Jan. 30 〜 Feb. 05 2017

"Super Bowl VS. Politis?"
政治と切り離せない今年のスーパーボウル!?


今週日曜日は、スーパーボウルが行われるスーパーサンデー。
この日はアメリカで最もパーティーが行われる日で、ピザのデリバリーが年間で最も多い日。 とは言ってもスーパーボウル・ウォッチパーティーで最も人気のフードはピザではなく、チキン・ウィング(写真下)。 大手ピザ・チェーンでも、ピザよりもチキン・ウィングのオーダーが多いのが実情で アメリカ人がスーパーボウルの最中に食べるチキン・ウィングの数は13億。
ワカモレの量は800万パウンド、それにディップするトルティア・チップスの量は1万4000トンで、 それを300万ガロンのビールで流し込むのがスーパー・サンデー。 スポーツ・バーやスーパーマーケットにとっても年間の掻き入れ時となるのがこの日で、 アメリカ中の1億人以上が毎年のようにチャンネルを合わせる、年間最高視聴率番組がスーパーボウル。
開催地には毎年400~500億円の経済効果をもたらすと言われ、 これは1日のスポーツ・イベントがもたらす数字としては、世界最大規模であることは言うまでもないのだった。






でも今シーズンは、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のシーズン・ゲームの視聴率が過去初めて 8%もダウンしたことが伝えられた年。
その理由としては、史上最悪の大統領選挙で人々の気が滅入って、「試合を見る気になれない」という人々が多かったのに加えて、 選手による”ブラック・ライヴス・マター(黒人に対する警察の暴力に抗議する活動)”のプロテストが 国歌斉唱中に行われるなど 試合と政治が切り離せない様相を呈していたこと。 さらにリーグ側が選手の脳震盪を軽視する姿勢を貫いた結果、親たちが子供にフットボールをプレーさせない 風潮がアメリカ中で高まっていたことなどが挙げられていて、 大のフットボール・ファンを自称する私も、今シーズンほどゲームをフォローしていない年は無かったほどなのだった。

さてその今年のスーパーボウルは、当初チケットの売り上げ不振が伝えられていたものの、 蓋を開けてみれば最も安価なチケットのリセール価格が2700ドル(約30万4000円)、 平均のチケット価格が5000(約56万3000円)ドルというお値段。 今年に関しては、偽造チケットを防ぐために、スーパーボウルのロゴがサーモクロミック・インクでプリントされた ヒート・センシティブ(写真上右)なので、熱を当てれば本物か偽物かが一目瞭然になっているのだった。

スーパーボウルに勝利したチームが受け取るヴィンス・ランバルディ・トロフィー(写真上左)はティファニー製で、 これに限らずアメリカの4大プロ・スポーツのチャンピオンシップ・トロフィーは全てティファニーが手掛けているもの。 昨年パーティーで知り合ったNFL関係者の話によれば、ヴィンス・ランバルディ・トロフィーは常に 6つNFLの本社に存在しているとのこと。そのうちの1つはコミッショナーのオフィスに常駐していて、手袋をせずにトロフィーに触れることが 許されるのもコミッショナーだけ。
それ以外のトロフィーはNFL本社にディスプレーされる以外に、全米各地はもとより、今や海外でも行われる NFLのイベントのための貸し出し用となっているとのこと。このトロフィーは重さ3.2sのスターリング・シルバー製で、 お値段は2013年の時点で約5万ドル(約563万円)。 製作に4カ月を要することが伝えられているのだった。




スーパーボウルと言えば、フットボールの試合に興味が無い人でもコマーシャルは見たがることで知られるイベント。 今年は30秒のTVCM放映料が500万ドル(約5億6300万円)に達しているのだった。
でもフォーブス誌によれば、スーパーボウルにおけるCM放映は通常の番組よりも広告主にとっては割安になっているとのこと。 それと言うのも、スーパーボウルは全米の1億人以上が視聴するので、広告が1人当たりの消費者にリーチするコストは4〜5セント。 これに対して通常の番組は200〜700万の視聴者で、30秒のTVCMの放映料が20〜50万ドル(約225〜563万円)。 したがって広告が1人当たりの消費者にリーチするコストは8〜10セントと、スーパーボウルの広告の2倍。
加えてスーパーボウルでは、人々が熱心にTVCMをチェックするけれど、通常の番組ではCMの最中にチャンネルを替えたり、 スマートフォンでメッセージをチェックしたり、冷蔵庫に食べ物を取りに行く人々が多いことを考えると、 スーパーボウルにおけるCM放映は決して広告バジェットの無駄遣いではないと言えるのだった。
それだけでなく、広告スポンサーはスーパーボウルのチケット入手で優遇されるというメリットもあるので、 毎年NFLがどんどん広告料を吊り上げても、広告主が減ることが無いのは明らかなのだった。

スーパーボウルの話題のTVCMは、試合中に放映される以前に、様々な報道番組でプレビューとして報じられ、 それがソーシャル・メディア上でバズを生み出すので、実際に放映される以上の 効果や物議を醸すケースが多いけれど、 今回のスーパーボウルで、最も話題と物議を醸しているのが、 バドワイザーで知られるアンハウザー・ブッシュ社の短編フィルム仕立ての1分間のCM(写真上)。
これは、アンハウザー・ブッシュ社の共同設立者、アドルファス・ブッシュが1857年にドイツからの移民として アメリカにやって来て、後にミズーリ州セントルイスに渡り、やがてはアメリカで最も人気のビール、 バドワイザーを生み出すに至るであろうストーリーを描いたもので、そのタイトルは”Born the Hard Way / ボーン・ザ・ハードウェイ”。
アンハウザー・ブッシュは同CMの製作には1年以上を要したとコメントし、 決してそれが新大統領の移民政策に反発するものではないとしているものの、 トランプ支持者から見れば、このCMは移民の受け入れをサポートするアンチ・トランプのメッセージ。 なので、トランプ支持者は「もうバドワイザーのような政治的プロパガンダのビールは飲まない」と 怒りを露わにしているけれど、逆にアンチ・トランプ派、及び民主党支持者を含む移民受け入れ派にとっては、 このCMに描かれる 移民がハードワークでアメリカン・ドリームを達成する姿は「これぞアメリカン・スピリッツ!」と共鳴できるもの。

一部では、「ドナルド・トランプがこのCMに過剰反応して、どんなツイートをするか?」と見守る声も聞かれるけれど、 一見、トランプ支持者からの反感を買って損をしているように見えるこのCMは 実は広告力に長けたアンハウザー・ブッシュ社がきちんとリサーチを行った上で製作しているもの。
というのも、大統領選挙でトランプに投票した共和党支持の州では、バドワイザーを飲む州民は僅か6.6%。 これに対して民主党支持の州では12.6%の人々がバドワイザーを飲む傾向にあり、 そもそも共和党支持者よりも遥かに可処分所得の高い民主党支持者の消費を煽る広告は アンハウザー・ブッシュ社にとっては極めて理にかなったターゲット・マーケティングになっているのだった。




このように今回のスーパーボウルは政治とは切り離せないイベントになっていたけれど、 大統領選挙がスタートしてからというもの、何においても同意したことが無い 共和党、民主党支持者が、唯一同じ意見になっていたのが、スーパーボウルでどちらのチームに勝利して欲しいかという アンケート調査。
それによれば、今回が9回目のスーパーボウル出場で、5回目のチャンピオンシップに輝いたニューイングランド・ペイトリオッツの 勝利を望んだ共和党支持者は23%、民主党支持者は28%。 これに対して今回が18年ぶり2回目のスーパーボウル出場となるアトランタ・ファルコンズの勝利を望んだ共和党支持者は58%、 民主党支持者は54%。
こんな数値が得られるのは、そもそもアメリカ人の多くがニューイングランド・ペイトリオッツを嫌っているため。 今シーズン、クォーターバックのトム・ブレイディが4試合出場停止処分となった”デフレイトゲート(ボールの気圧を故意に調節した疑惑)”や 2007年のニューヨーク・ジェッツに対する”スパイゲイト(ジェッツ側のサインを不当に読んでいた疑惑)”など、 ペイトリオッツに付き纏うのが、スポーツマンシップに反する行為で勝利しているというイメージ。 このためニューイングランド・ペイトリオッツがスーパーボウルに出場するたびに 対戦相手を応援するアメリカ人が圧倒的に多いのはフットボール・ファンなら誰もが知る事実になっているのだった。

そのペイトリオッツの熱烈なファンとして知られるのがドナルド・トランプで、オーナーのロバート・クラウスと親しいだけでなく、自らの 政権運営のスタイルをペイトリオッツのコーチ、ビル・ベリチックのコーチング・スタイルに例えているほどであるけれど、 トランプを支持するあまり、モラルや合衆国憲法に対する見解までを新大統領の言う通りに変えてしまう人々でも、 唯一トランプの意見の影響を受けなかったのがスーパーボウル。
したがって「政治と切り離せない」と言われる今回のスーパーボウルであるけれど、 少なくともトランプ支持者においては、唯一その盲目的なトランプ支持を切り離して、民主党支持者と 意見をシェアしたイベントが 今年のスーパーボウルと解することが出来るのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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