Mar. Week 2 2018
★ "How to Fix Stage Fright?"
"プレッシャーに強い人間になれるのでしょうか?"



秋山さま、毎日サイトの更新と、このコーナーをとても楽しみにしています。
私にはティーンエイジャーの娘が居ますが、、 娘は私と違って 運動神経が良く、あるスポーツの優秀なプレーヤーで、 地区の代表に選ばれたり、何度もキャプテンを務めたりしています。
ところが、一度肝心なところでミスをしてから自信が揺らいでしまい、 同じようなプレッシャーが掛かる場面での失敗が続いてしまいました。 そのせいで、チームの要だった娘に 「プレッシャーに弱い」というレッテルが貼られるようになり、 益々娘がプレッシャーを感じて悩んでいます。

プロのスポーツ選手などは、そういう苦難を乗り越えて強くなるのだと思いますが、 娘はそこまでは行かないので、コーチが付きっ切りで「どうやったら そういう場面で強くなれるか」などを教えてくれることも無く 困っています。 何か秋山さんからアドバイスを頂けないかと思ってメールをしてみました。 お忙しいところ恐縮なのですが 、娘を思う親のためと思って何かお知恵を授けていただけたらと思います。 よろしくお願いします。

- F -


秋山曜子様、
CUBE さんのウェブサイトの長年の読者です。最初にアクセスしたのは大学時代でした。 私も是非ご相談に乗って頂きたくてメールをしています。
私の親友が結婚することになって、スピーチを頼まれました。 私の結婚式でも、その親友がスピーチをしてくれたので、私に頼んでくれるのは当然と言えば当然なのですが、 私はあがり症で 人前で話すのがとても苦手で、今から既にそのことを考えると不安になる情けなさです。 以前、人前で ごく短い紹介をことをしたことがあるのですが、その時も「マイクを持つた手がブルブル震えていた」と 指摘されて、ますます人前で喋るのが怖くなってしまいました。
こういうプレッシャーに対処する方法はあるのでしょうか。 あまりの緊張で、スピーチの最中に呂律が回らなくなることを心配しています。
何かアドバイスをしていただけたら とても嬉しいです。 これからも応援しています。頑張って下さい。

- K -





今回は、たまたまFさんと、Kさんから似たような内容のご質問を頂いたので、一緒にお答えすることにいたしました。
私が スポーツで最初に味わったプレッシャーは、小学校時代の運動会のリレーでした。 私は当時、脚が速かったのでリレーのスターターかアンカーを毎回任されていて、 「バトンを落としたらどうしよう」、「スタートで躓いたらどうしよう」と 心配するあまり、 運動会前夜は緊張して眠れない思いを味わっていました。 周囲は てっきり 私が運動会を大好きなもの と思い込んでいましたが、 私が本当に楽しめたのは最後の玉入れや綱引きくらいでした。
でも短距離走というのは、あっという間に終わってしまう競技ですし、ただ夢中に走るだけなので、 私が 本当の意味での スポーツのプレッシャーを味わったのはテニスでした。
テニスの世界では、ダブル・フォルトの連続でゲームを落としたり、イージーミスの繰り返しで自滅することを ”チョーク”と呼んでいますが、 自分が試合に勝たなくても、相手が勝手に自滅して 負けてくれる場合があるスポーツの筆頭に挙げられるのが テニスだと思います。 またダブルスというフォーマットがあっても、テニスは基本的に個人プレーなので、精神面の影響が最もプレーに現れるスポーツで、 それだけに テニス・プレーヤーは縁起を担ぎますし、最も暗示に掛かり易いタイプのアスリート とさえ言われます。
私が自分自身でそれを実感したのは、5〜6年前のこと。 テニス・パートナーと話していた時に 「あるセンテンスを言われた途端に、セカンド・サーブが入らなくなった」という話が出たので、 好奇心から そのセンテンスが何かを尋ねたところ、その答えは「セカンド・サーブは、最も難しいショットの1つ」という 何とも他愛のないものでした。 その時は 何とも思わなかったのですが、以来、試合で セカンド・サーブを打とうとする度に、その言葉が頭の中をグルグル回るようになって、 私も本当にセカンド・サーブが入らなくなってしまいました。これを完全に克服するまでには3週間くらいかかったのを憶えています。

人前でのスピーチについては、自分の言葉で話せる場合については、私はさほど厭わないタイプです。 でも憶えた通りに話さなければならないスピーチや、英語で行うスピーチについては やはり緊張しますし、 得意だとは思っていません。
スポーツでも、スピーチやパフォーマンスでも、プレッシャーや恐怖心が無い幼い段階で場数を踏んでいる方が、 単に場慣れするだけでなく、その経験から自信が身についているので、精神的な動揺が少ないのは紛れもない事実です。 テニスの場合、歴史的なチャンピオンは、クリス・エヴァートから、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダルまで、 皆、ティーンエイジャーの段階でグランドスラム・トーナメントを制していますので、 若いうちに一度大きな大会に勝利することが 如何にその後の自信やパフォーマンスの向上に繋がるが窺い知れるかと思います。

そんなこともあってスポーツ・サイコロジーの世界では 2000年前後まで、自分の強さにフォーカスして 「自分は強いから大丈夫」、 「強いから負けるはずがない」というようなメンタリティをプレーヤーに持たせるのがメイン・ストリームでした。 これは ブロードウェイのパフォーマーがオーディションを受ける際に「私が落ちるはずがない」と言い聞かせるのと同様だと思います。
ですが、少なくともスポーツ・サイコロジーにおいては、そうしたアプローチが時代遅れになって、 今では プレーヤーの弱さにフォーカスして、それを克服するというスタイルに変わってきました。 すなわち、「自分は強い人間ではないけれど、鍛えたり、経験を重ねることによって、どんどん強くなれる」という意識をベースに、 実績を積み重ね、自信を育み、毎回の経験から 自分の弱さとその対処法を学ぶというスタイルです。
強さにフォーカスしていた時代には、不安が湧いて来たら、それをかき消すようにと言われてきましたが、 弱さの克服に切り替わってからは、「その不安の原因を突き止めて、それと向き合って克服する」、もしくは 「そういう不安は誰もが抱くもの」と割り切るような精神アプローチが行われるようになり、 その方が正念場で粘り強く、敗北のショックからも立ち直りが早いことが立証されてきました。

でもそうかと思えば、Fさんのお嬢さんのように 一度のミスがきっかけで プレッシャーを感じるようになってしまったり、 私のテニスのように、ひょんな暗示で スランプに陥る場合があるので、プレッシャーに強くなるには 自分の心理と常に向き合って、自分に合った対処法を学んで行くしかないというのが私の考えです。
スポーツでも、スピーチやパフォーマンスでも、練習をして場数を踏むことはとても大切ですが、 スピーチのようにそうそう自分に役割が回ってこないものについては、 自分の性格を考えて、手元に用意したメモを見ながらでも、用意した通りのスピーチを読むべきか、 話すエピソードを決めておいて、それを憶えた通りではなく、自分の言葉で話すべきかを決めると良いと思います。 どちらの場合でも、スピーチにおいては最初と最後だけは きっちりと話す内容をコントロールする必要があります。
私がこれまで目撃してきたスピーチの失敗例は、「最初にアガって脱線してしまい、収拾がつかなくなったケース」、 もしくは 「スピーチの終わり方を用意していなかったせいで 上手く切り上げることが出来ず、 何度も同じ事を言い続ける ”終われないスピーチ” になったケース」が殆どでした。
そもそもスピーチというのは話が上手であれば、聞いてる側も楽しいものですが、スピーチが苦手な人が長々と話すのは、聞いている側にとっても 退屈な場合が殆どですので、短く、気が利いたことを言うのが一番であったりします。 ですのでKさんがご自身の 苦手意識を逆手に取って、自分にプレッシャーが掛からないような 短く、シンプルでインパクトがあるスピーチをすることは、 新郎新婦やゲストにも歓迎されるはずですし、他の主賓の長いスピーチより遥かに 記憶にも残ると思います。
要するに ”スピーチが苦手と自覚する人の謙虚でシンプルなスピーチ”の方が、 ”得意だと思いこんでいるだけで、実は話が下手な人の長いスピーチ” よりもずっとウケが良いのですから、 そのシンプルなスピーチを用意してそれを きちんと練習すれば、Kさんの目標は自分で思い悩むよりも遥かに簡単にクリアできるはずです。 不思議なことに、人間というのは 一度でも好評なスピーチをすると、それだけでかなり自信が付くのです。 ですから ”苦手意識”というのが単なる”意識”であって、実は本当の苦手ではないことが自覚できるかと思います。

その一方で、Fさんのお嬢さんのようなスポーツのプレッシャーやスランプのケースは、 同じ経験をした人からそれを克服した経験談を聞くのが意外にも効果的です。 私の場合は、テニスのパートナーに どうやって 彼がセカンド・サーブのスランプを克服したかを訪ねましたが、 その答えは「セカンド・サーブを打つのを止めて、ファースト・サーブを2回打つようにした」というもので、「なるほど」と思ったのを憶えています。 なので私も セカンド・サーブがあると思わないで、ファースト・サーブを確実にコートに入れるようにして、徐々に そのスランプを克服しました。
一度でもそういう思いをすると、人間というのは確実に強くなる生き物で、そのメンタリティはテニスに止まらず、 同じような状況に遭遇した際に とても役に立ちます。 ですので、「スポーツに打ち込んだことがある人の方が 精神的に強い」と言われるのは、 人生において様々な状況が実際に巡ってくる以前に、スポーツを通じて 似たような状況や精神状態を既に経験しているからだと思います。

プレッシャーというものは、仕事の面接や、オーディション、受験など、人生の様々な局面で味わうことになりますが、 どんなに小さな出来事でもプレッシャーを克服した成功例というのは、あればあるほど 自信に繋がります。 その時々に味わった気持ちや、そのプレッシャーの中でどうやって気持ちを切り替えたか、どうやって自分を取り戻したかを 心に刻み付けると その自信はさらに 深まります。
またプレッシャーの中で、日頃は出来なかったことを成し遂げたり、思わぬ ひらめきを得て状況を打開した場合、 プレッシャーが高まった状態から 突然 冷静な集中力を見出すようなことがあった場合、 それをきっかけに プレッシャーを自分への チャレンジと捉えて、自ら 進んでプレッシャーに挑むようになる人さえ居ます。

プレッシャーというのは 人間を緊張や不安、恐れで 萎縮させたり、 叩きのめしてしまうもののように捉えられがちですが、 実際には自分の中に眠っている能力を ”火事場の馬鹿力”的に 引き出してくれる きっかけにもなるのです。 ですから プレッシャーというものは、それと向き合う気持ちがある限りは、弱さを悲観する必要は無かったりもします。
プレッシャーに強い人は よほどの状況でない限りはその克服感を得たり、新たな自分発見をすることはありませんが、 簡単にプレッシャーを感じる人は、生活の中に自分向上のきっかけが沢山見出せるのです。 要するにプレッシャーというのは、「そこに自分が打ち破るべき壁がある」と教えてくれるものですので、 謙虚にそれと取り組むことによって、 自分が成長するチャンスを与えてくれているのです。

Yoko Akiyama



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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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