Jan.29 〜 Feb. 4 2018

”You're Selling Out Your Privacy ”
テクノロジー使用で 企業に提供する 個人情報&プライバシーが招く本当のリスク


私がこのコラムを書いている2月4日日曜日はスーパーボウルが行われるスーパーサンデー。 なので今週のアメリカのメディアはスーパーボウル関連のニュースに報道時間が割かれていたけれど、 実はアメリカにおいてフットボールは過去2年間、人気が下降線を辿っているスポーツ。 その理由は、プレーヤーの多くが脳に障害を受ける危険なスポーツで、親達が子供にプレーをさせたがらないのに加えて、 昨年から続いているプレーヤーによる国歌斉唱中の人種差別や警察権力に対する抗議ジェスチャーが大論議を招いていること等が挙げられているけれど、 特に 今シーズンはプレーヤーの怪我が続出した退屈なシーズンで、 その視聴率が近年最低を記録していたのだった。
加えてNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)自体も様々な理由で人々から反感を買っており、20万人を超える人々が今年のスーパーボウルのボイコットに 署名したことも伝えられているのだった。

私が今週、個人的に興味を持った報道は、フィットネス・トラッキングのアプリとして人気を博しているStrava/ストラヴァによって、 アメリカの国防機密が明かされてしまったというニュース。 ストラヴァは「アスリートのためのソーシャル・ネットワーキング・アプリ」として登場したもので、2017年度に世界中で記録された 約10億のログイン・アクティビティを提示した ”2017年グローバル・ヒートマップ” を先週末に公開したばかり。
ところが このヒートマップに、アフガニスタンに駐留するアメリカ兵のジョギング・コースを始め、 世界中のアメリカ軍の秘密基地を含む軍施設、 ソマリアのCIA本部、 そして そこに駐留する軍やCIA関係者のアクティビティが記録されていたことから(写真下)、 これが国防省にとっての一大事として警告されることになったのだった。






それだけでなく、ストラヴァはもしプライバシー・セッティングを変更しない限りは、 自分のフィットネス・データを含む個人情報が ストラヴァ・コミュニティでシェアされるというシステム。 同様の事は、MapMyRun/マップ・マイ・ランや Nike + RunClub/ナイキ+ランクラブといったアプリでも行われており、 自分のエクササイズ・アクティビティをシェアすることにより、それを通じてデジタル・コミュニティの一員に組み込まれるように デザインされているのだった。
例えばストラヴァの ”FryBy/フライバイ” というフィーチャーを使った場合、自分がジョギング、もしくはサイクリングしているルートの傍にいる 他のストラヴァのユーザーのフルネームと そのエクササイズ・ルートが通知されるというシステム。 またユーザーは簡単にデータベースにアクセスして、興味を持った別のユーザーの エクササイズ・ルートを検索できるようになっているのだった。 そのためユーザーが何処に住み、何処に通勤して、 どこで何時に待ち伏せしていたら出会えるかなども、あっさり分かるようになっており、犯罪に利用されても全く不思議ではないアプリ。

以前まで ストラヴァは、ユーザーから得たルート情報を地方自治体やそのコントラクターに譲渡していたとのことで、 その情報は全米各都市で増えている自転車専用レーン設置等に利用されてきたという。 したがって地方自治体にとっては、リサーチの手間が省ける有益なデータではあったものの、 ストラヴァがユーザーの個人情報をによって利益を得ていることが問題視され、 現在はこれをストップしているのだった。




でも現代人がテクノロジーの使用によって、様々な個人情報やプライバシーを大企業に提供しているのは 今に始まったことではないもの。 グーグル検索に始まって、GPS機能を持つ全てのディバイス、ヘルス関係のアプリ、デート・アプリなどは、 ユーザーの個人情報や個人の位置情報、ライフスタイル情報の宝庫と言われて久しいもの。
加えて、昨今ユーザーを増やしているアマゾン・エコーやグーグル・ホームに代表されるスマート・スピーカーにしても、 スピーカーというのは名ばかりで、実はマイクロフォンが家の中の様子や会話までもを記録している訳で、 そのことは、アマゾンのアレクサが犯罪の”証人”として喚問されることになり、 その録音内容の公開の圧力が 検察側からアマゾンに対して掛けたことからも明らか。

さらにアメリカでは過去数年、自分のDNA情報を「23 and me」や「Ancestry.com /アンシストリー・ドット・コム」などに 送付し、自分の祖先についての正しい情報や、その遺伝子についての情報を得るのが ちょっとしたブームになってきたけれど、 これとて顧客のDNA情報を他社に譲渡することは無い言いながらも、 研究に役立てることは公に謳っているのだった。 それをどう捉えるかは個人の価値観であるけれど、企業が自分のDNAデータを持っているということは、 そのデータが盗まれる可能性があるということ。
アメリカで健康状態を含む個人のDAN情報のデータベース化が危惧されるのは、 例えば30代、40代で心臓病や乳がんを患う可能性が高いDNA等については、それを本人が知って 健康対策をする場合は意義ある情報であるけれど、企業や政府機関がそうした情報にアクセスすれば 世界を変えてしまいかねない危険をはむもの。 企業がDAN情報を入手して心臓病やがんのリスクが低い人材のみを雇えば、健康保険料が大幅に削減できるというメリットをもたらすので、 雇用差別が生まれるのは時間の問題。同様のことは結婚、大学入試、英才教育、スポーツ・プログラム等、 様々な分野に影響を及ぼす訳で、そんなDNAエリートは学歴以上のインパクトを社会にもたらすと見込まれるのだった。




さらに言えば自家用車というものもGPS機能だけでなく、ヘッドライト、ワイパー、トランズアクション・コントロール、バロミター等のセンサーから 送られる情報、アンドロイド・オートやアップルのカープレーのセンサーやマイクロフォンが企業に有益な膨大な個人情報、及び地域情報、気象情報に至るまでを 提供する手段となっているのは言うまでもないこと。 もちろんUberに代表されるカーシェアリング・サービスを利用しても、ユーザーの行動エリアがしっかり把握されることになるけれど、特にアメリカのような車社会においては 自家用車ほど 人々のライフスタイル情報を的確に提供してくれるものはないのが実情。 したがって自家用車代を支払った上で、更にそれを運転することによって有益な個人情報を企業に提供することに異論を唱える人々が主張するのが 「その情報提供料を考慮して、車の価格を下げるべき」という意見。
もしその情報価値が正当に価格に反映された場合、 400万円の車が約280万円にまで値下がりすると見積もられているのだった。

また今週には、フェイスブックが ユーザーの社会経済的地位を自動的に察知するシステムの 特許を取得したニュースも伝えられたけれど、この特許が申請されたのは2016年7月のこと。
それによればこのシステムは、Facebookのターゲティング機能を向上させて、 より関連性の高い広告をユーザーに提供するためのアルゴリズム。 フェイスブックは、このシステムで年齢別に学歴や持ち家等の情報、フェイスブックを利用するディバイスの数や インターネットの使用時間、フェイスブックにポストされる旅行のヒストリーといった情報を分析して、 ワーキング・クラス、ミドル・クラス、アッパー・クラスの3つにユーザーを分けるとしているけれど、 これまで もっとずっとアグレッシブに個人情報を取得してはビジネスに役立ててきたフェイスブックであるだけに、 「こんなシンプルなクラス分けで済むはずがない」という見方も有力。
また、フェイスブックのユーザー情報は、同社の広告ターゲットの絞り込みだけでなく、広告主のキャンペーン戦略にも利用されるので、 やがてはユーザーが自分のライフスタイルや好みを把握した広告やキャンペーンに誘導されるままに 消費活動をするようにデザインされているのだった。 しかもその消費活動は、必ずしも健康な生活や、計画的な貯蓄に導くなどの 建設的な人生に繋がる訳では無く、広告主の利益追及を目的としたもの。 したがって自分では全く意識しないうちに、企業社会の収入源にされてしまうことを意味するのだった。

いずれにしても今の時代に確実に言えるのは、ありとあらゆるテクノロジーに個人情報を盗まれているということ。 どんなディバイスやアプリを使用する場合もプライバシー設定を逐一チェックする必要があるのに加えて、自分のDNA情報を調べたい場合や ソーシャル・メディアに旅行の写真をポストする場合でも、 それが企業にとっての有益なデータベースになっていること、そして提供した情報によって やがて自分のライフスタイルが企業にハッキングされることを自覚しておくべきなのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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