Nov. Week 4, 2016
★ "Today I'm Thankful For…"
サンクスギヴィングのスペシャル・サンクス


今回のこのコーナーの掲載のために、お応えしていたお問い合わせがあったのですが、ふと考えると このコラムをアップする11月24日はアメリカで最大のホリデイであるサンクスギヴィング・デイ。 家族や友達とターキー・ディナーのテーブルを囲むのがこのホリデイですが、日本語で”感謝祭”と訳される通り、 この日は何かに感謝するべき日。 なので、この日の朝には自分を取り囲む様々なものに感謝すると同時に、アメリカに住む親友にも その長年のフレンドシップを感謝するテキスト・メッセージ(ショート・メール)を送付するのが 私の毎年ルーティーンになってきましたが、今年はそれに特別な思いがあるので それについて書かせていただこうと思いました。

私にとってその親友は 日本人以外で初めて出来た親しい友達で、ニューヨークに住み始めたばかりで 未だ英語で世間話や友達会話がろくに出来なかった私が 唯一コミュニケーションに全く問題が無かったのが彼女だったので、そもそも私たちは気が合っていたのだと思います。 お互いに親元を離れてニューヨークにやってきた私たちは、それぞれの母親がNYにやってきたときに紹介しあったりして、 私の母もその親友のことが大好きになりましたし、私も彼女のお母様のことをすぐに大好きになってしまいました。
その彼女のお母様は 数年前から体調を崩していて、お見舞いに行くにはあまりに遠い国に住んでいたので、 親友に会う度に いつもお母様がどうしているかを尋ねていましたし、 社交辞令でなく 本当にお母様の回復と幸せをずっとお祈りしていたので、少し前に親友からお母様が他界したニュースを知らされた時には 非常にショックで、彼女のお母様の笑顔を思い出すたびに涙が出る状態が続いていました。

ふと考えると私は親友のお母様に合計3回しか会ったことが無くて、最後に会ったのは18年も前のこと。 にも関わらず、私がお母様のことをとても大事に思ってきたのは、私の親友をこの世に産み出してくれたからという理由もさることながら、 私が生涯で最も多くのことを学んだ時間を一緒に過ごしたため。
それは、私の親友が長男を出産した直後にお母様がNYにいらしていた時のこと。 当時 写真撮影を得意にしていた私は、生まれたばかりの友達のベイビーの写真を撮影して、お母さまが帰国する際に持たせてあげようと思い、 友人宅を訪ねたところ、友人は 私を家に迎えてから直ぐに仕事に出かけなければならず、 お母さまと、生まれたばかりのベイビー、そして私の3人はそれから2時間ほどを一緒に過ごすことになりました。 でもお母様はスペイン語しか話さず、私はスペイン語が理解できず、もちろんベイビーは喋れないということで、 共通の言語が無い状態の2時間。 なので全くと言って良いほど会話をせずに ただお互いにニッコリ笑って見つめ合っていただけでしたが、 写真を撮り終わって 帰ろうと思えば何時でも帰れる状態だった私が 一緒に時間を過ごしていたのは、 その場のほんのりとした幸せな雰囲気を心から楽しんでいたためでした。

3人でお互いを見つめ合って過ごした2時間から、私はお母様が生まれたばかりのベイビーと同じようにピュアな心の持ち主で、 周囲の人々に常に深い思いやりを注いでいることを実感しましたし、 言葉によるディストラクションが無い方が 深いコミュニケーションが取れるということ、すなわち言葉によるコミュニケーションの無力さも感じました。
それだけでなく 愛情や人生、家族について様々なレッスンを学んだのもこの時で、 私にとってその2時間は忘れられない貴重な思い出となっただけでなく、 思い出すたびに新しいことを教えてくれる経験にもなりました。




親友はお母様の死去について他の人よりも先に私に伝えてくれましたが、その理由は親友がお母様の死後、ベッドサイドのテーブルの引き出しから、 彼女と私が一緒に写った写真を見つけたためで、私が離れていても彼女のお母様のことを思っていただけでなく、 お母様も私のことを思っていてくれたことは、常日頃から親友から聞いてはいたものの、それが本当だったことを感じて心が温まる思いでした。

そんな彼女のお母様と過ごした2時間から私が得た教訓の1つは、人に備わるそれぞれの魅力は自分らしく振る舞うからこそ発揮されるということ。 私の親友は社交的で美人で 人気者タイプですが、親友のお母様は 楽しい雰囲気を好むものの、その様子を物静かに眺めているのが好きな女性で、 自己主張は殆どしませんでしたが、逆に私は彼女の何も言わずに おおらかに微笑む様子に心が洗われるような思いや、安心感を覚えました。 また身勝手さのかけらも無いような優しさからは 人間としての芯の強さが感じられて、そんなお母さまと時間を過ごしてからは、 自分らしく毅然と、そして自然に振る舞うことこそが 最高の社交術であると考えるようになりました。

またお母様と私の関係を思い出すにつけ、人と人との繋がりというのは 会う頻度や、一緒に過ごす時間の長さ、共通の友人の数などで深まるものではなく、 たとえ短時間でも、本当に好きなもの同士が意味のある時間を過ごして深まるものだということも悟りました。 それを学んでからは、意義深い出会いを大切にして 与えられた機会を有益に使うことを心掛けるようになりましたし、 人生の中で誰が 本当に自分が求めているものに気付かせてくれるか、それを掴むチャンスを与えてくれるかは分からないだけに、 たとえ2度と会うことは無いと思う人とでも オープン・マインドに会話やコミュニケーションをするようになりました。

世の中には 自分の周囲に居る人や、一緒に過ごす時間が長い人が友達だと思い込んで、 頭を冷やしてみれば さほど好きでもない人とストレスや不満を感じながらも付き合う人も居れば、 友達と一緒のアクティビティをソーシャル・メディア上でアップすることが 社交だと思って空虚な時間を過ごす人も居ますし、誰とでも上手くやっていこうとするあまり、無理に時間を割いては八方美人的な社交努力をする人も居ます。
でも誰にとっても1日は24時間しかなく、睡眠、仕事、食事、みだしなみ、 優先して行わなければならない様々な物事への時間を考慮すると、生活の中で自分のために割ける時間は本当に限られています。 そして人生がいかに心豊かに過ごせるかは その時間に掛かっていると言えますが、私はその限られた時間において 人はイソップ物語のアリとキリギリスの双方であるべきだと思っています。 すなわちアリのように将来に備えて、勉強をしたり、エクササイズなどの健康管理をしたり、ライフワークや目標を掲げて努力するべきである一方で、 キリギリスのように家族や友達と一緒に楽しく過ごす時間も持つべきだと考えています。

そうなると ”社交=人間関係” に割ける時間は決して多くはありませんが、自分と合わない人、好きになれない人とは どんなに努力しても、上手くやっていけない反面、 本当に自分の心に栄養を与えてくれる人々となら エフォートレス(努力せず)に気持ちが通い合えるものです。 したがって自分にとっての正しい人間関係から 短い時間でも様々なことを学んで、その相手の中に自分のべスト・インプレッションを残す努力をする方が、 ダラダラと無意味で空虚な時間を過ごすよりも、遥かに絆が深まるものだと私は信じています。
実際、私の人生において 短時間しか一緒に過ごしたことが無い人が私を覚えていてくれて、それによって助けられたことや、優遇されたことは何度もありますし、 逆にこれまでに裏切られた人や、嫌な思いをさせられた人は、長く時間を過ごしていても どこか好きになれない人や、 信用出来ないと思っていた人ばかりです。 自分の過去を振り返って、何故自分が信用できない人や 好きになれない人と友達付き合いをしていたかと言えば、義理、体裁などが絡んで 自分に正直になれなかった結果で、 悪口を言ったり言われたりするのも交友関係のうちだと思い込んでいたことさえありました。

そんな混迷状態の時に、「こんな人達を友達だと思って生きていたら、私はダメになる」と考えて、 自分にとって無益な人間関係を払拭する決心をした際にも、親友のお母様の自然体で人を引き付ける魅力や、 人を受け入れる包容力は私にとってのインスピレーションになりました。 それというのも、当時私は友達だと思っていた人たちと何十時間一緒に過ごしたか思い出せないほどでしたが、 私にとっては僅か3回しか会っていない親友のお母様の方が、 遥かに心が通っていると思える存在であったためです。

そんな風に私が人生で壁にぶつかった際に、お手本のように思い出してきたのが親友のお母様で、 その感謝の気持ちから、私も何らかの形で誰かの人生に インスピレーションを与えてあげられるような存在になりたいと考えるようになりました。
過去のQ&Advのアドバイスの中にも親友のお母様の存在にインスパイアされたものがあるだけに、 今年で丸4年続けてきたこのセクションにも そのスピリッツが生きていると私は思っています。
なので 今年のサンクスギヴィングは、親友のお母様が与えてくれた様々なインスピレーションや教訓、そして その深い愛情に感謝をする日と位置付けて、このコラムを書くことにしました。
Happy Thanksgiving!

Yoko Akiyama

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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