイズ・ポテトチップ、ドリトス、そしてケロッグの子会社、 キーブラーのヴィエナ・フィンガーズ(クリームを挟んだバター・ビスケット)が大量にホワイト・ハウスのパントリーにストックされたことが 伝えられていたけれど、要するにトランプ氏の食生活は典型的なアメリカの貧困肥満層と大差ないものなのだった。

でもホワイトハウス入りしてからというもの、トランプ氏はファスト・フードは食べなくなったそうで、側近のコメントでは サラダを食べるようになったとのこと。 しかしながら、聞けばそのサラダとは”コブ・サラダ” (写真上右)。 ブルーチーズ、チキン、ベーコン、ゆで卵、アボカド等がメインで、 僅かにレタスとトマトを加えた材料を クリーム系のドレッシングで和えてからサーヴィングするコブ・サラダは、 ”野菜が嫌いな人が食べるサラダ”として知られ、1ポーションが1200カロリー前後。
もちろんホワイトハウスのキッチンで調理されるので、肉も野菜も卵もGMOフリーのオーガニック。 したがってたとえ高カロリーでも 加工食品が含まれていない分、同じカロリーのファスト・フードよりはヘルシーと言えるのだった。

トランプ支持者、特に南部、中西部のベビーフーマー世代の男性の中には、 自分と同じような不健康フードを食べて 70歳にして大統領に当選したトランプ氏の姿に、 言いたい事を言って、食べたい物を食べて、大胆に生きる昔ながらの男性像を見出して共感する人々が多いと言われ、 そんな男性達は 医師からのダイエット・アドバイスを無視する理由として新大統領の食生活を挙げるケースが少なくないとのこと。
一方、アンチ・トランプの都市部に住むリベラル派は、デジタル版のニューヨーク・タイムズをアイパッドで読みながら カフェラテをすすって、 ヨガクラスに通い、ディナーにはスシを好むライフスタイル。 そう考えると、今のアメリカは政治的なポジションだけでなく、ライフスタイルから味覚に至るまでが、 深く分断されていると言っても過言ではないのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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