Jan. 16 〜 Jan. 22 2017

"Women Rise Up!"
大統領就任式の翌日のヒストリカル・イベント!
グラスルーツ・ムーブメントから発展した世界規模のプロテスト



今週のアメリカで、文句なしに最大のイベントになったのが、大統領就任式の翌日、1月21日土曜日に、アメリカ国内はもとより、 世界各都市で行われた ”ウーマンズ・マーチ”。 メジャー・メディアがこぞって「規模もエキサイトメントも大統領就任式を遥かに超えた」と評したのが同イベント。
世界7大陸の70か国で、700のマーチ&プロテストが行われたコーディネート・イベントは、 大統領選挙翌日に、ドナルド・トランプ当選に失望した一般女性による フェイスブック・ポストからスタートしたグラス・ルーツ・イベント。 政治色は抜きにして、 トランプ政権下で危ぶまれる女性の権利を守るために 女性達が団結して立ち上がり、その存在を示すべきという意図と呼びかけからスタートしたものなのだった。

その参加者が増えるにしたがって、同企画に様々な女性グループ、政治団体が合流。 加えてそのプロセスで、トランプ政権下において女性の権利同様に危ぶまれるLGBTコミュニティの権利、 環境問題、移民問題等のアクティビスト達が加わり、 老若男女が参加する大々的かつ、国境を越えたイベントとなったのがこのマーチ。 同イベントの世界中の総参加者数は300万人を超えており、 文字通りグローバル・イベントになっているのだった。

私はマンハッタンに20年以上暮らしているけれど、 ファースト・アヴェニュー、セカンド・アヴェニュー、レキシントン・アベニュー、マディソン・アベニュー、フィフス・アヴェニューが同時に閉鎖されるようなイベントが行われたのは これが初めて。ヤンキーズの優勝パレードや90年代の湾岸戦争帰還兵のためのパレードを遥かに上回る数の人々が繰り出した メガ・プロテスト。地上の交通が乱れたのはもちろん、地下鉄まで遅れるという有り様で、 土曜日夜のビル・デブラジオ市長の発表によれば、ニューヨーク市だけで40万人がこれに参加しているのだった。











イベントの中心地となったのは やはりワシントンDCで、 その参加者数は、大統領就任式の参列者数の約2倍と言われる50万人。 当初20万人と見込まれていた参加者数を大きく上回ったため、 ワシントンDC警察は その抗議デモのルートを前日に大統領就任パレードが行われた ペンシルヴァニア・アヴェニューに移動させなければならなかったほど、
このプロテストに参加するために、全米からチャーター・バスや飛行機で女性たちが集まった様子は、参加者のソーシャル・メディア・ポストで 伝えられてきたけれど、土曜日のマーチの最中にはあまりに多くの人々が同時に スマートフォンを使ったために、現地のフリーのWiFiがパンク状態で麻痺したことが報じられているのだった。

前日の大統領就任式のプロテストでは、器物損壊などの容疑で230人の逮捕者がワシントンで出ていたけれど、 土曜日のマーチはそれより遥かに多くの人々がプロテストに繰り出したものの逮捕者が出ない 平和的なイベント。
シカゴでも30万人、ボストンで15万人、シアトル、デンバーでそれぞれ10万人、ロンドンで20万人を集めたウーマンズ・マーチであるけれど、 最大の参加者を集めたと言われるのはロサンジェルス。 75万人が繰り出したプロテストはロサンジェルス史上最大のもので、ロサンジェルスに住む友人も 「こんなイベントは見た事が無い!」と驚く規模になっていたのだった。 それ以外にも同様のプロテスト&マーチはサンフランシスコやセントルイス、アイルランドのダブリン、イタリアのローマ、ギリシャのアテネ、スウェーデンのストックホルム、オーストラリアのメルボルン、 デンマークのコペンハーゲン、オーストラリアのウィーン、ハンガリーのブダペスト、インドのニューデリ、日本の東京など、数えきれないほどの街で行われていたもの。
でもこのイベントは、女性団体なら何でもWelcomeかと言えばそうではなく、 中絶反対派の女性グループについては主宰者側から参加を断られていることが伝えられているのだった。









アメリカ国内でこのプロテストに加わった女性の間で目立っていたのが、母娘の親子2代で参加しているケース。 そんな母親たちが口々に語っていたのが、「自分達が向上させてきた女性の地位を娘たちに引き継いでほしい」、 「娘たちに女性が団結する力の強さを感じてほしい」、「常に女性としてのプライドを示すことを学んでほしい」といったコメント。 その背景にあるのは 女性蔑視発言を繰り返し、複数の女性による性的嫌がらせの訴えを受けながらも 白人女性の過半数の得票を獲得して当選した新大統領政権下における政策及び、女性蔑視思想を危惧するのもさることながら、 その選挙戦中から新大統領を盲目的に支持するあまり、女性の権利や地位を自ら落とすような 発言や考えをするようになってしまった一部の女性達に対する危機感や失望も含まれており、 多くの女性達が それを覆す団結とパワーにフォーカスしていた様子が見られていたのだった。

ウーマンズ・マーチとして始まったものの、男性の参加者が非常に多かった同イベントであるけれど、 中でもメディアが注目したのはイヴァンカ・トランプの夫、ジャレッド・クシュナーの弟で、インヴェストメント・バンカーの ジョシュア・クシュナーがワシントンのマーチに参加していたこと。 でもクシュナー家はビル&ヒラリー・クリントンに多額の寄付をしてきたサポーターとして知られるだけに、 決して不思議ではない光景。
男性参加者がマーチに加わる理由については、自らがゲイでLGBTコミュニティをサポートするためであったり、 娘が育っていく社会に女性蔑視や男女の給与格差が存在するべきではないと考える父親たちも居れば、 自分の母親や妻の女性としての権利を守るべきと考える男性など様々。

男女を問わず「政治集会に参加したのはこれが初めて」という人々が非常に目立っていたけれど、 そんな参加者の多くが男女を問わすに掲げていたのが 「Women's rights are human rights (女性の権利は人権)」というフェミニスト・スローガン。 このスローガンのオリジナルはチリの法学者、セシリア・メディナであるけれど、 このセンテンスを世界的に有名にしたのが 1995年、北京で行われた国連世界女性カンファレンスで、当時アメリカのファースト・レディであった ヒラリー・クリントンが180ヵ国の国連代表を前に、その開催国である中国を含む世界各国の政府による女性に対する差別、虐待、不当な扱いに対する 抗議声明として語った歴史的なスピーチ。
まさかこのスローガンが、その22年後のアメリカで 抗議活動のスローガンになるとは、 ドナルド・トランプ大統領誕生同様、誰も想像出来なかったことなのだった。










全米各都市で行われたウーマンズ・マーチには、マドンナ、アリシア・キーズ、ジュリア・ロバーツ、シャリース・セロン、クリスティン・スチュワート、 ブレーク・ライブリー、スカーレット・ジョハンソン、ナタリー・ポートマン、 マイリ−・サイラス、ケイティ・ペリー、ジョン・レジェンド、ジェイク・ジレンハール、ジェシカ・チャステイン、シェール、ヨーコ・オノ、エマ・ワトソン、 ヘレン・ミレン、シンシア・ニクソン、オリヴィア・ワイルド、アメリカ・フェレラ、リナ・ダンハム等、数えきれないほどのセレブリティが姿を見せていたけれど、 その数と質は大統領就任式と大きなコントラストを見せていたもの。
またマーチには姿を見せていないものの、NBAのスーパースター、ルブロン・ジェームスやテイラー・スウィフトなどが、 ソーシャル・メディアを通じてウーマンズ・マーチを支持&称賛するメッセージを発信する様子も見られているのだった。


一方、大統領就任式から一夜明けて、ドナルド・トランプ本人及び、その報道官がバッシングしたのが、 大統領就任式の参列者数を過去最低に近い25万人と見積もったメディア。 この数字は日頃トランプ支持の報道を行っている右寄りのメディアさえも報じていたもので、 宣誓式が行われていたポディウム側から見れば埋まって見えるナショナル・モールも、逆から眺めるとガラガラだった様子は、 ライブ中継の映像でも捉えられていたもの。
しかしながら、トランプ陣営はこの人数を その6倍の「少なくとも150万人」であると主張。 就任初日からメディアの報道をフェイクと決めつける発言を大統領本人、及び報道官がそれぞれに行っているのだった. (写真上右は、2009年、180万人が参列したのオバマ氏の就任式で、一番手前のエリアまでぎっしり参列者が詰めかけている状態。 写真上左は今回の就任式中のスナップで遥か先までガラガラの様子が見て取れるもの。)

そんな嘘つき呼ばわりされたメディアに同情してか、土曜日の夕方にはワシントンDCの地下鉄が大統領就任式が行われた1月20日金曜日、 午前11時の地下鉄利用者の数を発表しているけれど、その数は19万3000人。 2009年、180万人の参列者を集めたのオバマ大統領の就任式の 同じ時間の利用者の数、51万3000人に比べると40%以下で、 その数字に 翌日のプロテストに参加するためにワシントン入りした女性達の数が含まれていることを思えば、 メディアの見積もりの方が正しいと判断するのが妥当と言えるもの。
しかしながらドナルド・トランプ新大統領にかかると、彼が気に入らないものは、 事実でも、証拠でもデータでも、全てがフェイクとして攻撃を受けるのは選挙戦中から 続いてきたこと。就任式直前にも、 彼が過去40年で 最低の支持率で就任式を迎えた大統領であるというメディアのアンケート調査結果を 「フェイク」と断言して攻撃したばかり。
アメリカのメディアは選挙戦の最中から この理不尽を味わってきたけれど、 これからの4年間に その痛みをシェアすることになるのが トランプ氏本人、もしくはトランプ政権を相手に交渉や折衝を進めなければならない諸外国の要人達で、 トランプ支持者が彼の貿易&外交手腕に大きく期待するのは、 そんな理屈や常識が通用しないだけでなく、折れることを知らない断固たる強硬姿勢なのだった。

今回の大統領就任式のTVの視聴率は、約3000万人。 この数字も2009年のオバマ氏の就任式に比べると700万人少ないけれど、 1月21日のウーマンズ・マーチについては 大統領就任式関連のプロテストとしては文句なしにアメリカ史上最大のもの。 新大統領のエゴを満たす規模になっているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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