Jan. Week 1 2018
★ "Lessons Learned From Logan Paul"
"YouTuber ローガン・ポールに見る人生の落とし穴"



今週は、いつものご質問へのアドバイスをお休みして、タイトルにある通り YouTuber、ローガン・ポールのインスタント・サクセスとその致命的なミステイク&謝罪、それに対する社会のリアクションについて 書かせて頂くことにしました。

ローガン・ポールという名前は、このコーナーを書いている前日2018年1月2日まで 私は一度も聞いたことがなく、 それは20歳以上の多くのアメリカ人も同様。 そのローガン・ポールの名前がニューヨーク・タイムズからNBCニュースに至るまでの一流メディアで報じられることになったのは、1月2日に彼がYouTube上にポストした 青木ヶ原の樹海で撮影されたビデオが大顰蹙と批判を集めたためなのだった。
樹海についてはハリウッド・ホラー映画で取り上げられてからというもの、欧米でもその存在を知る人々が増えてきているけれど、 そこにガイドとクルーを連れて撮影に訪れたローガン・ポールが遭遇したのが首吊り自殺を図った死体。 その死体に向かって「Are you alive, Bro?(お前、生きているのか?)」と声を掛ける無神経さから始まったビデオは、 「これはまさにYouTubeの歴史上初めての瞬間だ」と人の死をエキサイトメントとして捉える様子を露呈しており、 「死んだ人間の隣に立ったのは初めてだ」、「これは今までの自分の人生で最もクレージーな出来事のトップ5に入る」 「いや、多分トップ1だ。自分は何に対してもユーモアで接するからこういう態度だけれど、中身は違うリアクションだ。 もう素面ではいられないから、酒を飲まずにはいられない」」などと、 まともな人間ならば喋ることさえ出来ないような状況で、笑いを含んだ冗談交じりの会話が繰り広げられていたのだった。 それだけでなく、そのビデオをYouTubeにポストするという愚行ぶりで、当然のことながら ビデオには批判が殺到。やがてビデオは削除されたものの、それまでに600万人がビデオを視聴。 ダウンロードされたコピー・ビデオは今もインターネット上に出回っており、ローガン・ポール、YouTubeは共に 謝罪の声明を発表しているのだった。

現在22歳のローガン・ポールは、18歳以下のミレニアル世代を中心に1500万人のサブスクライバーをYouTubeチャンネルで獲得する 世界で4番目に高収入を上げているヴロガー(BlogerではなくVloger)。 ローガン・ポールはYouTubeだけでなく、ツイッターでも400万人、インスタグラムで1610万人、 フェイスブックで1660万人のフォロワーを擁するソーシャル・メディアのスーパースターであり、ソーシャル・メディア・ミリオネアを絵に描いたような存在。 その彼はフェイスブックの1ポスト当たり1650万円、インスタグラムのスポンサー・コンテンツ1件につき900万円の収入を得ており、 そのスポンサーに名前を連ねるのはヘインズ、HBO、ダンキン・ドーナツといった大企業。樹海でのビデオがポストされる前日には、 東京の街中でポケモンの着ぐるみを来たプロモーション・フォトをポストしていたのだった。

オハイオ出身のローガン・ポールは、YouTuberになる以前は 今は亡きアプリ Vine/ヴァインで 60秒のコメディ・スケッチをポストし、その段階で既に900万人のフォロワーを獲得。 でも彼より一足先にソーシャル・メディア上のスターになったのは ディズニー・チャンネルに出演していた経歴&ネーム・ヴァリューがある弟のジェイク(20歳)。 ジェイクは7億円の豪邸を購入するほどのサクセスを収めるさなか、ロサンジェルスのTV局のインタビューで 高級住宅街の住人に嫌がらせをしたことから物議を醸し、 今はそのスター・パワーが下降線を辿っていることが伝えられるのだった。
そんな弟のソーシャル・メディアでのサクセス刺激されたローガン・ポールは、オハイオ州立大学を中退。 カリフォルニアに移住して以来、俳優活動をした経歴もあるけれど、 過去460日間は、毎日約15分間のビデオ・クリップを撮影しては YouTubeにポスト。 彼のチャンネルは ミレニアル世代を中心に毎日4万人前後のサブスクライバーを増やし続けており、 2017年10月には 弟に負けずと カリフォルニア州エンシーノに5ベッドルーム、7バスルームの7億3000万円の大邸宅を購入。 約17億円と見積もられる彼の総資産のうちの大半を 過去1年で稼ぎ出すというインスタント・サクセスを収めているのだった。





ローガン・ポールのビデオ・コンテンツは彼のライフスタイルやフィジカル・チャレンジをアドベンチャラスかつ、エクストリームに描くもので、その中にはもちろん馬鹿げたトライアルもふくまれており、 大袈裟な顔の表情や、事あるごとに「Bro(Brotherの短縮形で、親しい男性に語り掛ける際に使う言葉)」を連発しながらのビデオ・レポートは、 大人の世代には 何がそんなに面白いのか理解に苦しむ人が少なくないのが実情。 それがミレニアル世代には大きくアピールしており、そんな若い世代にプロダクトを売り込みたいスポンサー企業が彼の高額の収入源になっているのだった。 実際、彼の1ポストのビューワー数は、700万人前後とメジャー・ネットワークのCM放映とほぼ同じくらいの人々にリーチするだけでなく、 その殆どが 企業がターゲットとするミレニアル層。ソーシャル・メディア・スターとしては高給取りの彼も、TVのCM放映料と比べれば遥かに安いのが 企業側には大きな魅力になっているのだった。

しかしながらヴロガーの世界もミレニアル世代の時間を奪い合う競争が激化しているのは容易に想像がつくところ。 ローガン・ポールが僅か1年半足らずで世界で5本の指に入るヴロガーに登り詰めたのも、彼のコンテンツのレベルが徐々にエスカレートしてエクストリームになってきたため。 ビューワーやサブスクライバー獲得のために 人がやらないことをトライするのはヴロガーの世界ではごく当たり前のことで、 今回の樹海のビデオに対する謝罪の中で、ローガン・ポールは「ビューワーを獲得するためにやったんじゃない。自分には既に十分なビューワーが居る」と 弁明してはいたものの、ビデオに捉えられた彼のリアクションには 明らかに特ダネをゲットしたジャーナリストのようなエキサイトメントが見られていたのだった。

彼のビデオに対しては、シンガーのアリアナ・グランデが「胸がムカツク」と批判したのに始まり、俳優のソフィー・ターナーやアーロン・ポール等、 彼の存在を知る比較的若い世代のセレブリティが批判のツイートをしていたのに加え、それをしっかりモニターせずにポストさせたYouTubeに対しても批判が集まっていたけれど、 大人の世代のリアクションは判でついたように、「何故自殺者を娯楽目的のビデオに捉えるべきではないという当たり前以前のことが ローガン・ポールとその撮影クルーに分からなかったのか?」ということ。
命の危険を軽視するようなスタントを繰り広げるビデオがYouTube上に溢れているとは言え、樹海のビデオはそれとは全く異なるレベル。 ローガン・ポールは謝罪の中で、「自殺、うつ病などに対する社会の意識を高めたかった。このビデオで誰か1人でも自殺しようとする人間を止められたら それでこのビデオの価値があったということ」と釈明しているけれど、これが取って付けたような言い訳にしか聞こえないのは当然のこと。 中には、それを「彼が買い取った邸宅のローンを支払うための必死の謝罪」と受け止める声も聞かれるけれど、 実際、このビデオがメインストリーム・メディアで取り上げられるニュースになってからというもの、ローガン・ポールは2回謝罪をしており、 2度目にして、やっと自殺者の家族への謝罪が含まれ、自殺を防ぐチャリティへの寄付も表明されているのだった。

彼のようなYouTuberにとっては、企業スポンサーが重要な収入源であるけれど ソーシャル・メディアとは言え、企業側は スポンサーシップのキャラクターのイメージには厳しいこだわりがあるのは言うまでもないこと。したがってこんな物議で話題になったローガン・ポールに対するスポンサーシップが 激減することが見込まれるけれど、メディア評論家の中には、「今回のビデオに腹を立てているのはもっぱらの大人の世代で、 ミレニアル世代にはまだまだ彼はアピール力がある」と指摘する声も聞かれるのが実情。
いずれにしてもローガン・ポールのようにあっという間にソーシャル・メディアのスターダムに登り詰めた存在が、 これほどまでの物議を醸した前例はないことから、果たして彼のこれからがどうなっていくかは誰にも予想が出来ないのだった。

しかしながらローガン自身が「このビデオは楽しい企画になる予定だった」と語る通り、彼自身も樹海を歩くスリルを捉えるだけのために訪れたのは明らかで、 死体に遭遇したのは全くのアクシデント。その後の彼の愚行についても、頭を冷やした今となっては、事の重大さや世の中からのバッシングを受け止めて、後悔している様子は演技でもフィクションでもないのだった。
そして同様の出来事は、彼ほどのスケールではなかったとしても 誰の人生にも起こりうるもの。 それまで順調に進んでいたプロジェクトや人間関係、人生そのものが、ちょっとした出来事やアクシデントが原因で 後から考えると「何故あの時…」と後悔してもしきれないような行動や言動、判断、リアクションを招く結果、 それまでの状況が一転してしまうのは世の中にありがちな不運のシナリオ。
今回のローガン・ポールのビデオとそれに対する社会のリアクションは、 新年早々、そうした人生の落とし穴について 改めて警告を与えてくれる教訓になっているのだった。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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