Jan. Week 2 2018
★ "Selling Happiness?"
"お金を取る商売で「人を幸せにしている」と言えるのでしょうか?"



秋山曜子様
いつもこのコーナーをとても興味深く読んで、いろいろ勉強させて頂いています。
私がこのコーナーを最初に読んだのは、「くすぶる人生に転機をもたらすには」のアドバイスで、 世の中に惑わされずに、何が自分にとっての本当の幸せかを見極めて、その意識をしっかり持つためにも 日頃から人のために何か親切をしてあげて、その幸せ返しで幸福感を得ることが 如何に大切かを学んだのを覚えています。

でも昨今では秋山さんと同じようなことを言う人が増えてきて、実際に人を幸せにしてあげている訳でもない人が、偉そうに人を幸せにしていると威張ったり、お説教をする姿にウンザリするようになってしまいました。 具体的には、お金を取ってレクチャーをしている人とか、楽しませる程度のことと 幸せにすることを勘違いしている人とかで、 特にお金を取る商売をしておきながら、「人を幸せにしている」などと言われると、等価交換と慈善事業をゴッチャにして恩を着せられている思いさえします。
簡単に「人を幸せにする」と言いますが、単に喜ばせるとか、楽しませるということと幸せは違うと思います。 例えば、素敵なレストランで美味しいお料理を友人と味わっている時に、皆で「幸せ〜!」と言うことがありますが、 こちらはその幸せに結構なお金を払っているのですから、私たちが幸せを買っているということだと思うんです。 もちろんお金に見合うサービスやお料理を出してくれるレストランは私たちを楽しませて、喜ばせようとしてくれていると思いますが、 食事やサービスの代金は請求しても、幸せのお金など取りません。
ところが幸せを商品のように扱っている人、例えば「幸せになるレクチャー」をする人などは、「人を幸せにする仕事」と偉そうに言ってお金を取ります。 ですが「その人の言うことを実践したら幸せになれるかもしれない」という希望に対して私たちがお金を払っているだけで、幸せにしてもらっている訳では無いのに、 人を幸せにしているように言われるのは納得できません。 特にそれがお金を払っただけの価値もない、まやかしみたいなものだと、騙された気になって不幸な気分にさえなりますので、 「人を幸せにする」という肩書でそれをされたら 詐欺だと言いたくなります。

こういう 幸せを商売にしているような人が世の中に溢れると、見返りなど無しに人に親切にしたり、本当に困っている人を一生懸命助けてあげている人の行動が そういう人達と一緒にされて 安っぽいものに扱われているように思えて、悲しくなったり、頭に来るような思いをすることがあります。 秋山さんは、そんなキレイ事を言う偽善家みたいな商売人をどう思いますか。 世の中の人は どうやって本当に人のことを思って親切にしたり、助けてあげたりする人と、お金目的で幸せのコンセプトをでっち上げている人の違いを 見分けるべきでしょうか。
秋山さんのお考えが聞けたら嬉しいです。よろしくお願いします。 これからも沢山インスピレーションを与えて下さい。

- S -





Sさんがご質問下さった「幸福は商品になりうるか?」については、以前私も友人と会話したことがありますが、 私はビジネスと人助け、及び人を幸せにする行為というのは 別物と見なす方がフェアであるという考えの持ち主です。 というのはビジネスというものは取引であって、幸せというのは個人の心理状態であるためで、それを一緒にパッケージ化するのには無理があると思えるためです。

ビジネスと名乗る限りは、お金と引き換えに品物やサービス、何等かのエンターテイメントや知識、教養等を提供して利益を上げなければなりません。 でもそんな商業的な取引であっても 利用客にリピーターになって欲しい、 気持ちよくサービスを受けて欲しい、購入したものを愛用して欲しいという気持ちから、 誠意や思いやり、親切心を見せることによって、結果的に利用者が幸せな気分や満足感等を抱くケースは多い訳で、 それがまた新しいビジネスやリピーターに繋がることになります。したがって、ビジネスにおいて 誠意や親切、思いやり等を示して 利用客を幸せな気分にしようとすることは、どんな業種においてもカストマー・サービスの一環であったり、 マーケティングの重要な要素となっているのは周知の事実です。
しかしながら そんな幸福感はビジネスが提供するメインの商品ではなく、あくまで付加価値と見なされるものです。 したがって、サービスが手抜きであったとしても、自分がずっと欲しかったものを手に入れれば 買った人間はハッピーになりますし、 逆にどんなに店側に真摯な思いやりを示して貰ったとしても、品物や食事、サービスが気に入らない場合は、 幸せな気分を味わうことはありません。

また幸福感というのは前述のように個人の心のコンディションなので、どんなに誠心誠意を尽くしたサービスをしても、受け側の精神状態によっては 何の有り難味も感じられない一方で、大した事をした訳でもないのに たまたま相手の心の乾いた部分にアピールしただけのことで 思いがけない評価や感謝を受ける場合もあります。 前者の場合、誠意を尽くした側は「これだけ頑張ったのに、あまり喜んでもらえなかった」という無力感や疲れ、時に失望を味わうことになりますが、 後者の場合は 自分が意図せずして人を喜ばせたサプライズで、気分が良くなったり、幸せを味わったりするものです。
そんなことからも分かる通り、幸福感というのは 商品になりうるほど確実で安定したものではないのです。 そもそも幸せというのは何処で巡り会うか分からない、誰に何時与えてあげられるかも分からないからこそ、 その機会に遭遇すること自体が”幸せ”な訳ですので、お金を払ったら確実に味わえるようなメカニズムではないのです。

ちなみに アメリカのライフスタイル専門家の間では、「Selling Happyness」ということは「幸せを売り渡す」というように解釈されています。 すなわち、自分が本当に好きな仕事をせずに収入や生活の安定のために嫌いな仕事や条件が良いだけのしごとを選べば、 それは幸せをお金のために売り渡していることになりますし、好きでもない人と資産目当てやその他の理由で結婚したり、 お金が絡まなかったとしても、自分に有利であるからという理由で不本意な事、不本意な道、不本意な人間関係を選べば、それは幸せを売り渡していると解釈されることになります。 そういう幸せを売り渡すという意味での 「Selling Happyness」というコンセプトは、世の中の人たちが少なからず様々な人生の局面で行っていることだと思います。

「秋山さんは、そんなキレイ事を言う偽善家みたいな商売人をどう思いますか。 世の中の人は どうやって本当に人のことを思って親切にしたり、助けてあげたりする人と、お金目的で幸せのコンセプトをでっち上げている人の違いを 見分けるべきでしょうか。」というご質問の部分については、単刀直入に申し上げてしまうと、それが世の中というものであったりします。 キレイ事を言う偽善家みたいな商売人は世の中に数えきれないほど居ますし、そうした人たちの方が真面目に誠意を持ってビジネスをしている人よりサクセスを収めているケースは珍しくありません。 また私自身の人生を振り返っても、後から思えば下らないこと、子供騙しでしかないようなものに喜んでお金を払ってきた時代がある訳で、 そうした人々をターゲットに上手くお金を稼ぐのもビジネスであれば、それに騙されたり、翻弄されたりして、そこから学ばなければならないのが人生です。
そもそも世の中というのは玉石混交ですし、人間の価値観というのも異って当たり前のものです。 ですから、自分が正しいと思うもの、違うと思うものが必ずしも周囲と一致する必要はありませんし、それを押し付けることも出来ません。 でも、見方を変えればだからこそ周囲がどんな状況で、どんな価値観の人間に囲まれて居ようとも Sさんはご自身の幸福感を追及して、自分を幸せに出来るということなのです。

Sさんのように頭脳明晰で、志が高い方は、時に自分ではどうにもならないレベルの正義というコンセプトと葛藤してしまう時期が 人生の中に何度か訪れるように思います。ですが前述のように世の中というのは玉石混交で成り立っていること、 歴史上、一度たりとも何から何までもが正しく、フェアな世界になったことが無いことを考慮して、たとえ世の中がどうあろうと、 「自分さえ しっかりして、自分が信じる生き方をしてさえいれば、自分は幸せになれる」という自分本位の生き方をして頂きたいと思います。
そうやって自分とは直接に関係の無いストレスを軽減することで、 精神的なエネルギーがセーブされますので、その余力をもっとSさんにとって建設的な様々な事に使えるはずです。 またそんな精神的にゆとりや余裕が生まれると、幸せというものに敏感になって、より頻繁にそれを感じることが出来ます。 前述のように幸せというのは心のコンディションですので、切羽詰まっていたり、常に取り留めのないストレスと戦っていたら、 どんなに周囲にそれが溢れていても気付いたり、感じたりすることは出来ないのです。 一度それに気づくと、お金など払わなくても如何に毎日の生活の中で、簡単に幸せになれるかに気付くはずです。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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