Dec. 26 〜 Jan. 1 2017

"Pop Culture and Death…"
セレブリティの死とポップ・カルチャー


アメリカ国民の多くが早く過ぎて欲しいと願っていた2016年が終わって、今日から2017年となったけれど、 2016年最後の週にも 同年を象徴するようなショッキングなセレブリティの死去のニュースが続いたのは周知の事実。
まず先週日曜にジョージ・マイケルが、そしてその2日後にキャリー・フィッシャーが、そしてその翌日に彼女の母親でハリウッド・レジェンドの デビー・レイノルズがこの世を去ったニュースはこの週のアメリカの最大のニュースになっていたのだった。

この立て続けのセレブリティの死を受けて俳優のチャーリー・シーンが行ったのが上の「Dear God; Trump next, please」というツイートで、 これはアンチ・トランプ派を大笑いさせた一方で、トランプ支持者に顰蹙を買っていたのは言うまでもないこと。

そんなセレブリティ死去後のツイートが物議を醸していたのも今週で、 例えば、コメディアンのスティーブ・マーティンはキャリー・フィッシャー死後に ”When I was a young man, Carrie Fisher was the most beautiful creature I had ever seen. She turned out to be witty and bright as well.(自分が若かった頃、キャリー・フィッシャーは最も美しい存在であったけれど、 彼女は同時にウィットに富んで、頭脳明晰でもあった)" というメッセージをツイート。
多くのアメリカ人はこのツイートの何処が悪いのか分からないという意見で、それは私も同様であったけれど、 ツイッターというメディアが生活の一部となり、他人の意見に異様なまでに過敏になっている一部のアメリカ人にとっては、 このツイートがキャリー・フィッシャーの若かりし時代を外観だけのオブジェとして扱っているというオフェンシブなものとして捉えられ、 スティーブ・マーティンのアカウントには その非難のツイートが殺到。 その結果、彼はほどなくそのツイートを削除しているのだった。




その一方で、キャリー・フィッシャーの死の直後に直ぐにツイートをしなかったことで、やはりツイッター上で責められたのが彼女の1人目の夫である シンガーのポール・サイモン(写真上左)。 そのポール・サイモンがツイートしたのは彼女の死後24時間が経過してからのことだったけれど、 普通ならばキャリー・フィッシャーを親しく知る人ほど、ツイートのようなソーシャル・メディアを通じてではなく、 個人的に、そして深い意味合いを込めて家族に弔意を表するべきであるし、それが出来るまでに24時間以上を要したところで不思議ではないもの。 ところが そんな状況が許されないのが今の ”RIP(Rest in Peace)ツイッター・カルチャー”。
前述のスティーブ・マーティンのツイートにしても、生前、意地悪なツイートにクールに対応していたキャリー・フィッシャー本人だったら 絶対に腹を立てないような内容であるけれど、 そんな本人を全く知らないツイッター・ユーザーが勝手に悪意で解釈してバッシング・ツイートを寄せていた訳で、 こうした人々はキャリー・フィッシャーのファンというよりも、他人のツイートの粗探しをして、自分の人生の怒りや フラストレーションを吐き出す矛先を探しているかのようにさえ見受けられるのだった。

そうかと思えば、今週にはジョージ・マイケル(写真上右、右側)死去のニュースに対して、それを勝手に 同じ頃にポップシーンに登場した カルチャー・クラブのボーイ・ジョージ(写真上右、左側)だと勘違いした女優のサラー・ミシェル・ギラーが “Do you really want to hurt me? I guess you do 2016, #ripboygeorge.” というツイートをして、本当は誰のファンなのか疑わしい様子を露呈していたけれど、 我先に追悼メッセージをツイートして、 パブリシティを得ようとするのはセレブリティも同様という印象なのだった。




ジョージ・マイケルの追悼報道で多くのアメリカ人が気づいたのが、彼がポップ・ミュージック界にデビューしたグループ、 Wham!を、ニュース・キャスターやコメンテーターが普通に「ワム」と言わずに「ワァム!」とエクスクラメーション・マーク(ビックリマークのこと)を 意識して発音していたこと。 これは2016年に公開された映画「デッドプール」で主演のライアン・レイノルズが語っていた台詞に影響されたであろうもの。
2016年の映画興行成績で、第5位にランクされる大ヒットとなった「デッドプール」に Wham!のヒット曲「ケアレス・ウィスパー」が使われていたことが、 彼の死を一層ショッキングなニュースにしていたという指摘も一部で聞かれるけれど、私もそれには全く同感。 「デッドプール」を観るまで、Wham!やジョージ・マイケルの存在を忘れていた人々が非常に多かったのは紛れもない事実なのだった。

その「デッドプール」は、昨日ブランチをしたアメリカ人の友達の間で、今年のベスト・ムービーの1本に選ばれていたけれど、 そのブランチの席でスウィッチが入ってしまった話題が、 ビジネス・インサイダー誌が選出した 歴代の映画主題歌トップ5のリストについて。
アメリカと言えば、映画、音楽の世界市場シェアの半分を占める巨大マーケット。 人口比率を考えると、アメリカ人がいかに映画と音楽にお金と関心を払っているかが窺い知れるけれど、 歴代の映画主題歌トップ5ランキングには、そんなアメリカ人がこだわる映画と音楽の双方の要素が入り組んでいるとあって、 そのランキングに同意できない友人たちと真剣にな論議が始まってしまったのだった。
私を含め友人たちが気に入らなかったその歴代映画主題歌のトップ5は以下のようなランキング。

No.5

“Footloose / フットルース” 『フットルース』  by ケニー・ロギンス

No.4

“Ghostbusters / ゴーストバスターズ” 『ゴーストバスターズ』  by レイ・パーカーJr.

No.3

“Stayin’ Alive / ステインアライブ” 『サタデー・ナイト・フィーバー』  by ビージーズ

No.2

“Mrs. Robinson / ミセス・ロビンソン” 『卒業』  by サイモン&ガーファンクル

No.1

“Eye of the Tiger / アイ・オブ・ザ・タイガー” 『ロッキー3』  by サバイバー





私たちがビジネス・インサイダーのトップ5が気に入らないのは、 まず「フットルース」、「ゴーストバスターズ」については、トップ20に入っていても構わないけれど、トップ5であるべきではないという意見。 「サタデー・ナイト・フィーバー」については、同映画を象徴するのは、同じビージーズのヒット曲でも ジョン・トラヴォルタのダンスシーンで知られる「You Should Be Dancing/ユー・シュッド・ビー・ダンシング」だと思うため。
映画「卒業」についても、オープニングで流れる「Sound of Silence/サウンド・オブ・サイレンス」の方が、「ミセス・ロビンソン」よりも印象深い音楽と言えるのだった。
そしてNo.1の「アイ・オブ・ザ・タイガー」は、トランプからジョージ・W・ブッシュまで、共和党の歴代候補がことごとく選挙キャンペーンに使用しては既に解散したサバイバーのメンバーから クレームを受けていた楽曲。 すなわち共和党候補者が好むテーマソングというイメージがあるけれど、友人と私にとって『ロッキー』という映画を象徴する主題歌で一致したのは それよりも ビル・コンティの「Gonna Fly Now/ゴナ・フライ・ナウ」。リングでの格闘シーンは もちろんのこと、ロッキーがジョギングをするシーンなど、映画のシーンをまざまざと思い起こさせるのがこの楽曲。 私が10年ほど前にフィラデルフィア美術館を訪れた時にも、かの有名な同美術館正面のロッキー・ステップ(階段)を上っている時に 頭の中でガンガン鳴っていたのが「ゴナ・フライ・ナウ」。 『ロッキー』という映画が封切られて40年が経過したけれど、フィラデルフィアを訪れた人々が、未だに早朝にこの曲を聴きながらジョギングをして、 ロッキー・ステップを駆け上がってガッツポーズするという様子にも 『ロッキー』という映画と、この楽曲のアイコニックさが表れていると思うのだった。

でも友人達と私が同ランキングを最も気に入らない理由は、2016年に死去したもう1人のスーパースター、 プリンスの「パープル・レイン」が入っていないため。 私達の考えでは映画の主題歌というのは、 映画の感動や意味合いを高める楽曲、その曲を聴いただけで映画のシーンを思い出すような映画を象徴する楽曲。 その意味でプリンスの「パープル・レイン」ほどこれらの条件を満たしている名曲は無いというのが私たちの意見なのだった。
実際この曲は街中で流れているのを聞くのと、映画の中で同曲のプリンスのパフォーマンスを観るのとでは 全くインパクトが異なるもの。私は映画館でこれを歌うプリンスを観て、曲の後半で涙がボロボロ出てきて、とにかく感動したのを覚えているけれど、 逆にプリンスが日本に来日して、彼のライブ・パフォーマンスで同曲を聴いた時は、 映画ほどは感動しなかったことを覚えているのだった。
プリンスは「パープル・レイン」でオスカーのベスト・オリジナル・ソング・スコアを受賞しているけれど、 同じくオスカーの主題歌賞を受賞していて、このトップ5に入るべきという意見だったのが、 エミネムの自叙伝的映画『エイトマイル』の主題歌「Lose Yourself/ルーズ・ユアセルフ」と、 地味ながらも素晴らしいアイルランド映画 『ワンス』の主題歌、「Falling Slowly / フォーリング・スローリー」なのだった。

いずれにしても、2016年はデヴィッド・ボウイ、プリンス、ジョージ・マイケルなど、私がかつてコンサートに出掛けたミュージシャンが次々と死去して、 時代の流れや年齢を重ねていることをポップカルチャーの視点からも思い知らされたけれど、 死というコンセプトは、生きている時間を大切にしなければ というリマインダーでもあるもの。
死というデッドライン(締め切り)が無かったら、人間は生きている有り難味を感じることは無いと思うし、 もし何時まででも生きられたら、人間は夢や目標を定めることも忘れてしまうと思うのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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