Feb. 29 〜 Mar. 6 2016

”Brokered Convention : The Last Chance to Stop Trump?”
トランプを大統領にさせない最後の手段!
今、誰もが話題にするブローカード・コンベンションとは?



今週のアメリカでも、報道時間の多くが大統領予備選挙に割かれていたけれど、 話題と報道が集中していたのは、例によって共和党側。
日を追うごとに、「茶番を通り越して 子供の喧嘩のようになっている」と指摘される 共和党候補の舌戦であるけれど、今週はライバル候補者のマルコ・ルビオに「手のサイズが小さい、指が短い」とからかわれていた ドナルド・トランプが、ディベートの場で「自分の手は小さくないし、ビューティフルだと言われる」と反論して 「サイズの心配は無い」と強調したことで、人々を呆れさせたり、ジョークのネタになっていたけれど、 このやり取りが何を意味していたかと言えば、ドナルド・トランプの性器のサイズ。 アメリカでは、手のサイズや指の長さが性器のサイズと比例するという説が定着しており、 だからこそドナルド・トランプがむきになって 「手が小さい」説を否定していた訳だけれど、 実際には彼に手のコンプレックスがあるのは本当の話で、90年代にヴァニティ・フェア誌に掲載された 自分の手の写真写りに文句を言うなど、それを裏付ける幾つものエピソードが今週のメディアで紹介されていたのだった。
したがって、メディアも ディベートでの共和党候補者のやり取りを「下らない」、「子供のレベル」などと指摘しながら、 それに付き合った報道をしていた訳であるけれど、そのメディアが目下 総力を結集して行っているのが、 共和党サイドのケース・バイ・ケースのシナリオ予測。

メディアの報道を観ていると、ドナルド・トランプが独走&圧勝しているかのように見える選挙戦であるけれど、 実際のところ、彼は共和党大統領候補になるために必要な 1237のデリゲート(代議員)中、 今日3月6日現在で獲得しているのは その3分の1に満たない384デリゲート。 2位のテッド・クルーズが84デリゲート差で彼を猛追している状況なのだった。




一方の民主党側は、メディアが 予想以上にバーニー・サンダースを相手に苦戦しているヒラリー・クリントンの様子ばかりを報じる割には、 ヒラリーは 民主党大統領候補になるために必要な2383デリゲートのうちの ほぼ半数にあたる1121デリゲートを獲得。 バーニー・サンダースはその半分以下の484のデリゲートを獲得しているけれど、今後この差は益々開くことが見込まれているのだった。
果たしてメディアがこぞって 意図的に「ヒラリー苦戦&トランプ独走」を報じているのか、 圧勝が見込まれていた割にデリゲートを取られているヒラリーと、こんなにデリゲートが取れるとは誰も予想をしなかったトランプの 善戦ぶりのコントラストが このような報道になっているのかは定かでないけれど、 メディアが報じるような トランプが「Unstoppable / アンストッパブル」な独走状態になるには、 3月15日に行われる予備選挙で、 99のデリゲートを割り当てられているフロリダ州、66のデリゲートを持つオハイオ州の双方に勝利し、 そのデリゲートを獲得する必要があるのだった。
でも それらを獲得した場合でも、トランプは残されたデリゲートの51%を獲得しない限りは、 大統領候補となるための1237デリゲートに及ばないとのこと。 これまでは予備選挙が行われる度にトランプが獲得してきたデリゲートの割合は45%で、 たとえフロリダとオハイオで勝利をした場合でも、これまで以上の割合の勝利を収めない限りは トランプが共和党候補にはなれないというのが現時点のシナリオ。
しかしながら候補者が絞られつつある現在では、これは不可能ではないと言われる数字なのだった。

もしトランプがフロリダ、もしくはオハイオのどちらか1州だけで勝利を収めた場合は、 トランプに必要な 残りのデリゲートの獲得パーセンテージは57%にアップ。 これは不可能ではないものの、「かなり厳しい数字」というのが票読みの専門家の予測。
たとえトランプのデリゲート獲得数が候補者中トップであっても1237に満たない限りは 共和党選出の大統領候補になれないのは言うまでもないこと。 したがって、共和党側はトランプに対抗する勢力には乏しい一方で、 フロント・ランナーのトランプ自身も 少なくとも現時点では 未だ”圧倒的に強力な候補”にはなっていないのが実情なのだった。




現時点の世論調査ではトランプがオハイオとフロリダの双方でトップを走っているものの、予断を許さない状況。 それというのも、 現時点で生き残っている4人の候補のうち、ジョン・ケイシックは現役のオハイオ州知事、 マルコ・ルビオは元フロリダ州知事。
もしオハイオ州、フロリダ州の予備選挙で、ジョン・ケイシックと マルコ・ルビオがそれぞれ勝利した場合には、 トランプは残されたデリゲートの67%を獲得しなければ 大統領候補に必要な1237デリゲートに満たない計算となり、 これは 政治専門家の誰もが「不可能」と断言する数字なのだった。

そうなった場合に何が起こるかと言えば、共和党大統領候補が未定のまま 7月18〜21日にオハイオ州クリーブランドで行われる 共和党党大会にもつれ込むことになり、 その党大会の場で、上級レベルのデリゲートによる投票で決定されるのが 正式な大統領候補。
もし、トランプが他の候補を引き離した数字のデリゲートを獲得していた場合は、 彼が党大会で上級レベルのデリゲートを説得し、承認を仰ぐチャンスが与えられるけれど、 そうでない場合は、党大会まで生き残った候補者に対する 上級レベル・デリゲートによる投票数で大統領候補が決定することになっているのだった。



このように大統領候補者不在で突入する党大会(コンベンション)のことは、”Brokered Convention / ブローカード・コンベンション” と呼ばれており、このブローカーズ・コンベンションこそが ドナルド・トランプを大統領候補にしたくない 共和党上層部が漕ぎ着けようとしているシナリオと言われるもの。 昨今、ブローカード・コンベンションをインターネット上で検索する人々が多いため、グーグルでは「Bro」とタイプしただけで、 「Brokered Convention」が真っ先にサーチの候補として出てくるのだった。

共和党で前回 ブローカード・コンベンションが行われたのは1976年。 この時のコンベンションで大統領候補を争ったのは、第38代大統領のジェラルド・フォード(写真上左から2番目)と 後に第40代大統領となったロナルド・レーガン(写真上一番右)。フォード氏は、ウォーターゲート事件が原因で歴代の大統領中、 唯一任期を終えずに辞任したニクソン大統領(写真上一番左)の後任として、 1974年8月に副大統領から大統領に就任しており、 76年のブローカード・コンベンションでは僅少差で 当時カリフォルニア州知事であったレーガン氏を下して 共和党大統領候補になっているのだった。
でも彼は本選挙で、民主党のカーター第39代大統領(写真上右から2番目)に敗れ、そのカーター氏は それから4年後の選挙で レーガン大統領に敗れて、再選を逃しているのは歴史が語る通りのシナリオなのだった。

もしブローカーズ・コンベンションに突入した場合、最も有利と言われるのは、現時点でトランプについで第2位のテッド・クルーズ。 というのも、ドナルド・トランプは 今週だけでも 前共和党大統領候補のミット・ロムニーから「大統領候補に相応しくない」と 公に批判されたのに加えて、 白人至上主義の組織 KKKとの関わりを否定しなかったことを 下院議長で、共和党リーダーの1人である ポール・ライアンから非難された一方で、週末に行われたオハイオ州のスピーチでは支持者に右手を掲げさせ 自分に投票することを誓わせるという ヒットラーの真似事を展開するなど、 共和党上層部が”危険視”さえし始めている存在。
共和党上層部が恐れているのは、トランプが共和党候補になってヒラリーに破れるだけでなく、本来の共和党の主張と相反する候補者を擁立したことで、 党自体がバラバラに崩壊してしまうことで、その点テッド・クルーズは、キリスト教保守派を地で行く、共和党に相応しい候補者と言えるのだった。


しかしながら現時点では、トランプが「自分が5番街で誰かを銃で撃ち殺しても、支持率が下がることは無い」と自信満々に語っても 支持率に影響しないことからも分かる通り、トランプを支持する人々は 盲目的に彼を支持している状況。 たとえ彼が過去に10回もヒラリー・クリントンに献金をしていても、 ”トランプ大学”という彼の不動産講座が詐欺で訴えられていても、トランプが実際には幾つものビジネスを倒産させていても、 彼が1990年の雑誌インタビューで 「ヒットラーのスピーチを寝る前に愛読している」と語っていても、 支持が揺らぐことはないのだった。
それを立証するかのように、今週ヴァイラルになっていたのが上のビデオ。 ここでは、コメディアンがヒットラーの語録を用いてトランプのキャンペーン・パンフレットを偽造して、トランプ支持者に そのメッセージを支持するかを尋ねたところ、全員がヒットラーの語録をトランプのスローガンだと信じて それを支持していたのだった。 しかも驚くべきは、彼らはそれがヒットラーの語録と聞いても、「ヒットラーは支持しないけれど、 もしこれがトランプの主張なら支持する」と答えていたこと。
したがって、大統領候補、ドナルド・トランプよりも遥かにアメリカ社会にとって危険な存在と言えるのは、 トランプを盲目的に支持する投票者と言えるのだった。

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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