Mar. Week 1, 2017
★ "Fake Media & Fake World Confuses Me... "
フェイク・ニュースとフェイク・ワールドに困惑しています



Yoko Akiyama様、
初めまして、アメリカに暮らしていて、このコーナーとキューブ・ニューヨークの大ファンです。
ドナルド・トランプが大統領に当選した日は、本当に落ち込んで、目の前が真っ暗になりましたが、その日にYokoさんが 書いたこのコーナーを読んで、どんなに救われたか分かりません。 その直後にお礼を書きたかったのですが、なかなかチャンスがありませんでした。ありがとうございます。

今日、このメールを書くことにしたのは トランプ政権になってから世の中が分からなくなってきてしまったからです。 選挙直後にはフェイス・ブックの適当なニューズ・フィードやフォックス・ニュースみたいな事実無根を平気で伝えるメディアの 影響でトランプ大統領が誕生したと言われて、それが問題視されていました。 その後フェイス・ブックのニューズ・フィードでトランプ当選に貢献したニュースは、マケドニアの小さな町が 広告費稼ぎのために町ぐるみでやっていた様子を NBCのニュースで観て唖然としたのを覚えています。
大統領就任式直後は、それに参列した人々の数について ライブのTV放映できちんと伝えていたメディアが フェイク呼ばわりされていたのを見て、よほどトランプ氏にとって参列者が少なかったのが悔しかったのだろうと思っていました。 でも今では、そんな事実を伝えているニューヨーク・タイムズとかロサンジェルス・タイムズとかCNNなどの、 伝統や歴史があるメディアを アメリカの政府と大統領が毎日のようにフェイク呼ばわりしていて、 私にはその様子が信じられません。 パラレル・ワールドに迷い込んだ気分です。
トランプ支持者の人たちは、既にすっかり洗脳されいるので、 事実がフェイク・ニュースにしか思えないようで、 人間と世の中は、この先一体どうなってしまうんだろうと不安になっています。

トランプ政権は、抗議デモをしている人もフェイク・プロテスターで、雇われてやっているだけなどと言いますが、 友達が沢山デモに参加しているので、フェイクでないのは私は良く知っっています。 結局のところドナルド・トランプは、 自分達に反対するものは全てフェイクにしてしまてって、 トランプ支持者はそれを全部真に受けるので、事実が入り込む余地が無いように思えます。 そんな風に政治が人を洗脳してしまっているので、これからは人工中絶も違法にされてしまいそうですし、 LGBTへの差別もまたもとに戻ってしまいそうな気配で、そうなったらマイノリティの立場もどんどん弱くなっていくと思うので、 この先もアメリカに住む日本人としてはとても不安です。

人によっては、「そんなに突然世の中が悪くなるはずはない」という意見を持っているようですが、 きちんとしたものでも トランプ政権に不利なものが全てフェイクにされてしまう状況を見ていると 世の中の価値観が覆されているみたいで、私はとても怖いです。
秋山さんは、今みたいなアメリカの状況をどう思いますか。そしてどう割り切って生きて行ったら良いのでしょうか。
とりとめのない質問で申し訳無いのですが、大統領選挙以来、ニュースを見る度に 精神的に落ち込むことが多くて、友達に会ってもトランプ政権の人種差別の話になったりして、 何をやってもこの不安から逃げられません。 何か、お知恵やアドバイスを頂けたら、とても助かります。
よろしくお願いします。Yokoさんの益々のご活躍をお祈りしています。

- K -





Kさんと同じ気持ちは、アンチ・トランプ派の民主党支持者やリベラル派が抱いているもので、 これまで抗議デモを始めとする政治活動に一切参加したことが無かった人々が デモに参加する状況に、その不満やフラストレーションが表れているように思います。
私も最初は、新大統領がメイン・ストリーム・メディアをフェイク呼ばわりする様子を見て、よほど自分を批判するメディアが気に入らない、 もしくはそんな批判が悔しいのかと思って見ていましたし、 新大統領が繰り広げていた批判に対する応戦ツイートもそんな心理を裏付けるものと思って見ていました。

でもその考えを改めたのは、先日ツイッターの共同創設者であるジャック・ドルセイのコメントを 読んでからでした。それによると、ツイッターは本来、自分が感じたことをつぶやくだけのエンターテイメント的なソーシャル・メディアだった訳ですが、 それが世界的にどんどん政治的なメッセージを発信するメディアに替わってきたのは誰もが知る通りです。
アメリカでそれが特に顕著になったのは、 2014年から米国メディアを騒がせ始めたミシガン州フリントにおける飲料水の汚染問題に対して、市民が州政府に対する抗議を始めたのがきっかけだったようです。 そして大統領選挙が終わってからというもの、アメリカでのツイッターの利用が 日本語で「アラブの春」と呼ばれる”アラブ・スプリング” のパターンに酷似してきたというのが この時のジャック・ドルセイのコメントでした。

アラブ・スプリングとは、2010年に起こったチュニジアの反乱を発端にエジプト、リビア等、アラブ諸国全体で起こった反政府運動ですが、 ジャック・ドルセイが特に示唆していたのが、現在最も問題になっているシリアでした。 そのシリアはアサド政権が、反対勢力ではあるものの自国民に対して化学兵器を使用し、 ロシアのバックアップを受けて 彼らが住む民家を爆撃し、 大勢の難民が国外に流出しているのは世界中で報じられる通りです。そしてその難民問題に加えてイスラム系テロリストの存在が EU諸国でポピュリズム(人々の恐れや願望を煽って支持を得る反エリート的政治思想)を盛り上げた一方で、 英国のブレグジット、アメリカのトランプ大統領誕生に繋がったのも周知の事実です。

でもそのシリアでは、誰もが難民として国外に逃れたり、廃墟となった町で貧しい暮らしをしているわけではなく、 アサド氏と個人的な繋がりがを持ち、アサド政権を支持する人々は現在も非常に豊かで優雅な暮らしをしています。 彼らに比べると地獄のような思いをしている難民に対しては、「アサド政権に逆らった彼らが悪い」という意識しか持っていない様子が アメリカのメディアで報じられています。
そのシリアのアサド支持者が暮らす街は、きちんとした社会生活が営まれて、町中にアサド大統領の巨大な肖像画が飾られ、 メディアも朝から晩まで アサド政権を称えて、北朝鮮同様の独裁者世界が広がって居ます。

前置きが長くなりましたが、もしツイッターのデータに表れている世の中の流れにおいて アメリカがシリアの「アラブ・スプリング」をフォローしているのであれば、 シリア同様に大統領の友人が取材陣や政府関係者よりも優遇されて、マー・ラゴでの日本の安部首相夫妻を招いたディナーの最中、 北朝鮮のミサイル打ち上げのニュースが入った瞬間のトランプ氏、安倍首相の姿をスナップしてはソーシャル・メディアにアップしていた様子も 理解できますし、そうとなれば 反体勢力を煽るような報道をするメディアをフェイクとみなして、その弱体化を図るのは当然のシナリオと言える訳です。
そう捉えるようになってからは、トランプ氏が 選挙キャンペーン当時と同じような支持者を前にした演説で、メイン・ストリーム・メディアをフェイク呼ばわりする様子は、 自分を批判するメディアに対する怒りに任せた言動というよりは、計算ずくでやっているという印象を受けるようになりました。

それだけでなく、 トランプ氏は自らを大統領に導いたリアリティTV「セレブリティ・アプレンティス」についても、彼に替わって番組を引き継いだ アーノルド・シュワルツネッガーを酷評するツイートをして話題になっていましたが、トランプ氏自身は今も番組のエグゼクティブ・プロデューサーな訳です。 なので、メディアでは なぜ自分が今も関わっているリアリティTVを中傷するようなツイートをするのか?が とても不思議がられていました。 でも実際のところはトランプ氏のツイートによって、番組がパブリシティを得ること、 トランプ氏の酷評に対してアーノルド・シュワルツネッガーが応戦することで、 アンチ・トランプ派の視聴率が煽れるかもしれないこと、万一視聴率が獲得できなかった場合でも それはトランプ氏の代役がハリウッド俳優上がりの元州知事には務まらないことを立証するだけの話で、 トランプ氏にとっては どちらに転んでもメリットがあった訳です。

ですから そうした状況を考えるにつけ、新大統領のツイートやスピーチを、怒りに任せた大人げないものと信じて、 それを嘲笑したり、腹を立てたり、困惑してばかりいたら、それに まんまと騙されているのだと考えるようになりました。 もちろんトランプ氏自身は、挑発に乗り易い性格ですから、本当に怒りに任せてやっている時も多い訳ですが、 それは選挙戦の最中から 確実に政治的なシナリオに利用されているのは否定できません。 見方を変えれば、だからこそトランプ氏のツイッター癖が大統領になってからも野放しにされている訳です。

そんな新大統領の暴言やツイートに アンチ・トランプ派が猛烈な抗議をすればするほど、 トランプ支持派はそんな抗議活動をする人々への反発を強めている訳ですが、 そんな状況も新大統領のシニア・アドバイザーで、白人至上主義者と言われるスティーブ・バノン氏が巧妙に書いたシナリオであるという指摘が浮上するようになりました。 イスラム教徒が多い7か国からの入国を禁止するという強硬な姿勢を真っ先に打ち出した事にしても、アンチ・トランプ派が猛反発すれば、 トランプ支持者がそれを受けてますます大統領を支持するようになること、そしてその後移民政策を和らげれば アンチ・トランプ派の態度が 軟化するはずというのが そのシナリオだったと言われています。

ニューヨーク・タイムズ、CNNなど様々なメインストリーム・メディアをことごとくフェイク呼ばわすることについても、 アンチ・トランプ派の抗議デモが盛んに行われる様子が報じられ、 トランプ支持者のフラストレーションと大統領への更なる支持が高まっていた時期に ツイートやスピーチで訴え続けた甲斐があって、 トランプ指示メディアの代表格であるフォックス・ニュースの世論調査では、 「トランプ氏を信頼する」と回答した人々が48%で、「メインストリーム・メディアを信頼する」と回答した45%を上回っています。
ですから そんなフェイク・メディア批判にしても、Kさんのようなアンチ・トランプ派の不安や怒りを煽る一方で、 自らの支持者のメインストリーム・メディアに対する信頼性を完全に失墜させて、 その後メディアが何を報じたとしても、支持者を失わない体制をしっかり整えている様子は見て取れるものなのです。
そもそも、トランプ氏はポピュラー・ヴォートではヒラリー・クリントンに敗れましたが、 今の支持者さえ失わなければ、選挙人制度が導入されている限りは次の大統領選挙で確実に勝利することが出来るのです。 その意味では、自分の支持基盤を固めることが最優先であって、アンチ・トランプ派の支持を勝ち取ることは二の次、三の次なはずですので、 Kさんがおっしゃるように、今後妊娠中絶やLGBTの権利、そしてマイノリティ人種のポジションが トランプ支持者が望む保守派路線に 修正されても全く不思議ではありません。

しかしながら アメリカのような国の大統領が 単なる偶然や時の運で誕生することはありませんので、 これは時代が何等かの方向に向かって 軌道修正を始めていることだと思いますし、それが必ずしも良い方向とは限らないのも事実です。
でもだからと言って、Kさんの生活や精神状態がそれによって乱されることがあってはいけないのです。 ですから、世の中で起こっていることにしっかり目を光らせることも大切なのですが、 時にその世の中から自分を隔離して、アウトサイダーの立場から冷静に時代を見つめることも大切だと思いますし、 自分と違う政治観を持つ人から、なぜそう考えるのかの意見を聞くことも同じように大切だと思います。
というのは、時代が自分の考えとは異なる方向に動いている時は、 その方向を支持する人々の考えの中から 問題の解決策やビジネス・チャンス、その次の時代へのステップのヒントが得られることが多いのです。

私自身はどんな時代が訪れても、自分の正義や信念を曲げる必要はないと思いますし、曲げてはいけないと思います。 ですから新政権下の自分の正義に反する政策や姿勢は支持するつもりはありませんが、それでも その政権がもたらす時代とその流れには対応しなければならないと思っています。
すなわち本質を守りながらも時代に合わせて変わっていかなければならない訳で、それは人もビジネスも、 それ以外の様々なことも同様なのだと思います。 そう考えると、これからの時代において柔軟性というものが非常に大切になってくると思いますし、 私が今のアメリカのアンチ・トランプ勢力に欠けていると思えるのが そんな ”柔よく剛を制す” というセオリーです。
強硬な政権に立ち向かうには 今のような抗議デモや、政権批判といった剛の争いでは勝てない訳で、 それにリベラル派が気付くまでは、新大統領のツイートやスピーチに翻弄されるだけに終わってしまうと思います。

Yoko Akiyama

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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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