Feb. 13 〜 Feb. 19 2017

"Weed Get You High (Income)?"
老若男女、驚くほど一般的なアメリカのマリファナ使用、
その市場が次のビリオン・ダラー・ビジネス?



今週も政治の世界ではトランプ新大統領が引き続きリベラル派とメディアに嫌われるヘッドラインをクリエイトしていたけれど、 ビジネスの世界で話題になったのが、スマートフォン・アプリのスナップチャットで知られるSnap Inc.のIPOに際して、 同社の時価総額が195〜220億ドル(約2兆2000億円〜2兆2480億円)と評価されたこと。
スナップチャットは、CEOのエヴァン・スピーゲルがモデルのミランダ・カーと婚約したことでも知られているけれど、 2016年に株式が公開されたインスタグラムが全世界で6億人のデイリー・ユーザーを擁するのに対して、 スナップチャットのデイリー・ユーザーは1億5800万人とほぼ4分の1。 また、スナップチャットはフェイスブックやツイッターのようなソーシャル・メディア・プラットフォームとは異なり、 あくまでアプリ。使う必要があるものではないだけに、ウォールストリートのインベスターの間では慎重な声も聞かれているのだった。

このニュースを報じたメディアは「手っ取り早くビリオネアになるためにはアプリをデザインすること!」と指摘していたけれど、 今、アプリよりも遥かに多くのインベスターが注目しているのがマリファナ・ビジネス。
現在アメリカでは、23州でメディカル・マリファナが合法化され、4州でレクリエーショナル・ユーズを含めたマリファナ使用が 完全に合法化されており、現在21州が合法化に取り組んでいる最中。 2020年までには全米50州でのマリファナ合法化が見込まれており、それが実現しなかったとしても それまでにマリファナ市場は年間350億ドル(約3兆9500億円)に成長する見込み。 言うまでもなく、アメリカで最も急速に拡大しているマーケットなのだった。




アメリカにおけるマリファナというのは非常に不思議な存在で、DEA(麻薬取締局)がマリファナを ”スケジュール1ドラッグ(全く人体にメリットの無い 最も悪質な麻薬)”にクラス付けしているにもかかわらず、クリントン、ブッシュ、オバマという歴代の3人の大統領が学生時代に マリファナを吸ったと認めており、特にオバマ氏については”ポットヘッド”と指摘されるほどの常用ぶりが伝えられているほど。
3人の大統領はアメリカでは決して特殊な存在ではなく、アメリカ人ならば誰でも一度は吸ったことがあるのがマリファナ。 医療用さえもが違法であった時代から、ドラッグという意識を持たずに 人々が気軽に常用してきたのがマリファナで、 合法化の動きがここへきて大きく進展したのは そうした人々が合法化を支持する州民投票をしたため。
マリファナを吸っているというと、日本では胡散臭い職業、もしくはそれなりの世界に属する人々という ネガティブイメージが強いけれど、アメリカではベビーブーマーが学生時代からカジュアルに使用してきたドラッグ。 そんなベビーブーマー世代のマリファナ使用は、彼らの子供であるミレニアル世代の消費を上回っていることが伝えられているのだった。

ニューヨーク州では2014年にメディカル・マリファナの使用が合法化されており、 ニューヨーク市でもマリファナの取り締まり規制を緩めたことから、2011年には5万人がマリファナ使用や所持で逮捕されているのに対して、 2015年にはその数が68%減少して、1万6000人程度になっているのだった。
では具体的にどんな人々がマリファナを使用しているかと言えば、メディカル用途での使用で多いのはやはりガン患者。 それ以外は、長期的な身体の痛みに悩む人々、睡眠障害を訴える人々等。 これに対してレクリエーショナル・ユーズで使用している人はどんな人々かと言えば、 ブルックリンのヒップスターのように いかにもマリファナを吸っていそうなタイプだけでなく、 ごく普通のキャリア・ウーマン、弁護士、金融関係者から、小さな子供が居る母親まで、 特定のキャラクターや年齢層が無いとさえ言えるほどありとあらゆる人々。 特に規制が緩められ、他州で合法化が進んでからというもの、益々多くのニューヨーカーが オープンに使用するようになっているのがマリファナなのだった。

では レクリエーショナル・ユーザーがどんな時にマリファナを使用するかと言えば、リラックスしたいとき、夜眠れない時という人が多いけれど、 大変な仕事、もしくは嫌いな事に取り組む前、ジムに出掛ける前という人も多く、 マリファナがどう身体と精神状態に影響を与えるかは人それぞれ。 中には試合前にマリファナを吸っていることをオープンに語るプロ・アスリートも居るけれど、 苦手意識やプレッシャーをマリファナによって取り除くと、パフォーマンスがアップするのは良くあるケース。 とは言え、アメリカで真っ先にマリファナを合法化したコロラド州で、それ以降増えていると言われるのが交通事故。 マリファナ観光に出掛けた人々なども、ハイになって途中から自分が何処に居るかが分からなくなるケースは多いとのこと。 そんな状態なので、参加者にマリファナさえ吸い続けさせれば、 決してクレームを受けることがないのがマリファナ観光なのだった。




マリファナというと吸うイメージが強いけれど、食べるマリファナとしてはブラウニーや ライス・クリスピーはかなり以前から存在するもの。でも今ではマリファナ・ビジネスにどんどん大手企業が参入してきているので、 ロリーポップや、チョコレート、スキンケア、フレグランス等、様々なプロダクトが洗練されたパッケージで販売されているのが実情。
それ以外にもマリファナのTHCオイルを使ったマッサージを行うスパなどもあるのだった。

そんなマリファナが合法化に漕ぎ着けたのは、長年に渡って小規模業者が違法でマリファナを栽培しユーザーに サプライを続けた結果であるけれど、一度合法化されるとまず一番最初に淘汰されるのがこれらの小規模栽培者。 例えばカリフォルニア州では、一度でも違法で摘発された業者には合法でマリファナを栽培するライセンスを与えないのが法律。 ニューヨーク州では僅か5社しかメディカル・マリファナの栽培が許されておらず、その5社を選び出すための審査申し込み費用だけでも約110万円。 これはライセンスが取得できなければ失うだけのお金。 しかもライセンスを得た業者は、初年度だけで7〜9億円の設備投資をしており、 とても小規模栽培者には支払いきれない金額。加えてマリファナは室内栽培であるため、大規模な栽培施設では 年間の電気代だけでも2億円以上を要するのだった。
銀行からローンを受けようとしても、アメリカ合衆国というレベルではマリファナは今も違法なので、プライベート・インベスターが投資をしてくれる以外、 資金の調達法は無いという。
近年大手が参入してきた結果、マリファナの価格は過去2年ほどで4分の1に下がっており、その価格低下のために さらに経営不振に追い込まれているのが小規模栽培者。 でもビジネスが大手に集中するということは、インベスターにとっては確実な投資対象を探し易くなることを意味するということで、 今やマリファナ・ビジネスにはタバコ会社や製薬会社も参入を始めているのだった。
その一方で、カリフォルニアでは全コースにヘンプやマリファナを使ったテイスティング・メニューを提供するレストランが登場したり、 ネール・アートの世界ではマリファナの実物の葉っぱをネールに埋め込むのが現在トレンドになっており、 マリファナ関連ビジネスもどんどん増えて、拡大する一方なのだった。

よく日本からやってきた人に尋ねられるのが、ニューヨークのようにレクリエーショナル・ユーズのマリファナ使用が違法である州では、 どうやって人々がマリファナを入手しているか。 最も多いのは口コミで知り合いからディーラーを教えてもらうケースもあるけれど、それ以外にマリファナのサプライヤーになっているのが クラブやバーのバーテンダーやバウンサー。
今週のニューヨークではファッション・ウィークが行われていたけれど、そんなファッション・ウィークのアフター・パーティーでは 必ずといって良いほどマリファナを吸っている人が居るもの。 メディアではそんなファッション業界、およびリアーナ、ジャスティン・ビーバーといったセレブリティにマリファナを調達する ディーラーの記事が掲載されていたけれど、そのディーラーは自らが元モデル。彼女がランナー(運び屋)に使っているのもモデル達。
ルックスや身なりが良い女性だと、やはり警察の目がごまかせるようで、彼女は1週間に300万円をマリファナの取引で 稼ぎ出しているとのこと。やはり彼女も口コミのクライアントからしかオーダーを受けないとのことなのだった。

ディーラーが流通しているマリファナの一部には、合法の州から入手したものも含まれているけれど、 合法の州で購入しても違法の州に持ち込めば ドラッグ・トラフィッキング(流通)という立派な犯罪。 例え個人がマリファナ観光の残りを少量持ち帰って、所持自体は違法と見なされない程度の量であっても、 他州から持ち込めばトラフィッキングの罪と見なされるのだった。




マリファナが合法化されて、大手企業が参入してきてから変わってきたのが、 アメリカ国内のマリファナに対する考え方。 それまでは、「マリファナ常用者は30%年収が低い」、「マリファナを常用すると 40代にして脳のMRIが アルツハイマー患者に近くなる」など、ネガティブ情報で溢れていたのがマリファナ報道。
ところが合法化のロビーイングがスタートしてからは、それまで60年代のヒッピーの言い分として捉えられてきた マリファナの精神、肉体へのポジティブな効果が、医師の臨床結果で裏付けられるようになり、 長年マリファナ合法化に反対してきたドクターの中にも合法化を支持する声が高まってきているのだった。

かく言う私も、メディカル・マリファナについては考えを改めた1人。というのは、近年アメリカの医師が処方する 痛み止め薬の中毒症状を見ていると、マリファナの方が遥かに安全と思うためで、 それほど処方箋薬はジャンキー状態になるのが極めて速いのだった。 中毒になれば医師が薬を処方してくれなくなったり、保険の限度額を超えてしまい 薬代が跳ね上がって購入できなくなるのが常で、 そうなった処方箋薬中毒者が次に走るのがヘロイン。
昨今のアメリカでは安価で手に入るヘロインの中毒になる人々の多くが、 交通事故、怪我、歯科治療などで 処方箋痛み止め薬を摂取していた人々。 ニューハンプシャー州のように 全米で最も貧困層が少ない州で ヘロインが社会問題になっている背景を考えれば、 ストリート・ギャングなどではなく、ごく一般の市民が処方箋薬が原因であっという間にヘロイン中毒になっている様子が窺い知れるのだった。
それに比べるとマリファナは長期の常用でも多くの人々が人間として機能している訳で、処方箋薬よりも安全と判断せざるを得ないのだった。

それでも私はマリファナで中毒になった人を直接、間接的に知っているだけに、 完全な合法化については意見を決めかねているけれど、 世の中というのは一度動き出した流れは止められないもの。 今やアメリカだけでなく、世界各国がマリファナ合法化に動いているので、 今後マリファナが医療やビジネスにおいてどう展開したとしても、 それに無知で居る訳にはいかないと思うのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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