Feb. Week 3 2018
★ "Why they don't do anything about gun control?"
"何故 これだけ惨劇が起こっても アメリカは銃規制に取り組まないのでしょうか?"



Yoko Akiyamaさま
アメリカ在住で、アメリカ人の夫との間に2人の子供が居ます。
今週のフロリダの高校の無差別銃撃事件(2月14日)、本当に痛ましい事件で、 昨年のラスベガスのコンサートを狙った事件も恐ろしいと思いましたが、 今週の事件も学校が舞台なだけに、あと数年したら自分の子供も高校に通うと思うと 親として穏やかではいられません。 主人にどうしてアメリカの政治家は、銃の取り締まりを強化しないのか尋ねたのですが、 私の英語のレベルがついて行かないこともあって、夫が言うことがあまり理解できませんでした。 英語のニュースも観ていることは観ているのですが、意味が完璧には分かりません。
それと銃の取り締まりは、夫が 長い不成功な歴史があると言っていたので、 私が古い事件で知っているコロンバイン高校の射撃事件の時代などからいろいろあったのだと思います。 今もニュースを見ているとコロンバイン高校の名前が出てきます。

そこで変な質問で申し訳ないのですが 、アメリカ事情に詳しい秋山さんに、何故 これだけ惨劇が起こっても銃の取り締まりがアメリカで上手く行かないのかなど その状況をご説明を頂けたらと思ってメールをすることにしました。 毎日新聞の写真を見ているだけで、これが自分の子供達だったらと思うと本当に気の毒でなりません。
これからアメリカに暮らしていく人間として状況や歴史をしっかり把握したいと思いますのでどうかよろしくお願い致します。

-R -





今週は、フロリダ州パークランドで起こった事件を受けてタイムリーなご質問をRさんに頂いたので、先にお答えをすることにいたしました。
私もアメリカに長く暮らしていて、無差別銃撃事件が起こる度に その報道を見ていて本当に気持ちが暗くなりますし、 被害者の方たちにこれまで何度同情したか分かりません。

アメリカにおける無差別銃撃事件はその半分以上が学校やオフィスで起こるもので、残りはショッピング・モールが現場になるケースが殆どです。 これまで起こってきた無差別銃撃事件犯は1人の女性を除いては 全員が白人男性で、 最年少は何と11歳。平均年齢は20代半ばで、その 殆どが 半自動小銃やミリタリー用の銃を合法的に入手して、犯行に及んでいるというデータが得られています。
先週、2月14日にフロリダ州パークランドのハイスクールで起こった事件にしても、容疑者のニコラス・クルーズは19歳で、 合法的に 飲酒や喫煙が出来ない年齢でありながら、 バックグラウンド・チェックを問題なくクリアして合法的にAR15 のようなパワフルなライフルを入手している訳で、 それは都市部に暮らす人々にとっては 信じ難い非常識なことですが、銃愛好家が多い中西部では 19歳に与えられた当然の権利として捉えられているのが実情です。

アメリカ人の銃好きは今に始まったことではありませんが、合衆国憲法でも言論の自由の次に、黙秘権よりも先に保証されているのが 武器を持つ権利で、この合衆国憲法第二条が銃規制の妨げの1つになっているのは 紛れもない事実です。
ですが、アメリカにおける銃規制の最大の足かせになっているのは、ナショナル・ライフル・アソシエーション、通称NRAの存在です。 NRAは1871年に設立された アメリカ最大のノンプロフィット・オーガニゼーションで、全米の銃の所有者が2年間75ドルのフィーを支払って メンバーになっています。 そもそもアメリカのライフル業界は多数の雇用を生み出し、膨大な利益を生み出す一大産業で、 その業界と共存共栄するNRAの資産価値は現在約400億円と見積もられています。 NRAはその膨大な資金力に物を言わせて、民主共和両党の政治家に多額の政治献金を支払っているのに加え、 ロビー活動にも多額の資金を投入しています。
このため銃愛好家が多い中西部の共和党議員にとっては、銃所持の権利を守り、銃規制を和らげることは 選挙民から票を獲得すると同時に、NRAから多額の政治献金が受け取れるという二重のメリットをもたらしてきました。 そのためコネチカット州のサンディフック小学校で幼い子供が射殺されようと、 ハイスクールで何人もの生徒が撃たれようと、こうした議員たちの反対票で 銃規制法案が議会を通過することはありませんでした。 その代わりに 悲惨な銃撃事件が起こる度に、事件の原因が 銃から別のものに擦り替えられ続けてきました。

たとえばコロンバイン高校の銃撃事件が起こった当時は、その責任の矛先が過激な歌詞のラップ・ミュージックや、 ヴァイオレントなビデオゲームに向けられていましたし、2000年代半ばを過ぎるころからは 事件容疑者の精神障害が問題とされるようになってきました。
また事件直後の 世論が熱いうちに 銃規制を進めようとする民主党側に対して、 共和党は「被害者家族の心の傷が癒える前に、銃規制を持ち出してくるのは不謹慎」という批難を展開して、 銃規制に取り組まないのが常套手段になってきましたし、 NRAは、「銃を持った悪人に対抗出来るのは銃を持った善人」というスローガンを掲げて、 「バックグラウンド・チェックを強化して悪人に銃を渡さない」という銃規制を真っ向から否定し続けてきました。 さらに銃愛好家の間では、「バックグラウンド・チェックの強化は、憲法第二条で保障される国民の権利に国家権力が介入してくること」 という歪んだ解釈が根強く浸透していたのもまた事実です。

その一方で、アメリカでは銃による無差別殺人事件が起こる度に、必ず大きく伸びてきたのが銃の売り上げで、 これは銃規制を恐れて 愛好家が銃を買い占めるためです。 また恐ろしいのは、銃乱射事件や無差別銃撃事件の数が増えるにしたがって、 アメリカ国内における銃規制を求める声が 減少していったという事実で、 世界中に衝撃を与えたコロンバイン高校における銃乱射事件の直後である1999年には 銃規制を求める国民が67%であったのに対して、 2001年にはそれが54%、2011年には51%にまで減少していました。
それだけでなく、現時点ではアメリカ50州中 45州で 銃を隠すことなく、西部劇のカウボーイのように ベルト・ホルダー等に入れた状態で持ち歩くことが法律で認められているという状況。 銃のオープン所持が許されていないのは、カリフォルニア、フロリダ、イリノイ、ニューヨーク、サウス・キャロライナの5州のみで、 これが 私のアメリカ国内旅行を控える原因になっているのが実情です。

さらにソーシャル・メディアが普及してからは、銃規制の妨げとなるような悪質な陰謀説が フェイスブックやツイッターに溢れてきたことも周知の事実です。 例えば、メインストリーム・メディアのニュースをチェックせず、極右思想のブログや、極右団体ソーシャル・メディアをフォローしている人々は、 2011年のサンディフック小学校におけるアダム・ランザによる教員と子供達の射殺事件が 事実無根の架空の出来事で、銃規制を進めるための陰謀だったと真剣に信じていたりします。
また先週のフロリダの事件にしても、 現場に居合わせた生徒が銃規制を訴える声明をメディアに対して行ったところ、それが「クライシス・アクター」、すなわち 被害者のふりをしているだけの俳優だという説や、それをでっちあげるビデオがあっという間にヴァイラルになり、 それに対してドナルド・トランプ・ジュニアが 「Like/いいね」 を2回もするなど、驚くほど悪質なデマが繰り広げられていました。 昨今では、ようやく ツイッターやYouTubeがこうした陰謀説のビデオやツイートを削除するようになりましたが、 今まではそれが野放し状態でした。中でも最もプロパガンダ的なフェイク・ニュースが多い フェイスブック上では、先週の銃撃事件直後に ロシアのロボットによる 銃規制反対を煽る 陰謀説のポストが 1900%アップしたことが伝えられていたほどです。

そんな様々な要因で銃規制が全く進まなかったアメリカですが、今回のフロリダの事件については 全米の高校生が 危機感と怒りを覚えて立ち上がっているという点が、これまでと大きな違いになっています。 私がこのコラムを書いている2月21日には、フロリダの高校の犠牲者家族だけでなく、 サンディフック小学校、コロンバイン高校の犠牲者家族らが ホワイトハウスに招かれて、トランプ大統領と1時間の会談をしていました。 果たしてNRA と 深い関係にある トランプ政権が本当に銃規制に動くかは別として、 ソーシャル・メディア上では、#onelessgun(ハッシュタグ ワンレスガン)がヴァイラルとなって、 先週の事件で使われたAR15 を 所持する人々が、それを破壊したり、処分するビデオを次々とポストし、 ガンオーナーたちも銃規制に賛同し始めています。
また3月24日には、ワシントンDC、およびニューヨークを始めとする主要都市で、「マーチ・フォー・ライフ」 という銃規制を求める大々的なデモが企画されていて、それには ジョージ&アマル・クルーニー、スティーブン・スピルバーグ監督、オプラ・ウィンフリーなどのセレブリティが それぞれ5500万円の寄付をしてサポートしていることも伝えられています。

こうして高校生たちが自らアクションを起こした背景には #MeToo ムーブメントの影響があると言われますが、 確かに それまで野放しになっていたこと、解決や改善が望めなかった状況からでも、弱者が社会を変えるムーブメントを起こせることを立証したのが #MeToo ムーブメントです。
これまで、無差別銃撃事件が起こる度に 何度となく、「今度こそ…」と言っては前に進まなかった銃規制ですが、 今回は初めて何か変わってきたと感じさせるムーブメントになってきただけに、 Rさんのお子さんが高校に進学する頃には、少なくとも学校は現在のような無差別銃撃事件の現場ではなくなるかもしれません。
ですのでRさんには、 そんなお子さんの将来のために も 是非 銃規制のムーブメントをサポートして頂きたいと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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