Jan. Week 4, 2017
★ "Entrepreneur or Not?"
起業の決意が揺らいだ時の決断は…



Yoko様、 このコーナーの大ファンです。是非ご相談に乗っていただきたくてメールをしています。 お忙しいかと思いますが、よろしくお願いします。
私は日本で出会ったアメリカ人の夫と結婚して、今は周囲に殆ど日本人が居ないエリアに暮らしています。 夫は42歳で大企業をリタイアして、今は自分でビジネスをしていて、裕福と言える経済状態です。 私達の間には子供が居ないので、私はテニスや乗馬をして、時々地元のチャリティのお手伝いをする生活を送っていましたが、 「人生、これで良いのかな?」と思うところもあって、何かをしたいなと思っていました。

そんな中、昨年日本に一時帰国した時に、女性の間で起業がブームになっていると聞いて、 私もアントレプレナーになることを考え始めました。 そこで日本開催されるセミナーを友達と一緒に受けようということになったのですが、思ったよりもお値段が高かったので、 「一応夫に報告を」と思って、軽い気持ちで話したところ猛反対を受けました。 私が受けようとしているセミナーのビジネスは、私が住むエリアには同業者が居ないビジネスで、競争はないですし、 元手を掛けずに始められるので、夫に猛反対されたのはすごく意外でした。

夫は余計なことを私に始めて欲しくないようで、「どうしてアメリカで起業するのに日本でセミナーを受けるんだ」 とか、「ビジネスを始める必要経費は一体誰が払うんだ」」と痛い所を突いて来てきて、セミナーを受ける場合は私個人の貯金から払うということで合意しました。 でもいざビジネスをスタートしようと思った場合に、自分の貯金だけでどの程度やっていけるかは分かりません。 夫には「私の人生の生き甲斐のために何かを始めさせてほしいと」説得を続けていますが、 「生き甲斐を持つのは良いけれど、どうしてそのために起業をしたり、高いセミナーを受けるんだ?」 といって全く取り合ってくれなくて、 最近ではその話をしようとすると夫が黙ってしまって会話になりません。 夫は時間が経って私の気が変わるのを待っているのだと思います。

私は会社勤めをしたことはありましたが、自分でビジネスをしたことが無いので、 モチベーションを高めて、ビジネスの初歩的なことを学んで、自分のやる気に弾みを付けるためにもセミナーを受けたいと思っていたのですが、 ビジネスの嗅覚のある夫の後押しが無いので、一度は決めたと思った決意が緩み始めています。
以前秋山さんがこのコーナーか、キャッチ・オブ・ザ・ウィークで、 同じ後悔をするのなら、トライして後悔した方が トライしないで後悔するよりも良いと書いていらしたのを憶えているのですが。 先輩アントレプレナーとして何かアドバイスをしていただけないでしょうか。 止めた方が良い場合は、そうはっきり言っていただいて構いませんので よろしくお願いします。
これからも身体に気を付けてが頑張って下さい。

- S -





私は自分をアントレプレナーだと思ったことはなくて、アメリカ人の知り合いにも ”ビジネス・ウーマン”、 ”ビジネス・オーナー” と言われることはあっても、アントレプレナーと言われることはまずありません。 アントレプレナーという言葉の本来の意味は「お金儲けのためにリスクを冒してビジネスをする人」で、 もっと具体的には 新しい分野を切り開くビジネスをする人を指す言葉です。 でも英語でもアントレプレナーという言葉は、どんどん曖昧なものになってきていて、 リアリティTVの「バチェラレット」では、前回から参加者が自分の職業にアントレプレナーという言葉を使うことが禁止されたのですが、 その理由は自称アントレプレナーが、実は単なるジョブレスである場合多かったためだそうです。 事実アメリカでは、ウェイターをしながら DJをしている人でもアントレプレナーを名乗ったりします。

それはさておき、Sさんの起業家プランについてですが、残念ながらメールを拝見した印象では、 ご主人がおっしゃることの方が正しいと言わなければなりません。
「自分の生き甲斐のために何かしたい」というSさんが、自分が本当にやりたいことを見つけて、そのビジネスをスタートするのであれば、 私は反対しませんが、それが高額のセミナーを受けてモチベーションを高めないと始められないようなビジネスである場合、 そんな出費をしてまで始めるだけの価値があるのだろうか?という疑問が湧いてきてしまいます。
どんな規模でもビジネスをスタートするということは、それに掛かりきりになることを意味しますし、ビジネスが軌道に乗るまでは 収支を計算するとタダ働き、もしくは赤字になっているケースが少なくないので、自分がお金を払ってでもやりたいような事を ビジネスにしなければ、続けていくことが出来ません。

またSさんは「私が住むエリアには同業者が居ないビジネスで、競争はないですし、 それほど元手を掛けずに始められるので」 とメールに書いていらしたのですが、 同業者が居ない 競争の無い状態というのは、お住まいのエリアにそのビジネスのニーズ自体が存在していないケースも多いのです。 また元手を掛けずに始められるビジネスとおっしゃりながらも、Sさんはビジネスを始めるにあたって 高額セミナーを受けようとしている訳で それも立派な元手ですし、 その元手が掛からないはずのビジネスについて 「いざビジネスをスタートしようと思った場合に、 自分の貯金だけでどの程度やっていけるかは分かりません」と 書いていらっしゃることから、ビジネスを始めるにあたって ある程度の出費があることは理解していらっしゃる訳で、 それも元手のうちなのです。
さらに言えば、どんなに元手を掛けずに始められると思ったビジネスにも、 実際始めてみるまで分からなかった出費というものが必ず出てきます。 少額だと見込んでいた諸経費が 実際にはかなりの金額になってしまうケースも多く、ビジネスに不慣れな時期は 出費が嵩むミスも起こるので、元手を掛けずに始められると思われたビジネスで、 逆にお金を損しただけに終わるケースは全く珍しくありません。

メールの文面からはSさんがその高額セミナーを吟味して選んだというよりは、 同じアントレプレナーを目指すお友達と一緒に受けようという運びになっただけの印象を受けたのですが、 Sさんはその受けようと思っているセミナーについて どの程度リサーチをされたでしょうか? そのセミナーはSさんが始めようと思っているビジネスのために本当に必要なのでしょうか? 実際にセミナーを受けた後で「こんなはずじゃなかった」と後悔するようなことにはならないでしょうか? もしそうなった場合に、セミナーに返金保障などはあるのでしょうか?
世の中には「学ぶ」という出費に関しては、比較的簡単にお財布を開く人が少なくありませんし、 その心理を利用したビジネスが非常に多いのは周知の事実です。 でも世の中には将来を夢見て、何かを学ぶのが好きな人は沢山居ますので、私はそうしたビジネスが悪いとは思いませんし、 批判するつもりもありません。

しかしながら、そうしたセミナーに簡単に大金を支払う決意をしてしまうSさんのメンタリティでは、 ビジネスの上顧客にはなれても、ビジネス・オーナーとして利益を上げるタイプではないように見受けられるのが正直なところです。
そもそもビジネスをするにあたって最も大切なものはお金なのです。 そのお金を出来るだけ使わずして、儲けるのがビジネスな訳で、 ビジネスという名の下において、決して簡単に手放してはいけないのがお金なのです。 周囲を観察していれば、お金に執着する人ほど ビジネスが上手いことに気付くはずです。
そうした人たちは、お金を稼ぐために金を使うというようなことは決してしないものです。

またビジネスのモチベーションというのは、セミナーによって与えられるものではなく、ビジネスの勝算によってもたらされるものです。 ですので一度起業のための費用、その手続きに際して弁護士に支払うフィー、ビジネスをスタートするにあたって最低限必要な諸経費を 計算して、大体の先行投資額を算出してみてください。 最低限必要な諸経費については2.5〜3倍を掛けて計算するのが正しい見積もりです。 それほどビジネスを始めてみると隠れた出費が多いことに気付きます。
そしてその先行投資を取り戻すだけの純利益を得るために、どれだけの売り上げが必要かを計算して、果たして Sさんのお住まいのエリアにそれだけのマーケットやリピーターが存在するのかを現実的に考えてみてください。 これはごくごく初歩的なビジネス・プランなので丼ぶり勘定の域を出ませんが、その段階で少しでも不安がある場合は、セミナーを受けるよりも ご自身がお住まいのエリアにあると便利なビジネスをリサーチするなど、需要の理解を深めるのが先決だと思います。
もし「そんなことをしている根気がない」と思われた場合には、本当にやりたい事が見つかるまでは 無理に起業を考える必要は無いように思いますし、 無理にセミナーを受ける理由もないように思います。

アメリカでは2014年の段階で、1日に1288社のペースで女性が起業していて、これは 男性の起業の4倍のペースで、 今や小企業の36%が女性オーナーになっています。 オーナーの男女を問わず、新たにスタートしたビジネスが2年以上生き残る可能性は66%、 4年以上生き残る可能性は50%、10年生き残る可能性は31%で、 これはビジネスを始めるということと、それを続けるということが別の課題であることを窺がわせる数字です。
起業をすれば、一銭の儲けが無くても、会社のステータスを維持するためのフィーの支払いが義務付けられるだけでなく、 会計士を雇って税金の申告もしなければなりません。また会社を閉める場合にもお金が掛かるケースがありますので 起業する人が増えて、最も直接、間接の恩恵を受けるのは政府と言えます。

私は自分自身の経験から、Sさんに限らず誰に対してでも、よほど好きな事をビジネスにするか、 よほど確実に儲かるという勝算がない限りは、そう簡単に起業を薦めない立場ですが、 「周囲に反対されても、どうしても自分はやってみたい」というほどの熱意がある場合は、やってみるべきだと思います。
「やらずに後悔するよりも、やって後悔した方が良い」というのは、そういうオケージョンで用いるべきセオリーだと思っています。

Yoko Akiyama

このセクションへのご質問は、ここをクリックしてお寄せください

プライベート・セッションはこちらからお申し込みください


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

Shopping
home
jewelry beauty health apparel rodan

Q&ADV プライベート・セッション

PAGE TOP